第3話
そこはこの世では無かった。
大地は無く地面は全て雲で覆われており太陽は見えなかったが常に暖かな光が差していた。
天国。
人はそう呼ぶだろう。
俺の名は山根三郎。
ごく平凡な高校生だったが突然の交通事故に遭い死んでしまった。
故にここにいる。
人は死ねば生前の行いにより天国や地獄(と人は呼ぶ場所)に振り分けられるそうでこの世に大いに貢献した人物は即座に自分の望むままの時代、場所、人物に生まれ変われるらしいが。
自分らの様な軽い悪戯程度はしたが極悪な行為はしておらず、されとて、献血やボランティアはしたことはあるが大いなる貢献をしたわけでも無い人間は皆ここに来る。
そしてランダムに魂が必要となったときにのみ選ばれるのでどこの誰に生まれるか、いつ選ばれるかはまったく予想不可能で多くの人々はいつとも解らぬ時を待っている。
自分もその一人だ。
ここは娯楽などまったくないが一つだけ娯楽とも呼べるものがあり。
娯楽場とも言うべき場所がある。
それは下界覗きの水鏡なる物が置いてある場所であった。
その場では誰もがその水鏡を通じて下界の様子を伺うことが出来る。
覗いた者が気になっている所を見られるので下界に気になる者がいる人にとっては何事にも代えがたい娯楽のようであった。
かくゆう三郎も何度も見たことがある。
両親や友人、ガールフレンド、そして事故の加害者等である。
友人達は皆一様にショックのようだったが事故から数日も経てばいつものように平穏な日々を取り戻していた。
問題は両親やガールフレンドである。
実は加害者は何の罪に問われることもなく無罪放免されていた。
ローカル誌にはこう書かれていた。
○ ○日夕刻、○○市で交通事故があり、歩行者2人が巻き込まれ1名が軽傷、1名が死亡しました。死亡したのは○○市○○町の会社員山根次郎さん51才の長男三郎さんで午後6時半頃、高等学校の合宿用の備品を買出しに商店街へ向かう途中突然の夕立に見舞われ。
夕立に濡れたくなかったため信号無視をした為に運転手は避け切れなかった模様。
運転していたMさんの話によると最初に女の子が信号無視で飛び出して来た為、慌てて避けたが更に避けた先にも男の子が飛び出してきたので避け切れなかったとしている。
けっして見晴らしの悪い場所では無いが突然の豪雨に視界を遮られ焦っていたために起こった事故と警察は見ている。
尚Mさんの行動は道路交通法では危険回避行動の緊急避難として罪を問われることは無い。
その為、被害者の両親は納得がいかず起訴する構えとのこと。
しかしどうやら難しいと思われる。
(以上当時の記事より抜粋)
交通事故というのは死亡事故であれば加害者の証言を元に調書をつくり、多くの場合死亡事故であれば死人に口無しの格言どおり加害者は自分の不利になる調書はつくらない。
その為目撃者が居ない場合など轢き殺せてなければ戻ってきて再度息の根が止まるまで何度でも轢く犯人がいるくらいである。
外国でも、なまじ生きていれば一生保障をしないといけないので殺してしまえば家族に一時金を払うだけで済むという理由からわざと轢き殺す輩もいる。
このMという男は狡猾な男でうまく言い逃れ無罪放免されていた。
その為自分の両親は起訴しようとしたが脚下された。
真実は・・・信号は青だった。
それにひき逃げして後に警察の調べて後に足が付いた筈だが。
うまく言いくるめ一事は気が動転していたが匿名ですぐに救急車を呼び出頭しようとしていた所だったとでものたまったのだろうか、ひき逃げの文字は無い。
ガールフレンドのほのかは先に立って走り、青という信号を盲信していたため後ろから来ていた俺の方を振り返り前を見ていなかった。
そこに暴走行為を繰り返していた車が突然の夕立にタイヤを路面に滑らせて青で渡っていた歩行者のいる横断歩道へ突っ込んだのだった。
俺はなんとか、ほのかを助けようとしてほのかを突き飛ばした。
結果俺は死んでほのかは軽傷で助かった。
俺は死んでしまったが自分のしたことに後悔はしていない。
ほのかには生きていて欲しいと思ったからだ。だが両親にはすまない事をしたと思っている。
親より早く死ぬなど最低の親不孝だ。
地獄に落ちていてもかまわなかった。
しかし俺は天国にいる。
ならばせめて生きている人達には幸せになって欲しい。
そう思い下界を眺めていた。
両親も気の毒だが父も母も健在なので2人でなんとか乗り越えていってくれるものだと思う。
たった一つの気がかりはほのかである。
自分のせいで俺が死んだと思っている。
そのため心を閉ざし、常に死を考えているようだ。
いや、それどころか一度、既に実行に移している。
