02
声が止む。
人の声がしない。
魔物の声もしない。
ポックリが勇気を出して物置から出る。
幼馴染の少女がいた。
「あ、リサ。
無事だったんだね」
ポックリがリサの肩を叩く。
するとコロコロとなにかが転がる。
ポックリの頭が真っ白になる。
リサの頭が足元に落ちた。
なにが起きたかわからない。
わかっているのはリサがもう死んでいるということだけ。
ポックリは、声が出ない。
ポックリは少しだけ冷静だった。
声を上げれば魔物が来るかも知れない。
だから声を出さず。
その場で泣き崩れた。
結局。ゲタ一族で生き残ったのはポックリだけだった。
誰もいない街。
自分だけしかいない街。
残酷な現実。
そんな彼のもとにひとりの男が現れる。
「僕と契約をして魔人にならないかい?」
「貴方は?」
ポックリは、決して変わることのない絶望の表情で男に尋ねた。
「あれ?つかみはバッチリだと思ったのですがね……」
「なんなんですか?貴方は……
ってか貴方、魔族ですよね?
僕を殺すのなら早く殺してください」
「ふふふ……殺しはしません。
でも、なんだかんだと聞かれたら。
答えてあげるが世の情け、世界の破滅を防ぐため世界の平和を守るため愛と真実の悪を貫く魔界の果てからこんばんは。
私、魔界ブリタニ王国営業部平社員のブリ男と申します」
「ブリ男さん?魔界の営業?聞いたことありません」
「それはブリタニ王国の営業努力がないからです。
善処しなければいけませんね」
「で、魔人になるってどういうことです?
魔人にして人を殺せというのですか?」
ポックリの瞳には涙があふれる。
「人は殺さなくてはいけません。
人は人財。殺すなんてもったいない。
僕たちブリタニ王国は人類の味方です。
そういう魔族もいるんですよ」
「そうですか」
ポックリはどうでもよかった。
どちらにしても自分はモブ。
殺されるだけに産まれた存在。
しかも、経験値にさえならない。
「ベルゼブブを倒す力を得てみませんか?」
ブリ男の言葉にポックリの瞳の色が変わる。
「どういうことです?」
「我ら魔族はベルゼブブの存在が目障りなのです。
そして、人間が大好き。
大好きだからこそ世のため人のため。
こうやって資格のある人に力を授けて回っているんです」
「資格?僕には何の資格もないですよ。
だって僕はゲタ一族。名前はポックリ。
ゲタ・ゲタです、常にHPが1でレベルも1。
殺されるだけ産まれて死ぬ。
ただそれだけの存在」
「HPが1という制約は変えれません。
ですがレベルがあがるようになる。
それが魔人です。
もう一度尋ねます。
盟約と制約の名のもとに魔人になりませんか?」
「僕でも魔王を倒せるのですか?」
「はい、時間はかかりますがレベル次第では必ず倒せます」
「わかりました。
僕が僕の復讐の名のもとに悪しき魔王を倒します」
ポックリの言葉にブリ男は笑みを浮かべます。
「制約成立です」
ブリ男の言葉とともにポックリの身体が暖かくなります。
「なんだこれ……身体が暖かいです」
「それがレベルアップです」
「レベルアップ?」
ポックリはブリ男の方を見たが、もうそこにブリ男は姿はなかった。
ポックリのレベルが2になった。