自供
夜に検査部長からメールが入っていた。
「現在大株主も入って役員会が開かれている。もちろんここでは君の報告が出されて駆け引きがされている。どこまで責任を問うのかが議論されている。そんなに時間はかからないだろうと思う。君の席は検査部に戻す。退職願は考え直せないか」
とある。もちろんノーと回答した。
朝刊では早くも経理主任が使い込みを認めたとある。2500万のマンション以外とくに資金使途が見られないとある。単独犯も認めている。だが支店内では密やかに噂が飛び交っている。支店長と次長と代理の3人組は応接に籠りきりだ。今日は本店から昔の同僚の検査部員が3名入ってきている。
やはり足がぽろんの店に向かう。今日は鞄に中にノートパソコンを入れている。転職先から社内誌に載せる挨拶文の依頼が入ってきている。
「赤いカーネーションも赤タオルもなくなったね?」
「もう使うこともなくなったから旅行鞄に仕舞った」
「向こうで使うのか?」
「どうだか?そうそう先程まで石田君がいたのよ。司法書士の彼女と出来ちゃった婚になりそうだと」
「似合わないカップルだなあ」
「外から分からないことが多いのが男と女よ。今日はフォーを作ったけど食べる?」
私は冷蔵庫から小瓶を出してきて抜く。
「あの経理主任48歳だったね。あれは男に貢いでいたタイプよ。歳から言うと支店長かな?」
「支店長じゃない。もっと上の人だ。だが明かされることはなさそうだ」