自殺をする瞬間は順番待ちの為下界を見れなかったがあとで知った。
どうやら成仏出来なかった幽霊となぜか幽体離脱している人物に自殺を止められた様だった。
その2人が何者なのかは解らない。
だが今はただ感謝している。
そしてその2人を頼る他無い。
ほのかを死なせないでくれ・・・
しかし、死なないまでも不吉な予感がしている。
ほのかは今まで自分を轢いた男がのうのうと生きていることを知らなかった。
なぜなら交通事故は被害者と加害者の関係でしかない。
そのため、被害者が死んでいる場合は肉親にさえ事故の詳細や取調べの期日などは一切知らされない。
そのため加害者であるMが知らせないまま取調べは終了した。
ほのかはMが言っていた先に飛び出してきた少女なので彼女が証言すれば状況は一変していたはずだが。
正式に俺と彼女は付き合ってはいなかったしMももちろん知らせるはずは無い。
ほのか自身もショックが大きかったゆえ、もし伝わったとしても耳に届いていなかっただろう。
しかし今は例の2人のおかげで少しずつ冷静さを取り戻しつつある。
その上、その事を調べ始めたのですぐに真実に気づくだろう。
しかしもう遅いはずだ。
Mは権力や金の力を使いあの事故のことは自分の筋書きを堅固なものにしている。
一介の女子高生であるほのかには立ち向かいがたい敵である。
警察もとりあってはくれないだろう。
だからといって死ななかったにしろ馬鹿な真似をしてほしくは無い。
何者とも解らぬあの2人に頼るしかない自分が恨めしかった。
無力な自分が・・・
運動神経や感がすさまじく発達していたりして自分も死なずにほのかを助けられてさえ居ればこんなことにはならなかっただろうと取り留めの無い事をまで思ってしまう。
再び地上界(普通の人間界)
翌日三人は三郎を轢いた男(M)について調べることにする。
まずは聞き込みだ。
むろんほのかは乗り気では無かったが三郎の両親に合うことにする。
法事で何度か顔を合わせたものの会話らしい会話は出来なかった。
今回も会話らしい会話はなかったがとりあえず事故の新聞記事を預かった。
記事に目を通すほのか・・・
そして三人は理解した。
その男が交通刑務所にいなかった理由。
そしてのうのうと暮らしていることを・・・
「許せない!」
ほのかが、肩を震わせていた。
「殺してやる!」
そして激情にのまれている。
空気までもが震えているかのようなビリビリとした感触が2人を包み込む。
「どいて!」
ほのかは自分の肉体に戻り命の幽体を自らの体から弾き出した。
ほのかは、すさまじい殺気に満ち満ちていた。
「ばかな・・・」
自らの意思で肉体に戻り、そして命を弾き出すなど。
一介の女子高生に過ぎないほのかにそんなことが出来るとは・・・
流石の霊士もこれには肝を冷やした。
命はその気迫に気圧されて。
「あ、あ、あ・・・」
と言葉にならない声を発している。
2人があっけにとられている隙にほのかは姿を消した。
「しまった・・」
とりあえず命を掴むと霊士は今の状況を冷静に分析した。
命は自在に動けない。
ほのかの体に乗り移って時は良かったが今は風に吹かれどこへ行ってしまうとも限らないから捨て置けないが、それだとほのかを追う上で行動が制限される。
それに情報も集めにくくなってしまった。
ほのかの幽体時の様に魂の尾を目印に本体を探した時のようにはいかない。
あくまであてもなしに探すしかない。
「しかし止めなければならん!」
「俺達にも責任はあるからな!」
そう言った霊士は命の様子に目を向けるが否応もなしである。
「責任とかそんな事は関係ないけど!」
「止めるよ!」
「すぐ追わなきゃ!」
状況的にはお世辞にも良いとは言い難かったが、命は本気モードである。
自分の力では身動きさえ出来ない命だがこの状態ならば何かを期待せずにはいられない。
霊士は何の気無しにそう思った。
そして二人は復讐鬼と化してしまったほのかの追跡を開始した。
「あいつを殺す・・・」
「三郎を殺しておきながら」
「虫けらを殺した程度にしか思ってない!」
「あいつを・・・」
私はあいつの顔を覚えている。
人一人轢いて置きながら、石ころにでもぶつかったようなふてくされた顔をした顔をあざ笑いながら去っていったあの男を。
髪は金髪でピアスやペンダントや指輪などをの装飾品をごてごてと身に着けたあの男を。
俗に言うチャラ男で金持ちのボンボンといったところだろう。
それなりに顔はまずくはないが軽薄そうな男だった。
チャラ男の行きそうなところは見当が付く。
ほのかはクラブ周りを始めた。
むろん制服では入れないので地味な私服に着がえ、厚底メガネにダサダサお下げである。
