プロローグ
高校一年の秋に、俺はトラックにはねられて、異世界に転生した。
まあ、あるあるってやつだ。
俺は、その世界で冒険者になって、色々な旅をした。
スライムを倒して、オーガを倒して、最終的にはドラゴン的なヤツも倒した。
英雄と呼ばれたり、ハーレムをつくったり、色々した。
実に充実していた異世界ライフは89歳で終わった。
天命をまっとうした俺が目を覚ました時、違う異世界で赤ちゃんになっていた。
嬉しいことに、記憶も能力も全部継いでいた。
強くてニューゲームってやつだ。
まあ、あるあるだな。
俺は、二度目の異世界生活も楽しんだ。
一度目の異世界転生と違い、最初から無双しまくって、その世界の伝説になった。
なかなか刺激的だった二回目の異世界転生も、102歳で終わった。
天命をまっとうした俺が目を覚ました時、違う世界で魔物になっていた。
幸いなことに、またしても、記憶・能力共に余す事なく引き継いでいた。
サクっと魔王になって、世界を支配してやった。
まあ、あるあるだな。
なかなかゲスい世界で、クズみたいな人間が沢山いたので、片っぱしから調教してやった。
まともな人間もそこそこいたので、そいつらと配下を巧みに使って世界を平和にしてやった。
なかなか楽しい魔王ライフだった。
そんな生活も、92歳で終わった。
天命をまっとうした俺が目を覚ました時、俺はまた違う異世界で目をさました。
このあたりから、「アレ?」と思い始める。
だが、俺は、「まあ、いいか」と、また新たな世界を楽しんだ。
まあ、楽しかった。まだ、楽しかった。
レベルは遠慮なく無制限にどんどん上がっていくし、出来る事も加速度的に増えていくし。
楽しかった。
うん、この辺りまでは、まだまだ楽しかった。
天命をまっとうしてから目を覚ますという異常事態も、経験回数が50を超えると、ただのダルい面倒事になった。
「またか」
いつしか、それが、俺の口癖になった。
その口癖が発動するのは、生まれ変わった時だけじゃない。
冒険者に登録するときにからんでくるテンプレとか、
妙にお気楽な神様とか、
腐った貴族とか、
魔王とか、
勇者とか、
ありとあらゆる者に対して、俺は「またか」と思うようになった。
そして、俺はまた、違う異世界で目を覚ます。
記念すべき、百回目の目覚め。
俺は流石に叫んだ。
「もういい! 異世界転生、もう飽きた!!」
俺の存在値(レベルとかステータスとかパッシブスキルとか全部ひっくるめた総合値)は現在、17兆。
称号は、恥ずかしながら、究極超神。
異世界に転生する事、計100回。
気付けば、俺は、どの世界の神よりも上位に位置するバケモノになっていた。
それはいい。
別に、それは、まあいい。
そんな下らないことより、ねぇ、これ、いつ終わんの?