赤いパーカー
隣室から出てきた女性のパーカーを見て驚いた。わたしと同じものを着ていたからだ。
「ど、どうも――」
お互い気まずい空気が流れ、苦笑を交わす。
値踏みするようにしばらく見合っていたが、先にその女性がバッグを大事そうに抱え足早に去って行った。
せっかくフードを被って顔を隠していたのに、ばっちり見られてしまった。でも、それはお互い様ってことで。
凶器の包丁を隠したバッグを大事に抱え、わたしも家路を急いだ。