間話.どこに?
それは怜央の居ない昼下りのある時、座らせたシエロにアリータ・コバートが質問をしていた。
「シエロと言ったっけ? アンタ、怜央のなにが良くてわざわざこんなとこまで付いてきたの?何か弱みでも握られた?」
「そうだぜシロちゃん。俺らもそれを聞かないことには引き下がれねぇ……!」
純粋に不思議に思うアリータと、やや羨ましく思っていたコバート。
その結果がこれだ。
シエロに尋問じみたことをやっていた。
「えーと……別に弱みを握られたとかそういうのではないですよ」
「じゃあなに? 無理矢理?」
「無理矢理……というわけでもないですね。どちらかといえば私がお願いしてつれて来て貰った――ということでしょうか」
「えっ、てことはやっぱり怜央に惚れて!?」
コバートは食い気味で思わずその場に立ち上がる程の興奮ぶりを見せた。
シエロは頬を赤く染め、恥じらいながらも肯定する。
「そうです……ね」
「くあああっ!」
怜央を慕う女の子の存在にアテられたコバートは、悶えながら乱暴に座り込んだ。
「んで? 怜央のどんなとこに惚れたってわけ?」
恋話と分かった途端アリータも興味が湧いたらしい。
さっきよりも前のめりになった姿勢が何よりの証拠だ。
「こう言ってしまっては身も蓋もないのですが……夏目様は恐ろしいほど私の理想のタイプでして。――一目惚れというやつです……♡」
「ぐわあああっあっぐぅうううううあああ!!」
コバートは耐えきれず、唸りながら自分のベットに飛び込んだ。
言葉にもならぬ言葉を、抱きしめた枕に向かって延々呻き続けていた。
そんなコバートには冷たい視線が注がれたものの、一瞬で済んだ。
「ちなみにどんなタイプが好きだったてこと?」
「はい。私の理想は人間で、黒髪で、優しくて、身長も同じくらいの殿方が良かったのです。まさかこんなわがままな理想が実在しているとは夢にも思わず……。夏目様を一目見た時びびっと来ました」
「ふ、ふーん? そうなの。へー……それで付いてきたってことなのね」
「――私がいうのもなんですが、少しご一緒して、夏目様は危機管理能力が低いとわかりました。夏目様には私が必要なのです! そうでなければこんな危険な世界……とても1人で歩かせられません!」
(――この子意外と……愛が重い?)
愛の形も一様ではない。
アリータは思うところもあったが、あえて口をつぐんだ。
「夏目様からギルドを作ると聞いた時、影から応援したい……夏目様を立派な御仁にしたいと思ったのです!」
「そ、そう……。まあ大変だと思うけど、頑張ってね」
「はい!」
これにて聴取は終了。
シエロも解放され、アリータの中でも納得のいく結果となった。
ただ1人、コバートについてはその後も悶々としていた。