生い立ち9
狗が洞窟を出た日くノ一が2人やはり後を付けてきた。このくノ一は獅子が教えている。恐らく体も操っているのだろう。獅子は特殊な塗り薬を交渉の時相手の膣に塗る。これは狐も経験している。それで相手を虜にするのだ。だが狐はお婆に膣の塗る薬の訓練を受けていた。猛毒でなかったら毒も塗れるのだ。
狗はくノ一をまいて報告に戻った一人と洞窟に戻った。やはりくノ一はまかれたとは言わず上野の城に向かったと報告した。さっそく獅子は女の元に走る。狗が後ろを走る。足の速さでは獅子など相手にならない。
夕刻に女のいる女郎屋に着いた。獅子は商人の姿になって表から入る。顔馴染みかすぐに部屋に通される。狗は裏口から屋根裏に忍び込む。暗闇に柱と化した年寄りが座っている。もしいると知っていなければ刺殺されるだろう。
「痺れ薬を少しずつ流している」
年寄りが口を動かす。部屋を覗くと女の前に獅子が座って酒を飲み始めている。
「狐は?」
「女中になっている。先ほど酒を運んできた」
「ばれていないか?」
「変装すると分からない」
2刻が過ぎた。周りは寝静まっている。だが二人のまぐわいは続いている。狗は口に濡れた布を含んでいる。十分痺れ薬が効き始めている。年寄りはすでに天井から抜け出している。どこからか狐も見ているはずだ。先ほどから獅子に突き刺され続けていた女が仰け反って白目を剥いた。
狗が天井から剣を抜いて飛び降りたのと、襖が開いて狐が飛び込んできたのが同時だ。片目の獅子が見えない角度に飛びをりた。女が裸でまだ白目を剥いている。獅子には飛び込んだ女は見えていたのかつがいになっていた女を転がすと剣を抜いた。だが動きは鈍い。
狐の小刀が畳を突いた。狗の剣は獅子の左腕を付け根から切り飛ばした。
「狗か?」
狐が転がった女の胸に小刀を突き刺す。だが同時に女の簪も狐の首に突き刺さる。
「なぜ裏切った?」
その声に獅子は剣で応対した。だが次の瞬間狗は獅子の首を切り飛ばした。