言い寄ってくる男対策であるがそれでもそれなりに声はかけられた。
そしてその男は何件か周ることでやっと見つけることが出来た。
しかしこのままでは相手にされないかもしれないので、すかさずトイレで着替えることにした。
そこでほのかは、あらかじめ用意してきたギャル系服に着換えることにした。
すかさずとはいえ、片手をつって居るので多少時間はかかったがどうやら間に合った。
まだその男はその場にいた。
そしてほのかはズバ抜けたギャル系に変身出来た。
片手をつっているのでその違和感が多少目立つものの、それでも許せるくらいにズバ抜けていたのでたちまちあちこちから声がかかる。
しかしほのかは目当てのチャラ男に積極的にアプーロチした。
チャラ男は簡単に引っかかった。
彼の名は相川好雄。
20歳の大学生で、ここいらでは顔らしい。
頭の程度は悪くても金持ちの生まれなので私立か裏口かで一応大学に席はあるのだろう。
しかし、大学も彼にとっては女の子を狩る狩場でしかなさそうな。
そんな男だった。
顔というのも人望というよりは金の力。
そんなところだろう。
だが、ほのかにとっては男の素性に興味はなかった。
重要なのはこの男が三郎を殺したという顕然たる事実。
ただ、それだけだった。
ほのかの目論見どおりに2人はほどなくドライブに繰り出すことになった。
駐車場で目にした車。
それはあの時の車ではない。
買い換えたのか何台もあるうちの一台なのかはよくわからなかったが・・・。
相川はほのかの意図には気づかず、棚ボタ気分で上機嫌だった。
相川は車をどんどん人気の無い方向へと走らす。
だがそれはほのかにとっても好都合であることに男は気づきもしない。
「ところで私のこと覚えてない?_」
ほのかは相川に思わせぶりな態度をとったが男も手馴れたもので受け流す。
どこかで遭った事があるとか無いとか、見たことあるとか無いとかはこの手の連中の常套手段である。
合川は本気とは思わなかったし、本当だとしても憶えているはずもなかった。
やがて二人は、ほどなくして人気の無い海辺にやってきた。
男は早速ほのかを口説こうとする。
目的は一つだった。
その時までまさかその男は命を狙われるとは思っても居なかったが。
警戒されたり逃げられてはまずいとずっと心を殺していたほのかは少しずつ心を開放していった。
そう、殺意である。
そしてほのかはあのことを聞こうとした。
「ねえ、この車もいいけどあの車はどうしたの?」
「あの赤いスポーツカー!」
男は、ほのかを不審に思わなかった。
わりと地元では有名人で通っている。
知っていても不思議ではない。
ああ、ちょいと犬っころをひっかけたので
けちが付いて手放した。
「うそ!」
「人を轢いたくせに!」
ほのかは取り乱す。
「お前はいったい?」
男はほのかが何者か思いだそうとした。
あの事故の事を知っている女、そしてこの取り乱しよう。
「お前まさか・・・」
「そう、あの時あんたが轢き掛けたのが私!」
「あれから私は自殺をしようとしていた!」
「どうせあんたを殺しても三郎は帰って来ない!」
「だから他のことには目が回らなかった!」
「まさかあんたがこうしてのうのうと生きているとは!」
「露程も思っていなかった・・・」
みるみる男の顔色が変わる。
「三郎の仇いぃ!」
そう言うとほのかは隠し持っていた果物ナイフで切りかかった。
が、しかし既にほのかの正体に感づき始めていた男が片手しか使えない華奢な女の振るうナイフをあしらうことなどたやすいことだった。
この男はほのかが名乗るまでほのかの正体に気づかなかったのだ。
不意を付けば容易くに行えたはずなのに、ほのかはそうはしなかった。
痴情のもつれではない。
あくまで三郎の敵討ちなのである。
それを名のらずに討つことはほのかには出来なかった。
そう。
殺される意味を知らしめたかった。
が、それはあくまで自殺行為でしかなかった。
軽くナイフを取り上げた男はそのナイフを軽く振り回す。
ほのかは服を切り裂かれかすり傷だが肌からは血を流していた。
男は激昂していた。
「このアマっ!」
「虫けら1匹死んだくらいで!」
「この俺様の命を狙おうとはふてぇアマだ!」
「正等防衛で殺してやるよ!」
「一度人間をおもいっきり切り刻みたいと思っていたんだ!」
「こんな所じゃ誰も助けに来やしないし!」
「片手が不自由じゃバランスが悪くてうまく逃げられやしないだろう?」
車から転がり落ち海辺へ追いつけられるほのか、下は断崖絶壁。
落ちたらひとたまりもないだろう。
しかしほのかは追い詰められてはいなかった。
