第13話 開拓8日目 基礎の固定
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人が利用しなくなった建物はやがて取り壊されるか放置され"廃墟"となる。
現存している廃墟のほとんどは近代以降に作られたコンクリート建築であり、近代以前に作られた木造建築の廃墟はほとんど残っていないと言う。
なぜなら湿度や気温変化の大きい日本の気候ではよほど手間暇費用を掛けてメンテナンスを続けない限り木造建築は朽ち果ててしまうからであるらしい。
そんな日本でも住居跡の遺構が見つかっているのは、建物を建てる際に掘った穴が地中に残っているからである。
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私の建てる小屋の上物も数百年、数千年後には完全に朽ち果てしまっているだろう。しかし基礎はきっと残っていることだろうと思う。
もし未来の考古学者がこの平成末期の滋賀県山中に建てられた謎の小屋跡らしき遺構の基礎を見つけたらどの様に考えるだろうか。
"なぜこの時代に?"
"なぜこの場所に?"
"一体どういう人物が?"
"どういう目的で小屋を建てたのだろうか?"
きっと不思議に思うに違いない。
その場面を想像すると少し愉快な気がする。
私のこの小屋作りへの思いは未来の考古学者に伝わるだろうか。
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[ 8日目 ]
基礎の作業も大詰めである。
基礎には「羽子」と呼ばれるボルト穴の空いた金属部品付きの沓石を用いる。
この沓石を水糸の交差を目印にして正確な位置・高さに設置して、最終的にモルタルで固定するが一度モルタルで固定してしまうとやり直しが非常に困難となるためこの作業は慎重に行う必要がある。
基礎の作業に先立ち、車で水を汲みにいった。水のポリタンクは20Lの容量のものを3本買っているが、このポリタンクに水を満タンに入れると重すぎてとてもじゃないが私の力では持ち運べないからである。
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[ 沓石の固定 ]
まず四隅に沓石を仮設置する。モルタルで固定する前に木材を使って沓石同士の水平を再確認する。
今回、モルタルには水を入れて混ぜるだけの「インスタントモルタル」を使った。モルタルはセメントと砂を別々に買って自分で配合する方が安上がりになるとのことだが、web上には失敗事例が多くあったため、高くても市販品を使うことにした。そうは言っても値段的に大差はなかったと思われる。
全ての沓石の仮設置が終わって、いよいよモルタルでの固定作業である。
まず四隅ではない中間地点にある沓石から始める。
沓石を穴からどける。乾いたままの沓石はモルタルから水を吸収してしまうそうなのであらかじめ水をかけて吸水させておく。
次に掘った穴の中心にモルタルを入れて盛る。このモルタルは水で混ぜずに乾いたまま入れる。
そして沓石を置いて、両手で揺さぶり、高さと位置をもう一度測って微調整する。
最終に沓石と穴の隙間をモルタルで固める。この時のモルタルは「トロ船」と呼ばれる工事現場でよく見かける長方形の容器にインスタントモルタルを入れ、計量した水を少量ずつ加えて練ったものである。
トロ船はバケツでも代用できるので最初買うべきかどうか迷ったものだが、今後水場にも再利用できると考え購入した。
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沓石の固定は体力も気力も必要な作業で、1日では終わらなかった。
幸いなことに明日の天気も晴れで作業日和である。モルタルは思った以上に量が必要になりそうで不足分をホームセンターに追加購入しに行った。
連日の作業で疲労は溜まっているが、気持ちは晴れやかだった。すべてが思い通りに行っているというわけではないが、どんなトラブルにも臨機応変に対応できている自分の現状に満足していた。
しかしそんな幸せな気分なところに、後輩から面倒そうな依頼のメールが届くのであった。
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--経過--
進入路の工事 完了
資材の購入(基礎・床材) 完了
資材置場(仮)の建設 完了
基礎工事 進行中
基礎の固定 進行中 2/3
後輩の依頼 NEXT