バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

9、また暗黒破壊神か! この偽物め!

「おい、大丈夫か?」
「しっかりしろ」


 何だかざわざわと騒がしい。


「お、起きたな。動けそうか?」


 目を開けると、おっちゃん達に囲まれていた。
 見回すと、文字通り何もない。草木が吹き飛ばされ剥き出しの地面がどこまでも続いている。
 どうやら、気を失っていたのはそう長い時間ではなかったようで。上空には綺麗な星空が広がっていた。


「あんな強大なモンスターを倒してしまうなんて、さすが聖竜様だ!」


 誰かがそんなことを言い出すもんだから、途端に聖竜コールが巻き起こる。
 何コレ恥ずかしい。


『そなたらがあ奴を削ってくれていたから倒せたのだ。俺様だけの手柄ではあるまい』

 恥ずかし紛れにそう言うと、周りからまたどよめきが。さすが聖竜様、実に謙虚でいらっしゃる。などと聞こえてくる。もう止めてくれ……。



「しかし、爆発の威力がこれほどとは……」
『一刻も早く倒そうと、爆発するのがわかっていてブレスを使ってしまった。街に被害はないか?』

 だいぶ離れたと思ったが、更地になった地面はどこまでも続いている。街を巻き込まなかった自信がない。

「聖竜様があいつを王都から引き離してくれたおかげで、最初の襲撃で防壁が少し崩れたくらいで済みました」

 再び口々に浴びせられる称賛。
 うん、もう無事なら良いや。それで。

「それから、これを」

 近くにいたおっちゃんが濁った魔石と真っ黒な水晶を差し出してきた。
 爆散した鶏。残ったのは地面にめり込んだ両脚と、この魔石と水晶だったらしい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【暗黒破壊神の欠片】

暗黒破壊神の力の結晶。モンスターを支配し、凶悪化する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 また暗黒破壊神か! この偽物め!
 よくよく見ようと近づいたら、欠片は俺に吸い込まれるようにして消えてしまった。
 え? また?


『う、うむ。確かに水晶をいただいた。倒したのは俺様だけの活躍でない故、他の素材はそなたらで持て。防壁の修繕費にでも当てると良い』
「おおおお! さすが聖竜様!」
「何と慈悲深い」
「アイテムボックスをお持ちか……さすがだ」

 うまく誤魔化せたようだ。しかし、この世界にもアイテムボックスあるんだな。是非欲しい能力だ。
 それは置いといて。俺に口々に称賛するおっちゃん達の相手がめんどくさい。
 疲れたし。むさくるしいおっさんじゃなく、ルシアちゃんのあの豊満な胸の谷間に挟まりたい。


『さて、俺様は帰るぞ。貴様らも気を付けて帰るが良い』
「ハハァッ! ありがとうございました!」

 敬礼のポーズってこっちでも同じなんだなぁ。なんてぼんやり思いながら、空を飛んで戻った。
 飛びながらステータスを確認。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【ステータス】

名前   : リージェ    

レベル  : 13 
EXP  : 10265/ 89867

HP   : 172/ 1752
MP   : 12/ 1349
Atk  : 2974
Def  : 966

スキル  : タリ―語 Lv.3
       我が劫火に焼かれよ Lv.4
       血飛沫と共に踊れ Lv.5
       全てを見通す神の眼 Lv.2
       念話 Lv.1
       反転せよ Lv.2

称号   : 中二病(笑)
       害虫キラー
       農家
       ドM
       聖竜(仮)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 瀕死だった。回復魔法かけて回ったからMPもすっからかんだし。
 よく生きてたなぁ、と思うと鳥肌が立つ。いや、ドラゴンだし竜肌? どうでもいいけど。
 戻ってからルシアちゃんにこっぴどく怒られた後泣かれたのは言うまでもない。


「もうっ、リージェ様ったら無茶をして!」

 泣いたり怒ったり忙しいルシアちゃんに回復魔法をかけてもらいながら、俺は改めてステータスの確認をする。


 レベルアップしてないのに全体的にステータスが上がったのは、あの欠片を取り込んだからか?
 もし、水晶がその名の通り暗黒破壊神(偽物)の力の一部なのだとしたら。こうして倒して取り込み続ければ、こっちは強化されてあっちは弱体化するのじゃないか?
 偽物を圧倒的な力でプチっと潰せば、俺こそが本当の暗黒破壊神であると誰もが認めるだろう。

 それは想像するだけでぞくぞくするほどの快感で。
 カンストまでレベル上げして、積極的に黒モンスターを狩っていこうと決意したのだった。
 そのためには、もっと倒すべき偽物についての情報を集めなければな。

 ああ、明日から忙しくなるな、と俺は明日からの事に期待に胸を膨らませて眠りについたのだった。

しおり