実は追い詰められていたのは男の方である。
ほのかは、死はいとわない。
なにかを狙っていた。
男を殺すつもりがナイフを取り上げられ逆に正等防衛とは名ばかりの。返り討ちよろしく死のピンチに直面している。
その恐怖に怯え逃げ惑うかにしか見えないほのか、その実、淡々と男の隙を狙っていた。
自分は生きなくてもよい。
この男を道連れにさえできればそれでいい。
際まで追い詰められたフリをして男の振るうナイフに掴みかかろう。
まさか手が傷つくのも恐れず刃を掴みに行くとは思うまい。
さしてそのまま男もろとも絶壁へと引きずり込むのだ。
ほのかのそんなもくろみは幸いにも男には気づかれなかった。
「嫌、来ないで!」
ほのかの絶叫がこだまする。
男は薄ら笑いを浮かべたままほのかににじみよる。
そしてほのかはバランスをくずす。
ほのかはわざと隙を作って見せたのだ。
男にとっては絶好のチャンス
「決めるぜ!」
男は心臓を狙いナイフを構え直すと一気に突きに行った。
ほのかは交わせない。
いや、かわすつもりもない。
最期の力を使い絶命時に男を巻き込み全体重をかけ後ろに倒れこめば良い。
それだけであいつの命を奪える。
なんのためらいも感じなかった。
(三郎こいつを殺して私もあなたのとこへ行くからね・・・・)
ほのかは感慨深く心の中で呟いた。
その頃、命と霊士は未だほのかの足取りをつかめずに居た。
2人はほのかの行方を懸命に捜したが記憶の無い2人にとっては見知らぬ街である。
流石にめくらめっぽうに探すだけではただ時だけが無常にも過ぎて行く。
時は一刻を争うというのに。
次第に焦燥感が2人を押し包む。
とりあえず2人は瞑想する事にした。
「命!」
「お前はほのかの中に居たことがある!」
「神経を研ぎ澄ましほのかの魂を感じる事が出来るはすだ!」
「あても無く探してもやはり無駄だ!」
「まかせたぞ!」
霊士も今回ばかりはお手上げである。
「うん!」
命には自分にそんな事が出来る確信はもちろん無かったがやるしかないことは解っていた。
出来なければほのかがヤバイ。
それは間違いなかった。
あの様子では本当に犯人を殺しに行ったに違いない。
犯人がみつからなければいい。
しかし悪い偶然はおこりやすいものだ。
多分見つかるような気がする。
そして・・・命にはその先を考えたくなかった。
その先には悲劇しか待ち受けていないような気がしたからだ。
だが、今はそんなことを考えている時ではない。
命は再び心を静めほのかの魂に想いを馳せた。
永遠とも一瞬とも付かない間が流れた。
そして命はカッと目を見開く。
「掴んだ!」
命はほのかの魂を感じることに成功したようだった。
「こっちよ!」
命はすかさず霊士に方向を指し示す。
「ここからだとかなり距離があるように感じるけど!」
「とにかく急いで!」
「ああ!」
「乗れ、そしてしっかり掴まっていろ!」
霊士は命を背に乗せ否応もなく全速力で向かった。
その最中も命はほのかの身に降りかかるなにかを感じている様子だった。
そして同時刻。
天上界。
「無理だ!」
「間に合わない」
下界覗きの水鏡から下界を覗いている三郎は思わず口にした。
先刻から三郎は全てを見聞きしていた。
下界覗きの水鏡は音声も鮮明に聞き取れる。
三郎はほのかのピンチにいてもたってもいられなくなっていた。
頼りにしていた2人はどうみても間に合いそうに無い。
だが2人を攻めるべくもない。
ほのかかすべて選んだ道だ。
ほのかが望み、ほのかが考え、ほのかが行動したことだ。
どうなってもほのか自身の意思であり、誰も悪くなく誰も攻められないはずだ。
しかし違う。
俺はほのかを救うためによかれと思ってしたことなのだ。
しかし結果、ほのかを苦しめ、ほのかを悪鬼の道へと貶めようとしている。
こんなほのかは見たくはなかった。
生前、三郎はほのかの気持ちに気づいてはいたが答えてやる事が出来ずにいた。
三郎も言葉や態度に出さずこそすれほのかと思いは同じだった。
そしてあまりに突然に訪れた永久の別れ。
確かに悔しくないはずはなかった。
しかしほのかさえ幸せに生きていってくれさえすればよかった。
だがそれは、最早適わないのか・・・
「今一度願う。ほのかの為なら自分はどうなってもいい誰か何とかしてくれ!」
しかし答えるものは無かった。
「ふ、流石に奇跡というものは気まぐれでしか起こらないらしい!」
確かに幽霊の2人に知り合い、今までほのかが生きていただけで充分奇跡なのだ。
だが不幸な奇跡であったかもしれなかった。
もしあのまま死んで居たならほのかは悪鬼と落ちることはなかっただろう。
