リンちゃんと惑星レトロナ Fractal.1
『レェェェトロォォォナ……ファァァイブッ!』
天空に立つ鋼鉄の巨人が、雄々しくポーズを決めはった!
「アカン……リンちゃぁぁぁーーーーん! 帰って来てぇぇぇーーーーッ!」
ウチは叫んだ!
哀しなって……
『ツェレーク、空間転移完了──量子波動安定化──現フラクタルブレーン座標照合、3
空間転移が終わった。
「今回はエライ滞在可能時間長いねぇ? 約三日やん?」
イザーナの
『ま、そういう事もあるっしょ』と、ミヴィークの
淡白に切り捨てて、テキパキと発進準備を進めとる。
『んで、クル? 今回は、どんな感じの惑星よ?』
リンちゃんの質問に答えるべく、反対側のモニターにクルちゃんが映った。
『今回の目的地は〈惑星レトロナ〉──あなた達の地球に似通った惑星』
「ふぇ? ウチらの〈地球〉に似とる
『とは言っても、旧暦──それも〝昭和〟と呼ばれた時代に酷似している』
「ふわぁ? ウチ、楽しみや ♪ 旧暦、体験した事無いわぁ ♪ 」
『……いや、そりゃそうでしょうよ』
「リンちゃん、ある?」
『あるか! アンタ、アタシを何歳だとカウントしてるッ?』
「えへへ~ ♪ ウチと同い年 ♪ 」
『……嬉しそうにニコニコしてないで、少しはアタシの意図を汲め』
「楽しみやね? リンちゃん ♪ クルちゃん ♪ 」
『うむ、実に楽しみであるな』
「ほら、ハッちゃんも楽しみやって……」
『…………』
『『「………………」』』
ウチとリンちゃん、とんでもない予感に泡食ったよ?
第三の通信相手に面喰らったよッ?
『エエエ……エルダニャ? まさかアンタも降下する気なのッ?』
『騒がしいのぅ、リン。当然であろう? オマエ達が降下するのであれば、
『どうしてだッ! そもそもアンタ〈
『フッ……抜かり無いわ!
「ハッちゃん」『エルダニャ』『痛いアルワスプ』
『違うわッ!』
合ってるやんな?
『さぁ、心して見るが良い……
自信満々ぶりに続けて、普段使わへん〝第四ブロック十三型六六六番
此処、普段は閉鎖されとんねん。
不吉な番号の羅列やし、夜間整備してるとラップ音とかオーブとか騒乱しはるし、シャッターとか
ほんでもって重々しい逆光を浴びつつ、初見の〈
ハッちゃん専用機やから、きっと〈蜂型〉……やない!
何故か〈魚類型〉や!
ウチの〈イザーナ〉やリンちゃんの〈ミヴィーク〉に似たフォルムやけど、二回りデカイ!
しかも、何処となく凶暴な
ウチ、あんなん古い映画で観た事ある!
確か〈モササウルス〉いうヤツや!
『何で〈モササウルス〉だーーッ?』
リンちゃん、ウチの代弁を叫んでくれはった。
有難うねぇ?
『む? コレは〈もささうるす〉というのか? 実は
ハッちゃん、もしかして〝DVD〟を〝でーぶいでー〟言うタイプ?
『そんな中で、
『いや、まぁ……アンタの気位なら、そういう基準にもなるか……』
『私のアルにーー♡ 』
『基準そっちかーーーーッ!』
『だってぇ~ん ♪ アルってば、カッコイイじゃない? 凛々しいじゃない? 胸、大きいじゃない?』
最後の関係あらへん。
「あんな? ハッちゃん?」
『うふふ♡ アルアルアル~ン♡ コレで一緒に新婚旅行~~ ♪ 』
「あんな? ハッちゃん? 鼻血流してクネクネなってるトコ悪いけど……ちょっとええ?」
『アルアルアル~ン♡ 私のアル~ン♡ 』
「おらへんよ?」
『うわ~~~~ん!』
号泣しだしはった。
感情忙しいねぇ?
『うぐっ……グスッ……して、
凛と上から目線や。
ハッちゃん、情緒不安定?
「あんな?
『そうよ! そんな〈
『私じゃないわよ』
また新たな通信モニターが開いて、困惑気味の眼鏡美女が映った。
表マリーや。
軽くパーリー状況や。
『マリーが造ったんじゃないの? じゃあ、誰だッつーのよ?』
『う~ん、私じゃないんだけど……何処となく見た記憶があるのよね、
『フッ……やれやれ。どうにも
ハッちゃん、優越感めいて勝ち誇ってはる。
『コレは、あの倉庫に眠っていた機体である! それを〈もささされす〉へとフォルム改修して新生させたのだ!』
噛んだよ?
『あの倉庫って……まさか〝第四ブロック十三型六六六番
『
『ンなワケあるかッつーの! あそこ、ずっと
リンちゃん、
『思い出したわ!』と、突然マリーが声を上げた。『あの倉庫に眠ってたのは〈イザーナ〉と〈ミヴィーク〉の試作機体──つまり〈プロトタイプ〉よ!』
『は? アタシらのプロトタイプ? それが〈モササウルス〉って……色気無ぇー』
『いいえ。別に〈モササウルス〉じゃなかったわ。かといって〈イルカ〉でも〈シャチ〉でもない』
『んじゃ、
『何でも無いわよ。単に外装無しの剥き出し機体……骨組みと基礎設計メカニズムだけ。機体も、ここまで大きくなかったわ。せいぜい〈イザーナ〉〈ミヴィーク〉の1・3倍程度……』
『だから、言うておろう?
噛んだよ?
『んで? 何で、そんなのが封……放置されてたワケ?』
また〈封印〉言い掛けたねぇ?
『……死んだのよ』
『は?』「ふぇ?」
『当時、その機体開発を担当していた整備員がね……その
陰惨な黒歴史が炙り出てきた!
アカン! この作品〈SF〉なくなってまう!
『相当思い詰めていたみたいね……生真面目過ぎる性格だったから……けれど、誰も彼女の胸中に気付けなかった』
ウチとリンちゃんは、ゴクリと
「それって、開発に行き詰まった……とかなん?」
『あ……
『いいえ』と、深刻な面持ちで真相を告げるマリー。『彼氏と別れたらしいのよ』
『開発秘話、関係ないじゃんッ!』
リンちゃん、間髪入れずに突っ込んだ!
『来る日も来る日も缶詰状況で、しかも完成の
『よくある話じゃん! 死ぬ
「ふぐぅ……その人、可哀想やぁ~」
『……何で
リンちゃん、あんまりや!
『頬を伝う乾いた涙は何だか可笑しく、明日からの生き甲斐を模索するのも面倒になってきていた』
クルちゃん? いきなり何をブッ込んできたん?
誰も読んでへんよ?
『しかし、それにしても、なかなか見事な腕前であるな? 正直、
……ハッちゃん? 誰と話しとるのん?
『
ハッちゃん! 帰ってきてぇ~~ッ!
『うむ、善かろう! 今日より、
ドエライ人を採用しはった!
ほんでもって、噛んだ!
『ホホホ……苦しゅうないぞ?』
オーブ飛び始めた!
ハッちゃんの周り、無数の発光体が喜び飛んではる!
『では、改めて紹介しよう。リン、モモカ、クルロリよ、此処に居るが、
『「行ってきまーーすッッッ!」』