秘密3
狗はひたすらに走る。鼠は狐と同じ年頃のくノ一だ。だが女としての仕事はできない。まさに鼠の顔をしている。だが足はくノ一の中では一番早い。走りながら目印を置いて行っている。狗は2刻走り続ける。ここで目印が見当たらない。ここは獣道が二つに分かれている。鼠ならここに目印を置く。だが大和に行くのなら上の道だ。
上の道には争った跡が残っている。それ程古くはない。右側は竹藪になっているが その下は崖だ。狗は竹が折れているところを覗き込む。鼠は近づきすぎて悟られたのだ。下忍の一人が待ち伏せをしていたようだ。ここで揉み合って落ちたようだ。狗は綱を捲いて崖を下りていく。はやり川底に下忍が落ちている。狗は竹の根元の赤い綱を見つけた。これは鼠のものだ。引き上げると気絶した鼠がぶら下がっていた。
「襲われたか?」
「はい」
「あの者たちは?」
「上の道」
「まず水を飲め。走れるか?」
「はい」
「置いていくわけにはいかない」
鼠が回復して少し走りを緩めて走る。大和に入って鼠を繋ぎ役の年寄りのところに送る。狗は弾正の忍者の屋敷に忍び込む。だが入口に下忍が取り巻いている。やはりあのくノ一揚羽はここにいる。屋根から天井裏に入る。ここは前の時に仕掛けていた抜け穴だ。さすがに天井裏には下忍はいない。
目印にしていた柱のところから下の部屋を覗く。ここは弾正に忍者の部屋だ。彼の前に揚羽が足を組んで座っている。
「失敗したか?」
「狗と言うやつだ」
「あの抜け忍の若い頭か?」
「次に会ったら私が殺すいいね?」
「分かった。殺したら彼奴を頭にする」
彼奴?まだ獅子の部下が残っていたのか?