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1話

「今日は二時間か。最近また眠れなくなってるな。」
眠れなくとも、眠気はある。そんな状態が続いている。そんな憂鬱な朝が今日も始まった。

「おはようミツル。悪いんだけど、またリリーを起こしてきてもらえるかしら?」
変態アラサーが朝の支度をしながらお願いしてくる。仕方ないので行くとしよう。

俺はいつも通り、ドアをノックしリリーの部屋にはいる。誰もいない。俺は驚いて机の上を見た。…手紙?
「探さないでください。当分したら戻れると思います。」
今度は何をやらかすつもりだろう。


「えぇ!リリーさんがまたいなくなった!?でも、貯金は今回は私が金庫に入れているから大丈夫なんですけど…」
「何してるのかしらほんと。でもあの人がなんのトラブルも起こさずに帰ってくるとは思えないんだけれど。」
全くミシェルの言うとおりだ。間違いない。

本当はこのままリリーを放置して家でゆっくりしていたいのだけれども、放っておくと手がつけられないほどのトラブルを抱えてくることがわかりきっている。仕方ない。

「…さがしにいこうか。」
俺がそういうと、3人は無言で立ち上がり、そのまま俺たちはなんの疑いもなく賭場に出掛けていった。
「今日は来店していませんけれども…?」
賭場の店員がそのようなことを言う。そんなわけはない。よく探せ。
「やはり、いないようですね。」
どうやら、本当にいない。なにが起きているんだ。

とりあえず俺たち3人は町中を駆け回った。酒場に教会に道具屋に…
それでもどこにもいない。

「二人とも、そっちにはいたか?」
「いませんでした。」
「私もよ。一体どこにいったのかしら。」
3人で一旦話し合おうと喫茶店に入る。

「いらっしゃいませ!おきゃくさ…ま…」
そこには、綺麗な緋色の髪を縛った外見だけは素晴らしいやつがいた。なぜここに。

俺がすかさず聞く。
「リリー。何を企んでいるんだ?」
「生活費の足しを作れればと思って…」
そんなわけないだろ。この貧乏神がそんな殊勝な心がけをしている訳がない。

俺たちがさらに問い詰めると、リリーは正直に答えた。
「いや、いつも皆の金で賭博してただろ?でも今元手がろくにないからさ。そこで閃いたんだ。どうせ増えるなら借りてくれば良いんじゃないかって。」
あぁぁぁ、もう先が読めてしまう。

「それで、まぁ、その、返せなくなって。でも!今度はちゃんと働いて返そうとコツコツとだな…」
しどろもどろになってきたリリー。ミシェルがとどめの一撃をさす。
「で、借金はいくらなの?」
「1000万ハンス。」
時が止まった。


豪勢な食事が並ぶ。食材は基本的に近くにはえているキノコなどなのだが、それはミシェルが見事に料理をする。おかげで我が家の食卓は大変見映えが良い。

そんな食事を仲間四人で囲んで食事を取る。なんと素敵なことだろうか。
ただ、空気は非常に重いものだった。

ミシェルが口を開く。
「返せるって、よくいつも負けているくせに思えるわね。どんな神経しているわけ?」
リリーは俯いて唸っている。今回は?本当に反省しているようだ。

「で、その1000万を今後もちびちびとクエストで返していくと。あのね、私はお金を集めるために戦ってるのよ?あなたの借金を返すためじゃないの。わかる?」
ミシェルのど正論にぐうの音も出ない。
ミシェルは続ける。

「あのね、自分でも言ってて空しくなるんだけど。私この前イカに連れ去られそうになって嬉しくなったのよ。わかる!?人間以外でも持ち帰ってくれるなら喜べてしまう私の心理状態があなたにわかる!?」
やめろ、それは言うな。なんか泣きそうになる。
ガブに至っては下を向いたまま、顔をあげない。お前笑ってるだろ。悪魔か。

そんな微妙な空気が漂うなか、俺たちにとどめをさす来訪者が来た。
「すみません、リリーさんにお金を貸していた商人なんですけれど。」
そこには、商人となぜか警察が立っている。なんかまずいぞこれは。

俺はとりあえず、今お金がないことを丁重に謝罪し、少しずつ返していく旨を伝えた。そうすると、警察が口を開く。
「となると、この家の資産を一旦差し押さえることになりますね。というより、家ごと差し押さえになるかと。」
うそだろ…?


俺の必死の懇願と、商人の優しさで家の差し押さえは一旦待ってもらえることに。しかし、時間がないことも事実だ。
「みんな、その、本当にごめんな?」
なんかもう、俺よりこいつの方が精神病な気がしてきた。

「ミツルさん、どこへ?」
俺がリビングの自分の席に戻らずに、自分の部屋に戻るのをガブが不思議に思い、訪ねてくる。俺はもう心に決めていた。もうこれしかない。

俺は引き出しを開いた。そう。前に見つけてしまった地図である。×がついているところには、ファンタジーらしく宝でもあるのだろう。これにかける。

俺は宝の地図を持ってリビングに向かう。もう、リリーは泣きじゃくった状態だ。そんなリリーが俺の方を見て言う。

「リーダー。なんだそれは。こんなときにふざけているのか?」
お前にだけは言われたくない。誰のせいでこんなことになっていると思っているんだ借金の神様が。

「宝の地図だ。掃除しているときにこの家にもとからあった引き出しから見つけた。といっても宝の地図かどうかはよくわからんけどな。行ってみる価値はあるんじゃないのか?」

俺の言葉に少しミシェルが呆れながら、
「宝の地図なんてありえないわ。まぁ、明日クエストを見に行くついでに受付嬢さんに確認しましょう?」
そうして、明日のやることは決まった。とりあえず、四人で装備を整えて酒場に行き、宝の地図の確認も兼ねてクエスト受注に行くことになったのだ。

そう。そのはずだったのだ。
俺たちはいつも通りのクエストに向かうつもりでなんとなく軽い気持ちで身支度をして寝床についたのである。

尚、リリーは風呂から上がる頃にはいつもの様子に戻っていた。
もう本当に、こいつは一体どんな神経をしているのだろうか。


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連絡です。GWは令和初日から10話ずつ三日間投稿します!暇つぶしにどうぞ!

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