018 皇都での再会
皇都での再会
「あぁ 食った、食った、うまかった」
「満腹だね~、ほんとここの飯は うまい」
「ほんとうに、美味しかったです。また食べたいですね」
ちょうど 近くを通った女将に聞こえたのか
「おやおや、ありがとうね。うちの料理もまんざらでもないでしょ」
「はい、僕 ここへ来てとても良かったです。リコッタさんに感謝です」
「それでは みなさん いまから お願いしてよろしいですか」
「おうよ、まかしときな」、「まかせな」
「女将、おれたちゃ この人の護衛で『服屋』って店まで行くんだが すまないが部屋の方は このままお願い出来るだろうか」
「はい、承りました。お気をつけていってらっしゃいまし」
◇
「それにしても お二人は もう道を覚えられたんですね」
「うん?あぁ おれたちのような家業だといろんなところに行くからな。まぁ 慣れみたいなもんだよ。」
「まぁ 兄貴は そんなこと言ってやすけどね。ほんとは もし またミキ殿から護衛の話でもあったらって 昨日のうちに… 」と小声でタケが言う。
「おま、余計なこと言ってんじゃね、あと何がアニキだ!おめぇの方が 三月早いじゃねぇか」
「って 地獄耳かよ」
「うんにゃ、技能・聞き耳、情報収集中」
「なんだか さっきの宿屋を出てから ずっとつけられてる気がするんだわぁ」
(まさか影の人たちのこと?それが 判るって この人たち ほんとうに凄い)
「気のせいでは?」
「う~ん、ならいいんだけどな」
「まぁ 用心しておくに限るさ」
「お二人が いれば安心ですね」
「おうよ、おれたちに まかせときな」
「はい、よろしくお願いします」
……
「おっ、あそこだぜ『服屋』」
「ありがとうございました、待っててくださいね」
「おう、早く行ってきな」
◇
「こんにちわ」
「はい、いらっしゃいませ」
「ミキと申しますが サシェさん…こちらの オーナーから わたしが お願いしていた服の件で来るようにと伺いましたので お邪魔したのですが」
「はい、承っております。ただいま 呼んで参りますね」
「おや、ミキちゃんじゃないかい。もう用事は すんだのかい」
「ええ、先ほど」
「おや、そのわりには 護衛の姿が見えないんだけど?」
「ええ、外で待ってもらっています」
「おやおや、遠慮しなくていいから 入ってもらいな」
(よかったぁ、先日は 外でだいぶ待たせちゃったから…)
「ありがとうございます、呼んできます」
「おふたりとも、中に入って待っていてください。」
「いや、でもなぁ」
「うん」
「大丈夫ですよぉ、こちらのオーナーが 入ってもらってって」
「そうかい?「なら遠慮なく」」
「うんうん、下手な遠慮はいらないよ、護衛が 主のそばを離れちゃダメでしょうに」
「あぁ、そうだな」(まぁ 離れていてもわかるんだが、そんなこと言っちゃやぶ蛇になりそうだ。このオーナー出来る)
「それに、あんたたちにも 興味があってね。話してみたかったんだ」
「エクリュ、エクリュ~、こないだの服、持ってきておくれ、あと あんたは お茶とライト・エールをお願いするよ」
◇
「ずばり 聞くよ!あんたたち、『雷鳴の響鬼』って傭兵グループだよね」
(なんだ、なんだ。嬢ちゃんの護衛でついてきたら)
「どうして それを…」
「いえね、だからといって どうこうするって話じゃないんだ、この皇都でのあんた達の評判をちゃんと教えておこうと思ってね」
「うん?どういうことだ、でしょう」
「すまない、あまり堅苦しい言葉遣いは 得意じゃない」
「気にしなさんな。実をいうとね わたしも 普段から 堅ッ苦しい言葉遣いは 得意じゃないんだよ。で、どうして知ってる?って顔をしてたね。もうそろそろ 来る頃だよ」
「オーナー、お持ちしました…」と服を持ってきたエクリュが 固まること数十秒。
「英雄さんだぁ~、英雄さんだぁ~」と言いながら ヒサたちの方へ突撃するエクリュ。
「おじさん、覚えていますか?わたしです。エクリュです」
「『おじさん』って。おれ、まだ26なんだけどな…」
