31.ケジメ
怜央はギルド設立の手続きを調べに学生課へと来ていた。
「えー!?300万ペグもかかるんですか!?」
怜央の中では衝撃が走っていた。
ギルド立ち上げに必要な物がまさかの金。
しかもなかなかの大金であったことに大層驚いた。
だがその程度の反応は慣れっこなのか、受付の職員は顔色1つ変えずに言い放った。
「そうですよ」
「300……300か〜……」
勿論怜央にそんな金は無かった。
今までの依頼の報酬には差ほど手をつけていないとはいえ、まだまだ300には足りない。
かと言って今いるメンバーから徴収するのも違うと考えた怜央。
「とりあえず、払う払わない払えないは別として、書類だけお渡ししておきますね。必要事項を書き込んで次回持ってきてくれれば手続きもスムーズになりますから。それと規約などについてもよく読んでおいて下さいね」
「……わかりました。ありがとうございます」
怜央は落胆しながらも、書類だけは持って学生課を後にした。
◆◇◆
とぼとぼと歩き寮を目指す怜央はどこか上の空だった。
ぼーっとしながら歩いているのは金策を練っているからでもある。
どこからか大金が舞い込まないかなーなんて、ダメ人間さながらの考えをしていると、不意に胸倉掴まれて路地裏へと引き込まれた。
「よぉ、覚えてるかー? 俺は覚えてるぜぇ? 忘れもしねぇ。その節は随分世話になったなぁ」
「ああ、あの時の」
その男は以前テミスと揉めていた路地裏3人組の1人である。
「たくっ、手間ぁかけさせやがって。随分探したんだぜ? そしたらよぉ、あの女と仲良くしてやがる。てめぇもグルだったんだろ!? えぇ!?」
男は怜央の首元を強く圧迫し威圧した。
「グルではない。ただまあ……なんの因果か一緒に行動してるがな」
「やっぱり黒じゃねぇか! なぁ、俺らの世界じゃよ、舐められっぱなしってのは許されることじゃねぇ。落とし前は付けさせて貰うぜ」
「落とし前だ? 一体何をしようって――」
「おい!!!」
男が奥の方に向かって叫ぶと仲間がぞろぞろと5人も出てきた。
その援軍の中にはあの時のリーダーでないもう1人の男もいた。
ここまで用意周到に準備した連中だ。
この後どうなるのかは用意に想像できた。
怜央はそれを承知の上で、ギルドメンバーとなったテミスの過去の精算を引き受ける覚悟を固めた。
「おい、お前が何をしようがしらねーけど。落とし前ってんだからこれで最後にしろよ。今後俺らに構うな」
「あ゛あ゛!? 誰に物言ってんだ!?」
興奮した男は力任せに怜央を殴った。
この時怜央は、わざと魔力壁を張らなかった。
能力を使っていれば目の前の男の拳を砕くくらい容易であったにも関わらずだ。
「グッ……。手を出さないと誓え……!」
「はっ! 上等だよ!! お前が俺らのサンドバッグになってくれるっつーんなら、考えてやるよ……! おいお前ら、やっちまえ!!」
男の号令で援軍連中も怜央を囲んだ。
1対6の勝負にもならない戦い。
この結末は凄惨だった。