第09話 開拓5日目 水盛り、貫板の取り付け
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私がなぜ小屋を作るのか?
理由は複数あるが、もっとも大きい理由は『私が小屋を作れることを実証したい』からである。
小屋作りそのものが目的なのである。
私は幼い頃からいわゆる"開拓モノ"が大好きだった。
小学生の時に学校の図書室で読んだジュール・ヴェルヌの『神秘の島』は特に印象に残っている。南北戦争時代に気球に乗った5人のアメリカ人達が太平洋上の無人島に漂着し、その無人島を開拓していく小説であるが、科学知識を駆使してあらゆる課題を解決していく描写が凄い。
アザラシの油脂からグリセリンを抽出してニトログリセリンを作り、発破によって地形すら変えてしまう描写などいま読み返してもシビれる。
自分もいつかその様な開拓に身を投じてみたいと心躍らせたものである。
しかし大人になったいまなら分かることだが、その様な開拓に参加する機会は残念ながら無い。
もちろん某アイドルグループが無人島を開拓しているテレビ番組の存在は知っているし、毎週欠かさず視聴しているが、現代の一般人にとって無人島開拓などハードルが高すぎて手が出せないのが現実なのである。
しかし山奥に土地を買って小屋を作ることはギリギリできることである。
もちろんそれは容易なことではなく、かなりの知識、計画性、体力、精神力が必要となることは予想されるが、私は自身がそれを成し遂げられる存在であると思うし、そうでありたいと思う。そしてそれを確かめたいとも思う。
小屋を作ることは私が私自身に課したチャレンジなのである。
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[ 開拓5日目 ]
雨は昨晩早くに止んだらしい。
テントを出て雨の影響を確認するが幸いなことに何処にも悪影響は無さそうだった。
表土を掘り返したことで凹地になっていた建築エリアは雨水が貯まる心配があったので、事前に溝を掘って排水処置を講じておいたこともあってか水溜りにはなっていなかった。
今日も引き続き基礎工事に取り組む。
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[ 水盛り ]
小屋の建築エリアは緩い傾斜地となっているため、単純に地面からの高さだけを測って四方を繋いだ場合、建物が傾いてしまう。そのため『水盛り』という水平面を測って高さ合わせする作業が必要となるのである。
今回道具としては水を入れたペットボトルに透明なビニールホースを繋いだ自作の水盛り器を使う。
この自作水盛り器の仕組み単純で、ペットボトルのキャップに穴を空けてビニールホースを繋ぎ、ペットボトルに水を入れてひっくり返すことで、ペットボトルの水面とビニールホース内の水面の高さが同じになるという物理学における『サイフォンの原理』を利用したものである。
バケツに入れた水を使う方法やレーザー式の水準器を使う方法も検討したが、価格と簡便性を重視して今回の方法を採用した。
まず敷地中心にコンクリートブロックを置いて、自作水盛り器をひっくり返し、更にその両側をコンクリートブロックで挟み込んで固定する。
ホース内に入ってしまった気泡を追い出してホース内の水面とペットボトル内の水面の高さが同じになっていることを確認してから木杭に印を付ける作業を行う。
実際に印を付けてみると最も高い所と最も低い所では約50センチほどの高低差があることが分かった。
斜面の高低差は基礎の沓石を置く穴の深さで微調整できると考えていたが、思った以上に高低差があり、微調整で対応できる範囲ではないため誤算と言える。計画の修正を検討しなければならない。
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[ 貫板の取り付け ]
高低差の問題はさておき、次は水盛りした水平線に従って木杭間を「貫板」で繋いで固定していく。
木ネジで貫板を仮固定したあと水平器を当てて、水平器の中の気泡を凝視して貫板が水平になってことを確認しながら1つ1つ慎重に作業していくのである。
トルクの強いインパクトドライバーを用いた貫板の取り付け作業は楽しかったが、やたらと時間が掛かってしまった。
作業が終わって一息つきたいところではあるがなるべく早く基礎工事を終わらせたいため、手早く昼食の菓子パンを食べて次の『水糸張り』の作業に移るのである。
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--経過--
進入路の工事 完了
資材の購入(基礎・土台) 完了
資材置場(仮)の建設 完了
基礎工事 進行中
木杭・貫板の取り付け 完了