「覚えていらっしゃいませんか?」先ほどの元気の良さが 今度はシュンとした声に変わっているエクリュ。
「おじさんって言葉に ダメージを受けているのでは?」と冷静に突っ込むミキ。
「って、エクリュ…おまえ、エクリュか?あのちっこかった。」
「はい、そのエクリュです。お・じ・さ・ん」どうやら 『ちっこかった』という言葉が お気に召さないエクリュさんのようです。
「あぁ、エクリュさんや おじさんは やめてやってもらえないだろうか。…それにしても あの時のエクリュちゃんが こんなにまぁ、おっきくなって」とタケ。
「すみません。英雄さんに向かって」
「いや、出来れば その英雄さんも止めて欲しいんだが」
「それは 出来ません。誰がなんと言おうと わたしにとって いえ、わたしたちの村にとってみなさん方は 英雄なんです」
「いや、おれたちゃな あんたらの村から依頼を受けた。で、その依頼を遂行した。そんだけだ」
「それでも、他の傭兵団の方達は、どこも受けてくれませんでした。そして おじさん達だけが 受けてくれたんです。いまでも覚えています。あのとき言ってくれた言葉」
「『俺たちが加わったからってただの四人だ。敵は、2000からになる領兵だ。だがな 理不尽なやつらに それ以上の理不尽があるってことを教えてやれる、俺たち四人は そんな戦士だ。おれたちに まかせろ!』と。誰しもが 負けると思っていた。ただ一矢報いたかった。そんな戦いでした。でも あなたたちは、そんなわたし達を 励まし、叱咤し 勝利に導いてくれました。それも 誰ひとりとして失うことなく。そんなあなた方を 英雄と呼ばずしてなんと呼べばいいんでしょう」
「あぁ~、うん。わかった」と頬をぽりぽりとかくヒサである。
「まぁ なんだ。ほんと生きてりゃ いっぱい楽しいことがあっただろ?」
「はい、いまとっても楽しいです。毎日が とても嬉しいです」
「うん、よかったよかった」
「あ~、おふたりさん。いい感じに纏まってるところ悪いんですけど もういいかしらね~」
「「はっ!」」
いつのまにやら 近づき会って手に手を取っていたふたり。十六歳と二十六歳のふたりである。
ふたりとも顔を真っ赤にして下を向いておりまする。はてさて、これが 恋のフラグとなるかどうかは、解りませぬ。
いち早く復活したのか
「すまねぇ、年甲斐もなくはしゃいじまったようだ」
「「「いえいえ」」」
「「「いいもの見せていただきました」」」
「というわけで、あんたたちに まぁ 特にそっちの強面のおじさんに うちの子を会わせてやりたかったってのもあったんだよ」
「で、ここからは これからのことだ。あんた達ふたり、これから先どうするつもりなんだい?」
「それな、まぁ 今日のところは 嬢ちゃ…ミキ殿の親御さんから 会って欲しいってことなんで 会いに行ってみようかと思ってる」
「で、その後は?」
「まぁ もうしばらくは この王都でおれたちも 職探しだ」
「そうだな、まぁ おれたちに出来ることなんざ 大して多くはないだろうが」
「あの、そのことなんですが…」
「うん?どうしたミキ殿」
「嬢ちゃん呼びはやめたのかい?」とサシェ。
「いやね、なんだか嬢ちゃんって言おうとすると こう背筋が凍りつきそうな感じがしてよ」
「あはぁ~、はは」
「で ミキ殿?」
「はい、お二人さえよろしければ 今後もわたしの護衛をお願いしたいかな~と思いまして」
「「それは 専属ってことかい?」」
「はい、そのつもりです」
「まぁ もともとおれたちゃ、傭兵だし、給金さえもらえりゃ 文句はないんだが」
「専属っていうと、それなりにかかるぜ」
「あぁ、相場だと…」
「はい、その辺りも踏まえての専属護衛をお願いしたいかなと」
「う~ん、どうする?」「どうしよ」
「まぁ どっちにしても そういうことなら じょうちゃ・ミキ殿の母君にも会った方がいいだろうな。」「だな、一度親御さんにもあってみて」
「専属護衛の話、受けるかどうか その後でもいいかい?」
「はい、よろしくお願いします」