自殺という罪深さからたとえ天国にはいけなかったとしても。
三郎は決心した。ほのかを助けに行くことを。
幸いにも天国の警備は手薄だった。
せっかく天国にいるというのに逃げようなどとは思う者は珍しく。
地獄からも天の上と地の底と離れているので来られるものはいない。
警備をする必要などないのだ。
そのためいつでも容易に脱走する事が出来た。
しかし戻ることは容易ではない事は計り知れた。
だが、もうここに戻る事はないだろう。
ここに居れば穏やかに時が流れてゆき、そしていつかは誰かに生まれ変わることが出来るだろう。
しかし、そんなことに未練は無かった。
自分の命を賭して救おうとした少女をただただ最後まで守り抜きたかった。
「そのためならどんな困難なことでも絶えられるさ!」
「ほのかが苦しむのは耐えられん!」
「俺はその為ならどんな事だってしてみせる!」
天国の外周は何も無く地面を覆う雲も途切れている。
天国は言わば空中に浮いた浮雲の様な存在で外周から足を踏み外せば下界へと降りられるはずだ。
確証はなかったがそうとしか思えない。
いや、そうで無くとも行くしかなかった。
三郎はそっと抜け出し外周の端までやって来たが他の者は無関心であった。
出歩くのは自由だし、まさか天国から逃げ出そうという不可解な行動は理解しがたいと思っているのかもしれなかった。
いずれにしろ外周まで来た三郎は迷わず飛び出した。
むろんそれほど時間的余裕がある様にも思えなかったが・・・。
三郎は急落下すると思い身構えていたが一向にその気配は無い
。雲が無くともさきほどまでと変わらず中に浮いている。
「もしかして!」
三郎は体を動かすイメージを思い浮かべた。するとその様に中に舞う。
「そうか、自在にとべるのか!」
三郎はひとしきり動作を確認する為に飛び回ってみたがなんの事は無い。
赤ん坊は誰に教わったものでなくても産声をあげる。
そんな言わば本能的動作にも似た感覚で飛ぶことが出来た。
これは助かる。
しかし逆に自由落下は出来ないとなると下界に辿り着くまで時間がかかるかもしれないな。
三郎は自由に飛びまわれる事に歓喜はしなかった。
だが自在に動けなければ落下後地面を突き抜けて地獄まで行ってしまうかもしれん。
そう思うと落胆もしなかった。
とりあえず落ちる自分をイメージし下界へと急いだ。
とにかく急ぐしかなかった。
天国は雲の上に存在し雲そのものとも言って良かった。
下界の者からはけっして見ることはかなわなかったが。
普通の雲の様に上空を流れて存在していたのだ。
もちろん天国の中に居るものには気づきもしない緩やかな速度で。
そしてひとつの奇跡が起ころうとしていた
。なんと三郎が目指す場所は丁度今、天国の真下に位置していたのだ。
三郎は下界に近づくにつれ海のさざ波の音、潮の香り、そしてほのかの存在を感じることが出来た。
しかし奇跡はそこまでかのように思えた。
なぜならば三郎がほのかの姿を認識したとき既に眼前に相川のナイフが迫り、ほのかの左胸を正確に貫こうとしていたからだった。
「くそっ!」
「せっかくここまで来たというのに!」
「よくよく奇跡というのは残酷な結果をお望みらしい!」
「良い方向に進めなくてなんの奇跡か!」
「人を救えなくてなんの奇跡か!」
「・・・」
三郎は今まさに迫ろうとしている厳酷な結末に絶句した。
だが、その魂は硬くなに残酷な運命に翻弄されることを拒んでいるかに見えた。
そして・・・
「ほのかに贈りし我が品よ!」
「もしお前にも魂があるのなら!」
「我の想いにこたえ主を守れ!」
三郎の口から無造作に吐き出された言葉。
そしてその言葉に呼応するかのように奇跡が起ころうとしていた。
ほのかの胸元が微かに光ったかに見えた。
そして今まさにほのかの心臓めがけて突き刺さらんばかりに荒れ狂うナイフがほのかの体に向かおうとした刹那、何かにぶつかったかのようにほのかの体からはじかれた。
男はなにか固い物に弾かれる感触を覚えほのかの胸元に視線を合わす。
そこには三郎の贈りし物の正体があった。
ナイフが弾かれた部分。
切り裂かれた服の間からは銀のロケットが姿を現した。
もう三郎でさえ、いつやったのかは憶えてはいなかったがそれは確かに三郎がほのかにプレゼントしたものだった。
確か、ペンギン好きのほのかをからかうという他愛も無い目的の為だったろう。
ペンギンの写真でも入れとけばいいと贈ったロケット。
それをほのかはいつも身に着けていたのだ。
そういつも肌身離さず。そして先程のショックで蓋がぐらついている。
そしてパタンと音を立てて開いた。
むろん出てきた写真はペンギンでは無く三郎である。
