1回目
「おこづかいを上げてください。このままでは餓死してしまいます」
ランドセルを背負った少年の目は、一点のくもりもなく透き通っていた。
油の温度を確認していた美智子は、目を見開いて彼を振り返る。
「毎月五百円も、何に使うっていうの?」
天ぷら鍋からハシを引き抜いて油を拭う。
「一日で十八円じゃ、何も買えません。電車に乗るために、僕は学校を一週間も休まなきゃならないんです」
「毎日ママが送っているでしょう。あなたが払う必要はないじゃない」
「そんなことではいつまで経っても自立ができません。僕がずっと家にいて働かなくてもいいんですか」
「でも、おこづかいはあなたが働いたからもらえるお金じゃないでしょう」
「だから、今あなたに働きかけてるんです」