短編
「大人になんかなりたくない」
少女が小さくつぶやく。
そして言葉を続ける。
「MATCH売れないな……
大人の街で『大人が飲んだら逮捕だぞ』とか『高校生しか飲んじゃダメ』とかいうから売れないんだ」
少女がそう嘆く。
嘆いたところで結果は変わらない。
「MATCH!MATCH!MATCH!いりませんか?」
寒い寒い寒い冬。
雪が舞う空。
「MATCH……」
少女は涙を流す。
「今日中にMATCHを1000本売れないとおかあさんに叱られる」
「……ぐずん」
涙が溢れた。
涙が溢れた。
売れないMATCH。
MATCH売れない。
泣くしかない。
涙しかあふれない。
「……泣いていても仕方がないわ。
MATCH!MATCH!いりませんか?」
少女につめよるのは中年の男。
「お嬢ちゃんいくらだい?」
少女は拒絶する。
こういう男は沢山いる。
身体が目的。
MATCHは買わない。
でも、MATCHを売るより身体を売ったほうが稼げる。
この味を知ったら……
もう止まらない。
「ホ別で2万」
「よし!行こうか……」
中年の男に誘われ少女はホテルの中に消えた。
そして、2時間が過ぎ……
ホテルから出てきたのは少女ひとり。
「売れるかな?あのおじさん」
少女が小さく笑う。
少女の携帯に着信が来る。
【2000万振込完了】
「あ、やっぱりMATCH売るより身体を売ったほうがお金になる」
少女が笑う。
そして今日も少女はMATCHを売る。
「MATCHいりませんか?」
でもやっぱりMATCHは売れない。
でも、売れる命がそこにある。
ビタミン強化炭酸MATCH!
―終わり―