たまたま、ロケットの位置がずれていただけのただの偶然に過ぎなかったかもしれない。
しかし通常なら中心に来るはずのロケットである。
バランスを崩したほのかにナイフにあわせるなどそんな芸当が出来るはずも無い。
そこには三郎が引き寄せた奇跡があった。
そしてその時、相川が躊躇している間に三郎は間に合った。
相川には三郎は映らない。
なぜなら相川は死を願っては居なかったし、少しも罪の意識も持ち合わせてはいなかったからである。
しかしほのかには三郎の姿が見えた。
何よりも鮮明に何よりもはっきりと。
今や、ほのかの目には三郎以外のものは映っていなかった。
「幽霊でもなんでも良い!」
ほのかは三郎に抱きつこうとしたがそれは適わない。
ほのかの頬から大粒の涙がこぼれ出す。
「それでもいい・・・」
「そばに居てくれるだけで!」
そして三郎はほのかを諭す。
「死に急ぐなと、なにがあっても・・・」
「幽霊だっていい!」
「一緒にいてくれるんでしょ?」
「なら死なない!」
ほのかと三郎はMを無視して二人で話し続けていた。
「こいつ一人で何喋ってんだ?」
「恐怖で気が狂ったのか?」
「だがな、お前みたいなおかしな女に付きまとわれちゃ!」
「こっちゃいい迷惑なんだよ!」
相川は再度ナイフを構え直すとほのかへの殺意を再度あらわにした。
それに気づいた三郎が相川の前に立ちはだかる。
ほのかに
「大丈夫、すぐすむからじっとしてて!」
とだけ告げ。三郎は相川に向かって
「やめろ!」
「ほのかを殺すのならば俺はお前を殺さねばならん!」
と言ったが罪の意識の無いその相川には三郎の姿は見えず声も聞こえなかった。
むろんやめるはずもなかった。
「ならばしかたないか・・・」
三郎は意を決し相川に乗り移った。
するとすんなり三郎は相川の中に入れた。
相性も何も無い。
今の三郎はまさに無敵だった。
そして相川の体の中では激しい攻防が始まった。
「なんだ?てめえは?」
男はいきなり自分の体に侵入してきた三郎に対し激しい抵抗を試みたが三郎の気迫はただものではなかった。
「お前を恨んでするんじゃない!」
「ほのかを殺そうとするからだ!」
男の中に入り込んだ三郎はにわかに主導権を奪取し、手に持つナイフを自らの体に突き立てた。
心臓を一突き、さらにえぐる。相川は苦しさにのけぞり、三郎共々そのまま崖下に落下してしまった。
「凄まじいな・・・」
「乗り移ってわが身にナイフを突き立てるなど!」
「さぞくるしかろうに・・・」
やっと追いついてきた霊士がそう言った。
「でも、ほのかは助かった!」
背中で命が言う。
「三郎!」
取り乱し崖に飛び込もうとするほのか
「まてまて、大丈夫だ!」
「俺たちにまかせろ」
「いや、俺にかな?」
霊士は言い直すと命にほのかに乗り移っていろと指図した。
ほのかもそれを受け入れ、ほのかには命を乗り移らせ。
霊士は崖下の様子を探る。
相川はもう絶命しているだろうが。
海中に潜り三郎を見つけその手を取りすぐさま、ほのかの元へ引っ張ってくる。
「おそらく、もう時間が無い!」
霊士は三郎が喋るのもかまわずほのかの前に突き出してやった。
「最後の別れだ!」
「言いたいことを話せ!」
と霊士。
「どういうこと?」
「ずっと一緒にいられるんだよね?」
ほのかがまたもや取り乱す。
三郎はその理由を話し始めた。
「自分は天国にいて全てを見ていたんだ!」
「それでほのかのピンチをみて!」
「無我夢中で天国から逃げてきたんだ!」
「天国からは自由に逃げられる!」
「でもずっと監視されていたんだ!」
「今もね!」
「そして人を殺した僕が天国に戻ることはかなわないだろう!」
「それどころかすぐに地獄へ行かなくちゃならない!」
話しながらも三郎の姿は少しずつ地面に沈みはじめた。
「やはりな・・・」
霊士はそう呟いた。
「そんな、なんとかならないの?」
ほのかは苦悶の表情を浮かべる。
試しに霊士は三郎の体を渾身の力を込めて引っ張ってみるが沈みの進行を食い止めることは適わない。
「そんな、だってこの人達だって・・・」
「俺達は天国の選にも地獄の選にも何故か洩れた存在!」
「ちなみにさっきの男はしっかりと地獄へ堕ちて行ったぞ!」
霊士は2人に背を向けた。
そして命をほのかから抜き出しどこかへと行こうとしていた。
「名残を惜しめ!」
そう言い残すと霊士は命を連れ姿を消した。
後に残されたほのかと三郎。
三郎は残り少ない時間でほのかを説得するしかなかった。
またしても自殺し、自分の後を追うのなら三郎が今までしてきた全てのことは無駄になる。
別に自分のしてきたことがむだになるのは良い。
