呼び捨て
俺と李緒が付き合い始めて一か月。
この日は李緒が習い事ということで今日は一緒には帰らず、いつものメンバーのもとへと向かった。
「どんちゃん。」
門の前にいたのは、由香とあみだけだった。
「今日は二人だけ?」
「うん」
「みんな用事があってこれないんだって」
まあ、俺を合わせて三人だけだけどかなり話し込んだ。
すると、あみが突然こんなことを聞いてきた。
「ねえ、どんちゃんって彼女できた?」
突然そんなこと言われて驚いた。
「なんで?」
思わず聞き返してしまった。
「いや、ラインのトプ画が変わってたから。それにひとこめもそんな書き込みだったじゃん」
ラインのトプ画は前まではアニメのキャラクターだったが、李緒と付き合い始めてから李緒に
『ペア画にしよう』
と言われた。
今は俺がハート型の左側。李緒が右側になっている。
ひとこめは確かに変えたが、一番下に記念日の日にちを書いただけだった。
女子の勘は鋭い。
「うん。実はクラスメイトの子と付き合ってるよ」
いつかは言わないとと思っていたが、まさか中学の時好きだったあみに見抜かれるとか思ってもいなかった。
「そうなんだ。ねえ、どんな子?」
あみがズイズイと近づいていた。
ラインのトーク画面を見せた。背景に告白されたときにとったプリの写真があったから。
「へえ。かわいいじゃん」
由香がそういう。
由香が「ね。」って言ってあみの方を見たがあみは反応しなかった。
少し、様子がおかしい?
「あみ、大丈夫?」
「う、うん。大丈夫。ごめんね」
と、苦笑いでそう言ってきた。
なにかあったんだろうか・・・・・
♪~♪♪~
愛のチャイムが鳴った。
「そろそろ帰ろうか」
俺がそう言うとあみも由香も「そうだね」といい帰りはじめる。
「あみさん、送っていくよ」
「ううん。大丈夫だよ。どんちゃん家反対方向でしょ?」
俺はあみのことが心配になり送っていこうと思ったが断られた。
そして、あみが歩いて帰っていく。
やっぱりいつもと様子が変だ。
「あみさん、やっぱり送っていく」
走ってあみのもとにかけつけた。
「わかった」
あみはそう言った。
俺は車道側を歩いてあみと歩いた。
「ねえ、何かあった?」
「ううん。なんでもないよ」
明らかになんでもなくない。
「何かあったのなら言ってよ」
俺が少し強くそういうとあみは口を開いた。
「いやさ、彼女さんのこと呼び捨てで呼んでるんだねって思って・・・」
確かに俺はあみのことは「あみさん」と呼んで、李緒のことは「李緒」と呼んでいた。
「それは、李緒・・彼女に呼び捨てで呼んでって言われたからで・・・」
「わかってる。彼女だから呼び捨てで呼ぶのは当然だって・・・」
あみは話を続けた。
「だけど、中学から一緒にいるうちたちのことをさんづけで呼んでまだ一か月しか知り合ってない彼女のことを呼び捨てで呼んでるところを見ると・・・距離を感じるっていうか・・・」
そう思ってたんだと。初めて知った。
李緒のことを呼び捨てで呼び始めてからクラスメイトの子のことも呼び捨てで呼ぶようになっていた。
なのに中学から仲のいいあみたちのことはいまださん付け。確かに距離を感じるって言われても仕方ないか。
「だからさ、できればうちのことも呼び捨てで呼んでほしい・・・です」
あみはだんだん顔を下に向けて言ってきた。
「うん。わかった。これからは呼び捨てで呼ぶよ。あみ」
俺がそう言うとあみの表情がぱあ~と明るくなった。
表情がわかりやすいがそこがすごくかわいい。