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次の日。
というと、ロクさんの美音さん彼氏捜査が終わったのかどうかというより、俺は期末三日目という難関と戦うことの方が重要だった。
シャーペン片手にがりがりと、ほとんど白紙の解答用紙とずらずらと英語が並ぶ問題用紙とにらめっこ。「俺、海外出る予定ないから」なんて皆言うけど、俺もまったく同意見。
英語という言語とは全く縁がないと思う、つくづく。嫌いなものから逃げるなとは言うけど、こればっかりは俺が逃げてんじゃなくて、英語が俺を避けてんじゃないかってくらいだ。
そんな英語も今日の最終科目。これが終われば、残すは後四分の一になるわけで……!
試験終了のチャイムと同時に、俺はシャーペンと煙を上げていた頭をほっぽり出した。
俺の列の一番後ろの席の女子が、真っ白な解答用紙を回収していく。いや、真っ白は盛った、というより減らしたな。ちゃんと何個か埋めてある箇所もある。恐らくは目標を達成できるくらいは書いてある。
俺の目標は赤点回避。
赤点取り続けて、内申が悪くなり過ぎれば、当然留年だってある。さすがにもう一度高校一年生をやり直すのは勘弁したいものだ。
と言ってもまだ最初の期末だけど。だが、ここでどれだけ点数を稼いで置くかで後の余裕が決まる。最初が肝心なのだ。
ぷしゅー、と机の上に突っ伏して、燃え尽きた……とか思っていると、ロクさんが目の前に立っていた。
「!?」
ビビった。なんでこう音もなく現れるんだ。
「あ、ごめん、驚かして。返事しなくていいから聞いてくれるかな?」
ロクさんの問いに俺はわずかに頷いた。
「調べ終わったから、とりあえず美音ちゃんに知らせる前に、続くんに報告しとこうと思ってね」
と、前置きして始まったロクさんの話はまとめるとこんな感じだ。
相手は福田晃(ふくだあきら)さん。現在大学二年生。塾で講師のバイトをやっていて、今年で二十歳。今は親元から離れて大学の寮に住んでいる。K大学文学部英文学科。
「それで、寮の住所がこれ」
ロクさんがそっと小さな紙を机に置いた。
俺はその紙を見て少し驚いた。
「すげー近所」
K大学が俺の家の近くにあるから、大学名を聞いた時からなんとなく予想はしていたが、まさか寮で暮らしているとは思わなかった。
「そうなのかい? まぁ、言われたことは調べてみたんだけど……」
けど?
複雑な表情で歯切れの悪いロクさんに怪訝な顔をする俺。
「彼、今は新しい彼女がいるんだ。前の彼女が死んだのに、もう次の人と付き合ってるのかと思うと、信じられない神経をしてると思うよ」
…………マジか。
「それは……伝えにくいですね」
「……うん。でも今日は僕ちょっと手が離せないから、続くんから知らせてもらえるかい?」
……別に、いいですけど。
「よかった。ごめんね、汚れ役頼んじゃって」
ロクさんは申し訳なさそうに、両手を顔の前に合わせて首をちょこんと傾げた。
……なんでこの人は男なんだろうか。