だがほのかを結局は守れなかったのでは意味が無い。
三郎はほのかを諭すように語り始めた。
「ほのか、俺の写真をロケットに入れてずっと持っていてくれたんだな・・・」
「俺はお前のことが好きだったんだ!」
「ずっと言えなかったがな・・・」
既に三郎はひざまで埋まっている。
「嬉しい・・・」
「私も・・・」
私も三郎のことが大好き!」
「言えなかったけどね・・・」
悲しい告白であった。
思わず三郎に触れようとするほのか
しかしやはり、すりぬける。
やっと互いの気持ちを口に出すことが出来た。
しかしそれはつかの間で別れがすぐそこまで迫っている。
ほのかは埋もれ行く三郎を掘り出そうと素手で必死に硬い地面を掘ろうとしていた。
すでに手は血だらけである。
「ほのか!」
「俺は地獄に落ちてしまうが!」
「俺はお前のことを忘れない!」
「たとえ地獄に落ちようとずっとおまえのことを思っている!」
「だからお前も俺のことを忘れるな!」
「そして俺の分まで生き抜いてくれ!」
既に三郎は腹まで埋もれている。
ほのかは生爪をいくつかはがしたがそれでも掘るのをやめようとはしない。
「私も一緒に連れて行って・・・」
ほのかは、やはり三郎と共にあることを願った。
「あなたと一緒に逝く事が私の願い。私の全て」
ほのかははっきりとした口調でそう告げた。
しかし三郎は首を振る。
「無駄だ!」
「お前が死んだとて」
「俺と一緒には逝くことは出来ん!」
「地獄は業の深さや罪の深さによりいくつもの地獄がある」
それ故、まったく同じ罪をおかしても堕ちる地獄は同じではない。
「俺は天国を脱走し相手が何者であれ殺した罪!」
「そしてお前は自らの生命をまっとうしなかった!」
「自殺という罪に問われることになり!」
「確実に違う地獄に送られるだろう!」
「俺はお前のためならどんな目にあっても耐えられる!」
「だがお前が苦しむ様は耐えられない!」
「だからどうかこの世で幸せに暮らしてくれ!」
「あなたなしじゃ幸せになんてなれない!」
「絶対に!」
ほのかは全ての生爪をはがしてしまったがまだ掘るのをやめようとしない。
「地獄にもほ恩赦はある。それに俺も努める!」
「お前が天寿を全うする頃には必ず天国に戻ることを約束する!」
「だからお前も一生懸命生きてくれ!」
「俺の好きだったほのかのままで・・・」
「ううああああああ!」
ほのかの絶叫。そしてほのかは、掘る手を止めた。
ほのかは涙をぬぐった。
泣きはらしていて目は、まっかだったがここにきて凛とした表情をみせた。
「約束だからね!」
「絶対に・・・」
三郎は今までほのかに対して嘘をついたことは無い。
どんな困難な約束だったとしても一度した約束は必ず守って見せた。
そして今回も幾多の困難を乗越えほのかのピンチを救ったのは完全たる事実であった。
じゃあ私の顔を目に焼き付けておいてね。
ほのかは三郎との最後の時を悟った。
「最後の時に相手に涙は見せられない!」
ほのかの、誰かと別れるときの口癖だった。
「涙で送ればまた逢う時も涙に濡れて再開することになる!」
「なにより思い出される顔は涙でくしゃくしゃの顔になってしまう!」
「だからせめて別れる時はとびきりの笑顔で送ろう!」
声が振るえ体も震えていた。
目頭が熱い・・・気を抜けばまた涙があふれだしてしまいそうだった。
「またね!」
ほのかはとびっきりの笑顔を一度だけした。
三郎は最後のその笑顔を目に焼き付けつつしずんでいった。
「三郎うううううう!」
ほのかの絶叫がこだまする。
絶えていた涙が大波のように押し寄せ地面に次々と流れ落ちる。
しかしその涙も瞬く間に地面に吸収されていく。
「約束よ!」
ほのかの心は生きる決意に満ちていた。
「そう、私は生きる!」
「三郎との約束を守る為に・・・」
ほのかと三郎の悲恋は終わった。
だがそれはまた始まりでもあった。
ほのかにはもう霊士の姿も命の姿も見ることはかなわなかった。
それは、もうほのかに死の意思が無いことを示していた。
あのあとほのかは2人の姿を探したが見つけることは出来なかった。
現実には目の前にいたにもかかわらず見えなかったのだ。そして二度と見ることは無かった。
それから数日経過した。
暦は九月に入っていた。
まだまだ暑い日は続くが長いようで短かった夏休みも終わり。
ほのかの通う高校も新学期に入ろうとしていた。
例年通りに行われる二学期の始業式。
広い体育館に全校一同が収まり行われる数少ない行事。
そしてその中にほのかの姿もまたあった。
だが今年は例年とは違い少し重々しい空気に包まれていた。
むろん三郎の死によるためである。
