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包囲網

 いよいよ私に対する包囲網が狭まってきた。今回はお客のカウンターのカルトンの金が消えたと。カウンターの従業員の女性は泣きだして直属の上司の私が責任と調査を次長から申し渡された。この1週間応接室に缶詰めになって、本来の調査はできず女性は自己都合退職をし、私には始末書を書くように迫った。こういうことも検査をしているとある話だ。
「本店検査部に調査を依頼してください」
 その一言で支店長がこの事件をうやむやにしてしまった。確かにより強引になってきている。そんな夜石田から来いよメールが入った。
「遅いなあ」
 ドアを開けると石田が3人の女性に囲まれて上機嫌だ。
「10日間敦賀と言ってたのじゃないか?」
「女子会があるので飛んで戻ってきた」
「そんな適当な仕事か?」
 少しむかむかしている。今回の件は次長に嵌められたとしか考えられない。
「でも顔が蒼いよ」
 ぽろんのママが珍しく手の込んだ料理を出す。
「そうむくれないこと。私が頼んで携帯を入れてもらったんだから」
 出された小瓶を一気にラッパ飲みする。
「彼女達昔の暴走族仲間。何か月かに1度集まるの。3人はみんな子持ちよ。私だけがふらふらしてる。一番年長なのにさ。彼は大手の銀行マンよ。東京から転勤して里帰り」
「このねいちゃんたちの顔見て思い出さないか?」
 石田が無理やり女性の一人を私の横に座らせる。


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