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失うってこのことだったのか……
僕は、明日どんな顔をして水谷さんと会えばいい?
そう、僕たちは約束したんだ。
『何があっても、私から離れない?』
『うん、離れないよ』
約束したんだ……
だから普通に挨拶して普通に一緒にお弁当を食べて、そして一緒に帰る。
僕は、多分。
水谷さんのことが好き。
それは、変わらない。
僕は、何がしたいの?
ただアイツを殴った手が痛いことだけはわかる。
僕は、殴った拳を押さえながら歯を食いしばった。
「痛いでしょ?」
気がつくと、僕の隣には瞳が座っていた。
「なんだ、帰ってきたの?」
「うん」
「あんな風に、真白が人を殴る所なんて初めて見た」
「……そうだね。
人を殴ったのって初めてかもしれない」