第30話 5人目の戦士
援護射撃を行ったのは……ショートバングに近い、おかっぱボブで栗毛色の髪型をした、スレンダーでデニムスカートを
「……ルイーズ? 高校の時、一緒のクラスだった……ウソでしょ!?」
「ところがどっこい! ウソじゃありませ~ん! 現実デースッ!!」
彼女の本名は
人質だった者達とダフネの周囲にいたゾンビ達はルイーズへと標的を替える。
「ボクの方がタゲられたんご、ここは某霊界探偵の
余裕の表情で彼女は所持していたライフルを捨て、右手で鉄砲のポーズをとる。
「レイジング・バレット!! 伊達にあの世は見てないぜよッ!」
彼女が必殺技の名前を陽気に口ずさむと、人差し指から圧縮した空気弾がゾンビ共に放たれた。それは火薬を使った弾丸よりも一回り上をいく威力だ。
「ハッ……今のうちにバリアの幕をくぐって! はやくッ!」
途端に標準語になったダフネはケガ人をかかえ、4人で固まって防壁に向かう。
「そのカエルの硫酸攻撃には気を付けなさいッ、ルイーズ!!」
ダフネの忠告と同時に、レイニーフロッグはアシッド・スキャッターを吐く。
「〈ヴァリアント〉、ブリーディング・ショット!!」
ルイーズはそれを予測してたかのように、右手をショットガンに変型させた。
「ゲコッ、ゲキューゥウ!?」
その散弾銃から出た太い針は蛙の体液を根こそぎ
「ヘイッ! カエルのカンピンタン一丁上がりだぬ!!」
ルイーズの持つアンデッド能力は〈スキュラガンズ〉、不死物危険度はC+だ。3メートル以上の茶色の猟犬で、肉体に6種類もの銃火器を内蔵しているハイテクなクリーチャー。 本来、スキュラはギリシャ神話で海の怪女として扱われている。
ダフネは人質を安全な場所に運び、傷を負っていた男にはヒーリング・シャワーを使い食われた箇所を再生し、どうにか事なきを得た。
「どうやら……敵の狙撃手はフレッドさんの邪魔を優先しているようですわね」
「ん……? 『ですわね』って何だお? キミ、もしかしてキャラ作ってるの?」
図星をつかれたダフネは赤面しながら、友達のルイーズに協力を要請する。
――――ライノストーカーの猛攻は木々をなぎ倒し、地面をえぐった。
予想を遥かに超える難敵に、フレッドとトラヴィスは森の地形を活かして戦う。
「クソォ! 強力な磁場でさえぎられたように、簡単には近づけねぇ!!」
敵は小回りが利かない分、それを補うために衝撃波による広範囲攻撃をもつ。
「狙撃を避けるためにも、ここで仕留めたいところだが……!」
敵は鼻から
「シャベルじゃまったく歯が立たない! マジで堅すぎだろコイツッ!!」
攻撃後の
「ゴふぁッ!? もろに食らっちまった……!」
フレッドの総合的なスペックは平均的に割り振ってはいるが、正直なところ耐久はさほど高くない。ネクロ・キメラに勝てた要因として、直接ダメージをほとんど受けなかった事が挙げられる。
とどのつまりは、現状のフレッドにとってライノストーカーのこの一撃が、最悪な場合は致命傷になりかねないのだ。
「フレッドーッ! 急いでその辺の樹に登るんだ!!」
壮絶なタックルでぶっ飛ばされ、意識がもうろうとするなか、必死で歯を食いしばるフレッド。彼がしがみつこうとした木は運悪く、すべての葉を落とした骸骨のような老樹であった…………。
「二人とも! ……目をつぶってくだしあッ!!」
眼球に
「うおォッ!? まぶしぃ!!」
フレッドを助けるために、ルイーズは手持ちの閃光弾をサイに投げ込んだのだ。
「キミは一体……何者なんだ?」
「ボクかい……? なに、通りすがりの美少女ガンナーさ。
「え……? それは、体に気を付けてくれ給え……」
「アノ化け物の動き……ボクの必殺技なら数秒だけ止められるヨ、その間になんとかダメージ与えれるよね……!?」
ルイーズの言葉に反応をして、骨がミシミシ音を立てるほどの深手を負っていたが、フレッドはなんとか立ち上がり勇ましく
「その子を信じて、トラヴィス……俺が合図をしたら木の上から強襲してくれ!」
彼にはどうやら何か秘策があるみたいだ。
視力を回復して怒り狂ったライノストーカーが、再びフレッドめがけて猪突しようと仕掛けてくる。その圧迫感は尋常ではなく、まさに背水の陣である。
「……今だッ、美少女ガンナー!!」
「〈ヴァリアント〉、ハーミット・キャプチャ!!」
ルイーズが撃ち出したのは網目をもつ巨大なネットガン。猛獣を捕らえるためにハンターが使用する銃を、彼女は変型により右手から生み出したのだ。
フレッドは敵が捕縛されているのを確認し、深い呼吸を
「俺の肉体よ、限界を超えるぞ!? レッド・アセンションーッ!!!」
真っ赤なエネルギーを発光させ、なんとライノストーカーの真下に潜った。
「ひえぇ……、まさかアノ巨体を持ち上げる気ッ!? どんだけ~!」
ライノストーカーの体重はおよそ12トン以上はある。これは現実世界における
「うおぉおおおりゃあああああああアーッ!!」
それでもフレッドの火事場の馬鹿力によって、ライノストーカーは即座に仰向けの状態になった。だが、ここにきて彼のライフゲージは黄信号を点滅してしまう。
「なるほどッ、硬い鎧をまとっていない腹の箇所なら攻撃が通るってことネ!」
「今だッ、トラヴィス!!」
トラヴィスは
「よしッ刀が通るぞ!」
さらに興奮さめやらないルイーズのレイジング・バレットが敵を撃ち抜く。
「トドメは俺がもらうぜ……? ディレイド・フレアーッ!!」
それはスローモーション映像のように……その5秒間はただ、犀のアンデッドのけたたましい凶暴な叫びがこだまする。そして、腹部の
「やべぇ……もう腕上がらねぇよ、ド畜生めがッ!」
激闘の末――、強敵ライノストーカーを3人の力で退治することができた。
「オレの名はトラヴィス、協力に感謝する……キミは東洋人のようだが?」
「ボクはルイ・ズーフェイ、ルイーズでいいよ。まぁ、台湾美女ってやつなのだ」
自分で美女というのも
結構なオタクであるため、ネットスラングを多用するのが実に彼女らしい。
「俺のフルネームはフレッド・赤江(あかご)・バーンズ! う~ん……君のバストサイズは85センチのDカップってところかな? 形の良いナイスおっぱいッ!」
さっきまでの死ぬような思いをしてでも、フレッドは全くブレずにいた。