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秘密12

 その足で鼠に導かれて城の中の暗がりの中に入った。
「ここは女中が使いに出る通用口です。この部屋は米などが積み込まれています。狐が会いたいと言うことです」
 鼠が消えてしばらくして女中姿の狐が姿を現した。
「襲われたようね?」
「ああ」
「あれは最近来た胡蝶と言う巫女よ。とんでもない術を使う。遂にあの部屋に胡蝶が入るのを見たわ」
「何があった?」
「盗み見した程度。あの部屋に入れるのは弾正と胡蝶だけ。今は弾正がいないから胡蝶だけよ。なのに部屋の中で胡蝶以外の声がした」
「どんな声だ?」
「年寄り臭い声だった。でも抱き合っているような?」
「弾正の女ではなかったのか?」
「それが不思議なの。この部屋には大きなお棺があるの。どうもこの年寄りはお棺に棲んでいるような?」
「よし今夜覗いてみる」
 狗は夜まで寝ていてそれから天守閣に潜った。天守閣には忍者がいるようではなかった。ただ異様な匂いが流れている。狐が言っていた辺りの壁から匂いが漏れている。狗は大きな鏡の裏に隠れた。ここも異様な部屋だ。2刻した頃壁が動いた。出てきたのは全裸の胡蝶だ。
 胡蝶は夢を見ているようにふらふら歩いていく。狗は閉まりそうな壁に剣をこじ入れる。部屋にはろうそくの灯がともっている。狐の言っていたように立派なお棺が部屋の中央にある。狗はゆっくりとお棺を開く。これはミイラのようなあの修験者の頭領だ。やはりここに来ていたのだ。
 目が開いた。
「狗か?」
 ミイラがしゃべった。狗はもう走り出していた。あれは人間じゃない。

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