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経理主任

 石田に携帯を教えたら夕方に何度もメールが入ってくる。
「今日は何時に行く?」
とこればかりだ。
 3日後に、マンションの個人用のパソコンに検査部長からメールが入った。5人の経歴が添付されていて、とくに経理主任の女性についてはコメントが入っている。この中で今の頭取が支店長だったときにいたのは彼女だけだと言っている。そのときすでに彼女はベテランで頭取との噂があったとある。それで今日は一日中彼女の動きを見ていた。どうも40歳半ばでまだ独身のようだ。
「遅いな」
 石田が国語の先生と飲みながら言う。
「月末だからね。たくさん報告ものがあるのさ」
 確かに時計を見ると10時半を回っている。カウンターに掛けるとポールウインナーが赤いカーネーションとともに投げ込まれている。
「悪いが今日は先生と梯子する」
と入れ替わるように出ていく。ぽろんは当然のようにクローズのカードをかけてドアを閉める。
「久しぶりに待ち遠しかったわ。あなたって不良の匂いがする」
 そう言えば銀行に入ってから不良をピタッと封じてしまっている。今日は初めて長ったらしく唇を吸っている。私はどうしてか黒縁眼鏡の経理主任の顔が彼女に似ていると思った。ぽろんの乳房がはち切れそうに膨らんでいて青筋が立っている。

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