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~プロローグ~ 転生

男はスーパーでため買いをしていた帰宅途中だった。道路には陽炎が経ち真夏の昼間帯にテレビのモニターは大音量で画面上のニュースを流し今年の異常気象についての話題を挙げている。暑さからなのか、夏の風物詩のセミですら鳴いていないという事態に地球温暖化の深刻性を改めて感じながら男は手に持っていた飲料水を飲む。

(こんなことをタラタラやっている暇があるなら暑さに対する研究に打ち込めよ)

皆が言うであろう不平不満を思ったその時、目の前を普通に走っていたトラックが突如として男が居る方向へとルートを変え男は避け切れず轢かれてしまった。それから数分経ったのだろうかアドレナリンは切れ痛みは体全体を覆いこみ、姿勢を変えようと試みてみるがあろうことか指先でさえ動かないのである。その時辺りはざわめき始め

「人が車に轢かれたぞ!」
「トラックの運転手は一体何をしている!」
「早く救急車を!」

その言葉で自分が置かれてる状況をある程度理解した。灼熱の中、熱を反射させるアスファルトは男にとっては苦痛でしかなかった。時間が経っていくに連れて眠気が増していき血液の循環が遅くなっていくのを感じる。救急車の中に運ばれ手当てを受けるが動いていた線は止まり男は静かに生涯を終える。

ある時、男はふと目が覚めたがそこは暗い暗い虚無の中であった。

(自分は死んだのか?黄泉の国があるだなんてとんだ宗教のホラ話か。此処に来てからか眠気も感じねぇ)

男は立ち上がると歩き始めた。それから何日いや何年の時が経ったのだろうか、男はひたすら歩き続けていた。ゴールと言うゴールもない中、何かに吸い寄せられるように歩いていたがその時男のいる場所の少し先で光が辺りを暗闇から照らしていた。

(あの先に行けば未練もなにもかもを浄化してもらえそうな気がする)

男は光の先へ先へと足を延ばし始める。

───【江戸時代1576年】───

徳川家康が長篠の戦で勝ってから約一年が経つ頃、とある有名な大名の家から産声が上がった。城下町にある赤子の主人は江城へと足を運ぶ。

「お主何者だ!自分の身分が証明できない内は何人たりとも入れてはならないのが徳川家の習わし」
「この家紋を見れば誰だかわかるであろう?」
「これはとんだご無礼を!お前ら急いで門を開けろよ早急にだ!」

城の前にある大きな門は徐々に開いていき、案内人が言うと家康がいる部屋に向かって歩いて行く。

「家康殿来客でございます」
「家康殿に話したいことがある故」
「そんな堅苦しい建前はいい。お前とは兄弟の盃を交わした仲であろう。して我に用とは」
「家康殿、我が家の妻が無事女の赤子を生みました。それに伴い家康殿に名前を付けてもらいたい所存」

それを聞いた家康は立ち上がり家紋がついている布の後ろから名付け名簿を取り出した。

「名それすなわち周りから恐れられる脅威とならなければならない。こう言う噂がある。とある有名な武将の名を聞くだけである人間は恐怖の余り自害すると。だが今回生まれたのは女と聞く。従い美しき名にするのが基本である。よって名前は緋音に命名する」

「お疲れ様です家康様。また15の時が満ちたら今度は娘を連れてまいります」

そう言い赤子の主人は去って行った。日が沈んだ夜となり母親と同じ布団で寝ていた赤子は目を覚ました。辺りを見渡すが其処には木でできた天井がうっすら見えていた。

(ここは一体。無性に腹が空いているが…)

行動を起こそうとするものの聞こえてきたのは赤子の泣き声であった。泣き声?自分は事故で死んだはずそれに多分此処は病院でもない。そう考えているとナース?いや和服の姿をした女性が現れこういった。お母様は今ぐっすり寝てるから私で我慢してください。そういい女性は自分を別室に連れて行きミルクを飲ませたのち寝させようと子守唄を歌っている。その瞬間理解した【自分は転生した】のだと。

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