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ご挨拶

 大理石の柱から、一人の金髪男が姿を表す。その対面に向かい合うもう一人の男に手を差し出して、二秒ほど、あいさつ代わりの握手を交わした。
 手が離れると同時に相手は顔を背けられたけれど、金髪の方はじっと彼の方を見ていた。まだ自分の方に注意が向いていたならば、話したいことがあったというような後ろ姿を映していた。
 相手の男が注意をそらしたのは当然で、金髪男の隣には同伴者がいた。ブロンドのすぐそばで彫刻のように控えていた女は、手を差し出されたことで生命力を得たのだ。
 先ほどよりも短いあいさつの後、二人は目を合わすことなく歩き出す。にもかかわらず、両者間にある肩同士の距離はぶれることがない。息を合わせたようにぴったりと重なり合っていた。視線をやらずとも、お互いがどこにいるか分かりきったような関係性なのだろう。

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