吸血鬼と幼馴染
ある朝の日常の風景
1人の若者とその母親の1幕から始まる……。
チュンチュンチュチュン
「義母(かあ)さんいただきます!」
「ああ、たんとおあがり」
パクパクモグモグ・パクパクモグモグ
「今日もごはんがウメェー!」
「ふふふ、慌てなくたって逃げやしないよ」
俺の名はクリム=ウルフィン=ブリュンスタッド、ここ日本で高校生をやっている日本での名は狭間(はざま)紅狼(くろう)だ。
目的は俺と相性の良い伴侶を見つけ国に連れ帰り王位に就くことなんだが、最初は余裕を持って探していたが中々相性の良い相手が見つからず、仕方がないので腰を降ろして気長に見つけることにしたんだ。
っで、現在拠点として使用しているのがここ狭間家、そしていま一緒に朝飯を食べている人は狭間(はざま)静江(しずえ)って義母(かあ)さんだ。
もちろん血は繋がってない、なぜこの人と一緒にいるのかと言うと、この極東の島国に着いた際にこの地のエクソシスト等に狙われないため念の為にと用心して夜ふけに拠点探しをしていたら、ビルの屋上から身投げ自殺しようとしていた静江に偶然にも逢ったのだ、少し興味が出て訳を聞いてやって世話したらいつの間にか一緒に住んでるってわけよ。
聞けば男に金は騙し取られるわ、借金は負わされるわ、暴力は受けるわ、男の所属グループで嬲られるわ等々、他にもあるんだけど、酷い事をされても受け入れる・・・・・つまり究極の駄目男製造機だな。
こちらにしてみれば自業自得(じごうじとく)なんだが、こうして逢って会話したのもなんかのご縁だし、しかたがないから俺が手を貸すことにしたんだ。
……っで、その後奴らがどうなったか知りたいかい?
実は男とその所属グループは今じゃ仲良く俺のお腹の中さ、って言ってもヤツらの臭え血だけだけどな。
次の日の新聞にデカデカと『暴力団同士の抗争か? 現場には大量の木乃伊(ミイラ)が!? 謎の集団吸血事件!』ってな感じで載ってたな。
あまりこう言う事では世間に知られたくは無いんだが下手にエクソシスト等にバレたら面倒事だし、なんかな~吸血鬼としてというか人としてはさ……ほら分かるだろう?
静江を安心させる為に俺がムカついてやってやった事だ、お前の為じゃないって事を話したら……静江泣いてたっけ。
あとは静江の関係書類を改編・廃棄してクリーンな人間に戻してやって、ついでに奴等からは今までの分として多少の迷惑料(めいわくりょう)を貰ったがな、奴らはもう使うことも無いし良いだろ?。(笑)
俺には静江の精神(こころ)のキズは治せないがそれは時間が解決してくれるのを待つしかない、フラッシュバックで精神崩壊しても嫌だから多少魔眼を使用させてもらったこれくらい許容範囲内だよな?
最終手段として俺の花嫁兼眷属にして国に連れ帰っても良いしな、花嫁としてはそれほど相性は高くないし王位には就けなくなる可能性があるが……っま、こればかりは静江が受け入れたらの話しだけど……な。
「ほら、そろそろ行かないと遅刻じゃないかい?」
「っあ、やっベー!?、急がね~と」
でもコレだけは忘れたらいけないんだよな。
手を合わせて。
「「今日もごちそうさまでした」」
「んじゃ、義母さん行ってくるぜ!」
「ああ、気をつけて行くんだよ、それと夏樹(なつき)ちゃんによろしくね?」
「っぶ!? なんだよそれ! 夏樹とはなんでもね~よ」
「ふふふ、そうかい? ま、気をつけな」
「ああ、分かった、義母さんも気をつけてバイト行けよ」
今日から俺は高校一年生、この街に着いたのは4年前だが、俺の要求を満たせるこの街で当初は余裕をかましていたがあっという間に4年経っちまった。
っま、俺の種族的に一瞬ほどの感覚しか経っていないが人族的に今の時期が一番脂が乗って良い時期だからな楽しみだぜ!
そんなことを考えて学校に向かってしばらく歩いていたら、急に背中に衝撃が走った!
「っぶ!? って、何だ!?」
「紅狼ちゃんおっはよ~う!」
「なんだよ、夏樹かよ、毎度言ってるだろ? 気配を消して背後から攻撃するなよって」
「ひど~い! 攻撃じゃないもん愛(ラブ)の抱擁(アタック)だもん!」
「普通の抱擁は背中に激痛は走りませーん! 頼むから他の奴にはするなよ? 怪我人が出るんだからよ」
「しないよ!! こんな事するのは紅狼ちゃんだけゴニョゴニョ……」
「っあ? 俺がなんだって?」
「っな!? なんでもない早く学校に行こ!」
「ああ? そうだな」
コイツは向島(むこうじま)夏樹(なつき)、初めて逢ったのは俺がこの街に来て1週間ぐらいだろうか、当時小学生の夏樹が凶暴な犬に襲われてた所を俺が助けてやったのが始まりだ。
それ以来なにかにつけて人の後を付け回しときおり気配を消して俺に攻撃を仕掛けてくる。
本人曰(ほんにんいわ)く愛の抱擁らしいが俺からしたら奇襲攻撃以外の何物でも無いんだが……。
最初の頃は避けれたんだが段々と気配の消し方が上手くなりやがって今では中々気が抜けない相手だ。
当初はヴァンパイアの俺を消そうとする教会の仲間かと思ったがすぐさまそんな考えは消えた、それは夏樹が鈍臭いのだ。
もう見てて悲しくなるくらいだ、なぜ神は夏樹を見捨てたもうたのかと問いたくなった程だ。
まぁ出会いはどうであれ幼馴染の彼女の事を見捨てる事は出来ないわけで、伴侶探しのついでに面倒を見ているわけだ………。
「ねぇ~紅狼ちゃ~ん、置いてっちゃうよ?」
「ああ、すぐ行く」
こうして俺は、桜咲くこの道を幼馴染の夏樹と一緒に学校に向かって歩いて行く、これから先どんな事が待ってるのか考えるだけで楽しみだぜ!。
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…………待ってろよまだ見ぬ俺の花嫁さんよ。