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誰でも、とまではいかなくても、男子だったら十四歳頃にかかったことがあるだろう。
中二病。
思春期にありがちな病気だ。一度かかってしまうと、年齢を重ねた後にとても死にたくなるので、早期発見、早期解決が望まれる。
実を言うと俺も中学時代にかかったことがあるので、あまり思い出したくない記憶の一つとなっている。母親に急に冷たくなったり、好きでもないブラックコーヒーを飲んだりしたものだ。
しかし友人関係の経験から、中二病には色々な種類があるようだ。自分は特別なんだ、という根本的な概念は変わらないが。
まず、根は真面目だったり臆病だったりするのに不良ぶるやつ。喧嘩とか犯罪行為に対する虚言が多くて、反社会的な行動を好んでいた。いわゆるDQN。
ボクシングを本気で習っている友達は、「年上との喧嘩で勝ったことがあるけど、中二病って思われそうだから人には言えない」とその話題の時に笑いながら話してくれた。
あと、何でもかんでもマイナーな方へ走るやつ。特にそれが好きなわけではなく、ただ他人と違う自分を格好いいと思っているらしい。俺もこのタイプだった。こういうやつに限って洋楽を聴き始めちゃったりする。英語分かんないのに。
そして、キャラを作り出すやつ。アニメとかライトノベルとかに影響されて、不思議な、超自然的な力に憧れ、自分には得体の知れない何かに憑かれたことによる、発現すると抑えられない隠された力があると思いこむ。
怪我もしてないし痛くもないのに、包帯やら眼帯やらをつけたがるんだなこれが。そういうのがかっこいいと思ってる。
なんで改めて顧みたくもならない自分の黒歴史を掘り起こしながら、こんな思い当たる節があると耳を塞ぎたくなる話をしたのにはちゃんと理由がある。
あまり直視したくない強制成仏とやらを見た翌日、六時限目は体育だった俺は、体育館から教室へ戻るところだった。
そこで見つけてしまったんだ。
いや、幽霊なら体育見学してるやつもいたから、特別驚くことではないんだ。
気になるのは、俺のクラスの教室の前で、意味深な表情で窓の外を眺めていた青く、影のない透けている少年。恐らく同い年なんだろうが、身長は男子にしては小さい方だった。百六十くらい。
問題は見た目だ。左目には眼帯がしており、うっすら赤く滲んでいる。すぐ目を逸らしたが、あれはただの赤インクだったと思う。それから右腕。包帯がぐるぐると手首から間接の手前まで巻いてあった。
半袖のワイシャツを第三ボタンまで開けて、中からただの赤いTシャツが顔をのぞかせている。頭はワックスをつけて、カッコよく見せているつもりなのだろうが、残念ながら寝癖が酷いようにしか見えなかった。
この人、中二病だ。しかも、キャラつくるタイプの。
反射的にそう思ってしまった。幽霊じゃなくても関わりたくない。
外見が多少アレだが、何もしてないんだし、ソラに報告するまでもないだろう。
俺はそそくさと教室という名の安全地帯に入って行った。