結人の誕生日とクリアリーブル事件2⑬
正午 伊達の家
今日はクリアリーブル集会ということで、伊達は起きて出かける支度をしていた。 昨日は深夜までクリアリーブルの友達とずっと電話していたため、今眠くて仕方がない。
だから集会が始まるギリギリまで寝ようとしていたのだが――――またもや、昨夜電話していた友達に起こされる羽目となった。
『直樹ー! もうすぐで時間だよ、どうしよー!』
「何だよ、とりあえず落ち着けって」
今話している友達は、人見知りで集会へ行くことを躊躇い昨日の晩からそわそわしている様子。
だから『そんなに不安なら明日行かなければいいじゃん』と言ったが『みんなだけが行って俺だけ行かないのは何かズルい』とのことで、結局は彼も行くことになった。
伊達は優しい性格のため、朝から友達の相手をするのは少し面倒だと思いつつも、彼の話にずっと付き合っている。
『直樹直樹! 今日はどんな服装で行けばいい?』
洗面所へ向かいながら、その問いに対して適当に言葉を返した。
「んー? 楽な感じでいいだろ。 いつも俺たちが、集合する時みたいな服装でさ」
朝食は昼食も兼ねて遅めに済ませ、顔を洗い歯磨きをして髪を整える。
『直樹は今日、どんな服装で行くんだ?』
携帯を近くに置いてスピーカーにし、髪をセットしながらその問いに答えていく。
「そうだなぁ。 俺はー・・・上は半袖のレイヤードTシャツにミリタリーのジャケットを羽織って、下はクロップドパンツかなぁ・・・」
『マジで!? じゃあ俺もその恰好で行く!』
「はッ!? 真似すんなよ!」
『いいじゃんか、多少被ってもさ』
「お揃いって見られることが、まず嫌だろ・・・」
突然の発言に、思わず髪をいじっている手を止め言い返す。 溜め息交じりで最後の言葉を呟くと、再びセットに取りかかった。
「そういや、彰よく分かったな?」
『何がだ?』
「ファッション用語」
『俺を誰だと思っている! ラブスクの愛読者だぞ!』
「そんな人、たくさんいるだろ」
整え終えると部屋へ戻り、先程言った通りの服をクローゼットから取り出し着替え始める。
伊達はかなりファッションには気を遣っているため、アクセサリなどの小物もたくさん持っていた。
『でもいいよなぁ、直樹は背が高くて顔もよくて、ファッションセンスもあるんだからさぁ・・・。 あ、そういや集会には何を持って行けばいいんだろう』
「さぁ?」
『直樹は何を持って行くんだ?』
「俺はー・・・携帯と財布くらいかな」
『そっか。 じゃあ俺もそうしよ』
「・・・彰、少しは自分で考えろ」
『ははッ、悪い悪い。 直樹、飯はどうした?』
身なりを整え終わった伊達は、空いている時間を使って簡単に身の回りの物を片付け始める。
「飯? 一応軽くでも食っておけば?」
『んー、分かった。 そうする』
「そういや、クリーブル集会はどんな人が集まるんだろうな・・・」
『学生だけじゃなくて、大人や子供もたくさん集まるんだろ? でもやっぱり一番困るのは、歳が近い女子高生がいた時だよなぁ・・・』
「何だよ、ナンパする気か」
『したいけど怖くてできねぇんだ! 察しろ!』
「いや、する気でいたのかよ・・・」
呆れ口調で口にすると、電話越しからは陽気な声が聞こえてきた。
『そうそう。 直樹って、好きな人とかいないのか?』
「ッ・・・」
『お前性格もいいし、きっとモテるっしょ。 彼女は今いねぇんだろ? つか、いたけど別れたんだっけ』
好きな人の話を突然持ちかけられ、伊達は自然とスクールバッグへ目を移す。 そこに付けられている藍梨とのお揃いのストラップを数秒見つめた後、静かに口を開いた。
「そんな昔のことは、もうどうでもいいよ」
『それ程昔のことでもないくせに』
「ッ・・・。 俺はそろそろ家を出る、切るぞ」
『え、待って待って! じゃあ、一人で集会へ行くのは嫌だから・・・どこかで待ち合わせをしよう!』
その結果――――伊達は友達の言うことを素直に聞き、待ち合わせ場所まで足を運んだ。
「直樹ー!」
そこへ着くと、早々彰は絡んでくる。
「彰・・・。 マジでその恰好にしたのかよ」
「別にいいじゃんか、全く被っているわけじゃねぇんだし? それに、色も全然ちげぇし!」
「・・・」
こんなに人懐っこいと、本当に人見知りなのか疑いたくなる。 だが特別な程そんなに彼には興味がないので、そのことにはあえて口を挟まず集会を行う場所まで行き――――
「おう。 直樹、彰」
他のクリアリーブル仲間である3人と合流し、仲のいい5人はこの場に集まった。 無事に集合できたことに安堵し、周囲を見渡す。
―――人・・・多いな。
大人数集まることは予想していたが、こんなにも多いとは想像もしていなかった。 そんな状況に圧倒されるも、携帯を取り出し時間を確認する。 時刻は12時45分。
―――残り15分・・・。
―――13時になったら、一体何が始まるんだろう。
仲間がこの状況を楽しんでいる中、伊達は一人懸念を抱いていた。
この時はまだ――――何も起こらない。