校長によるいつものお決まりの挨拶が始まろうとしていた。
そしていつもより重々しく校長の挨拶が始まる。
「えー我が高の生徒のほとんどが!」
「夏休み中に大きな事故や病気もなく!」
「再びこの場に集えることをとても嬉しく思っとります!」
「しかし、ここで皆さんに残念なお知らせがあります!」
「みなさんの中にもご存知の方もおられるでしょうが!」
「夏休み中に悲しい事故が起こってしまいました!」
「去る7月二十日の夕方。一年A組の山根三郎君が交通事故で無くなりました!」
「悲しい事故でした!」
校長は一旦頭を下げる。
そして暫くの静寂。
重苦しい時間が全てを支配していた。
そしてそれを打ち破るようにもう一度頭を上げ
「では、その死を悼んでクラスメイト代表として!」
「白木ほのかさんに追憶の辞をお願いしましょう!」
とほのかを壇上へ招きよせた。
ほのかはゆっくりと歩を進め。
ゆっくりと壇上へあがった。
そして一度頭を下げ目を瞑った。
そしてそのまま喋り出す。
原稿も何も持ってはいなかったから別に目を開けている必要は無かったとはいえ。
卒業生への送辞や、その他作文の発表などを多く目の当たりにしてきている先生方諸氏においても珍しいようであった。
そして校長が手渡そうとしたマイクをも拒否し肉声のみで話すことにしたのも異例であった。
だがマイク無しでも静だが凛とした良く通る声で話すほのかの喋りに聞こえないと不平も洩らす者は誰一人存在しなかった。
「三郎君、まさかあんなに元気だったあなたが突然の事故で!」
「あんなにあっさりと逝ってしまうとは夢にも思いませんでした!」
「この学校ではたった一学期の間でしたが!」
「さまざまな思い出が浮かんでは消えていきます!」
「授業後のホームルームで!」
「クラスの委員がなかなか決まらず!」
「遠方から通っている子が帰りが遅くなると!」
「困っていたら、あなたは誰もがやりたがらない委員に!」
「志願して早く帰れるように仕向けてくれたことがありしたね!」
「あなたは不器用だけど!」
「いつでも他人を第一に考える!」
「そんな心優しい人でした!」
「だからあなたは天国へ行ってもやはり他人の事を第一に!」
「色々と心を砕いているかと思います!」
「私達にとってあなたがいなくなったことは確かに!」
「大変ショックでした!」
「でもあなたは自分のことで他人が心を曇らすことなどきっと望んでいませんね?」
「ですから私達はもう悲しむのはやめにします!」
「あの世でもお元気で!」
「以上、クラスメイト代表白木ほのか!」
そう言うとほのかはもう一度頭を下げ元の場所へと戻っていく。
クラスメイトや三郎を知っている者は終始頷きながら聞いていた。
そして校長の合図により全員の黙祷。
そしてその他の先生の挨拶など始業式のスケジュールは問題なく消化され授業が開始された。
いつも通りの日常が帰ってきた。
ただ三郎がいないだけの日常が。
ショックからまだぎこちなさの残るほのかだったがそれも次第に薄らいでいくだろう。
そして学校も終わり帰途につくほのか。
自室でほのかは追憶の辞の原稿を手にしている
。するとふと思い出したようにほのかは突然本棚にあるとある本を手にした。
本を開き中に挟まっていた何かを取り出す。
それは紙の様であった。
開いてみるとそれは遺書と書かれてある。
自殺時に持って言ったのとは別に写し書きとしてもうひとつ用意してあったのだ。
ほのかは遺書と追憶文とを見比べる。
この遺書こそが私の本心。
まごうことなき私の心。
でも三郎は生きろと言った。
だから三郎によってこの遺書はこの追憶文となった。
だからこっちも今の私の正直な気持ち。
この気持ちを守っていこう。
たとえどんなことがあろうとも。
ほのかはそうぽつりと呟いた。
そしてほのかは眠りにつこうとしていた。
三郎、私に頑張れる力を頂戴ね。
そして約束どおり見守っていてね。
私は頑張って見せるから。
その呟きはどの時点から寝言に変わったのかは定かではないが、いつしかほのかは寝息をたてていた。
すぐそばに三郎の心を感じながら・・・
そして霊士と命・・・
結局2人の目的は達成されないまま、また振り出しへと戻った。
しかし命も霊士も不満の声は上げない。今回は2人とも役には立たなかったが。
三郎の強い意志がほのかを救った。
自分が地獄へ落ちることも厭わぬとても強い意志。
決して諦めず、挫けない強い心。
そんな三郎の行いを目の当たりにした2人はそれだけで有意義な気がした。
自分達がこれから行おうとすることも決してた易いとは言いがたかったが。
なんとかなりそうな気がした。