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016 意外と凄い方達


「じゃあ、わたしは ミキちゃんに ひとまず町での暮らしとか 物価とかそういったごく普通の常識を教えていくわね」

「あたしの方は、これと言って 今のところないけど…」

「あなたには、ミキとの連絡係になって欲しいの、ほら 案内してくれたあの子…リコッタだっけ。あの子にお願いして」

「まかせて」

「さて それじゃぁ ミキを呼ぼうかしらね、ミキ~、ミキ~」

「あら、どうしたのかしら」とドアの方へ歩いて行くエリステル陛下とご一行。

「「「あらあら」」」

「こんなところで寝ちゃって、可愛いわね」

「どうする?起こしましょうか」

「もう少し寝顔を見ていたい気もするけれど(ほんと、久しぶりにミキの寝顔を見るわ)」

「そうね、風邪をひかせてしまうわね」

「あれ、外が 明るいわよ」

「もしかして わたし達、やっちゃった?」

「もしかしなくても…ね」

「ミキ~、起きて。ごめんね ずいぶんと待たせちゃったわね」

「うん?だれ……かぁ・さま。」

「えぇ、そうよ。母さまよ」

「もうお話は、終わったのです?」

「ええ、終わったわ。ごめんね ミキ。」

「大丈夫ですよ。はい、もう しゃんとしました」

「でも…」

「なんだか、みなさんと お話をされてる母さま、とても楽しそうな雰囲気でした。とても親しい方々なんですよね?」

「えぇ、そうね。そのこともいつか 話すわ」

おや、となりの控え室の方から、クラリッサが出てくるようです。
「陛下、皆さま方との話は 終えられたのでしょうか」

「えぇ、先ほどね」

「申し訳ございません、すぐに気づけず」

「いいわよ、わたし達も こんなに長く話し込んでいたなんて、それよりも 何か暖かい飲み物を用意して欲しいわ。お願い出来るかしら」

「はい、ただちに」

「ちょっとばかり、話し込んじゃったわね」とサシェ。

「あたしは、職員寮が あるからいいけど、あんたは これからだと ちょっと大変だよね。どう?泊まってくかい」

「あ~、じゃ お願いしようかしら。」

「陛下、こちらにお飲み物の用意が出来てございます。」


「みんな、いただきましょう」

「あら、美味しい。」

「ほんとにね。ホットする味だわ」

「クラリッサも 皇都一のレストラン・オーナーに 褒められれば…」

こそばゆくなって もじもじしているクラリッサがそこにいた。
「ありがとうございます、ショコラさま」

「そうそう、クラリッサ。今度から この二人にもミキのことを頼んでおいたので、あと『夜明けの風』のメンバーにもかにゅうしてもらったわ」

「委細承知いたしました。サシェさま、ショコラさま 以後よろしくお願い申し上げます」

「ほ~」
「へー」
上から サシェ、ショコラである。

「こっちこそよろしく頼むわね」

「あたしとは、離宮の食堂で、何度かあってるわね」

「そういえば サシェ…あの子の拾いものって?」

「あぁ~、すっかり忘れてたわね。それがね そこのミキちゃんがね…」

「あぁ~、あの人達ですか…」

といって ちょこっと残念な結果に終わった初めてのひとり歩きで あったけれどその道中に起きた出来事を陛下とクラリッサに話すミキであった。

「で、ミキは 彼らをどうしたいんだい?」

「そうですね、もとは、四人で活動していたそうなんですけど 出来れば傭兵家業をやめてなにか定職に就ければと皇都まで出てきたそうなんです。そして うちお二方が ショコラさんのレストランで働くことになりまして。で、あとのお二方が まだなんです。」
……
少し逡巡したのち
「陛下、彼らを わたしが 雇うなんてことが 出来ますでしょうか」

「それは、ミキの個人的な私兵にするってこと?」

「えぇ、可能ならば そうしたいです」

「そうね、あの二人ならありかもしれないわね」とサシェ。

「ね、サシェ。面白い拾いものと言ってみたり ありとか 何か知っているのなら わたしにも教えなさいよ」

「ルー、あなた 『雷鳴の響鬼』って四人組の傭兵グループの名前聞き覚えない?」

「『雷鳴の響鬼』、覚えているわ、確か、碌でもない領主に騙された村人たちが 団結して反乱を起こそうとしたことがあったわね。たしか そのときに…」

「そう、ほとんどの傭兵達が 静観する中、彼らだけが 村人に手を貸して その碌でもない領主を見事成敗したって話だったわよね」

「あのときぐらい わたしは 情けなく思ったことは、なかった。そして よくぞ村人を守ってくれたって思わず喝采を送ったわよ」

「まぁね、あんたにしちゃ そう思うわよね。同じ帝国領内の出来事だものね。結局 その四人が 頑張ったおかげで 村人達には 怪我一つなくて…。けど そのあとぐらいからかしら、彼らの名前をあまり聞かなくなったのは…。」

「何かあったの?」

「出る杭は打たれるってやつよ。他の傭兵団が 静観していた中で 彼らだけが 活躍し過ぎちゃった。それを 面白くなく思うやつらが 結構いたってわけ」

「なんてこと!自分たちが 静観してただけでしょう?」

「まぁ そうよね。それに 誰も こんな結果になるとは 思っても見なかった。いくら 村人達が団結したって言っても たかだか五百人程度。そのうち 若くて力のある者たちなんて そんな数いないもの。対して 領主側は 領兵を 動かした。二千の領兵と五百の村人、どう転んだって 村人達の方が分が悪い」

「そういうことね」

「そして 『雷鳴の響鬼』のメンバー四人のうち二人が いま話している男達ってこと」

「そういうことか」

「ね、面白い拾いものでしょ?」

「そうね、ね。ミキちゃん 一度彼らを わたしに会わせてくれないかしら」

「それは…はい。連絡を取ってみます」

「えぇ、お願いするわね」

「あら、少しは寝ないとね」

「「「それじゃ 解散!」」」

(みんな、すっごく息あってるね。母さまも とても楽しそう)
「それでは、母さま、ショコラさん、サシェさん おやすみなさい。そして ありがとうございました」、「クラリッサさんも 遅くまでお疲れ様です。ミルク・ティー 美味しかったです」

「今日の午後には、先ほどの件 ご報告させていただきますね」


そう言って執務室から出たミキ、さて 彼らにどうやって連絡を取るのでしょう?はい、ここは 電話もなければ メールもない世界でございます。おや、どうやら離宮の方へ戻っているみたいですね。

「いくらなんでも まだ夜も明けきってないしね。彼らには 宿に泊まるようお願いしたし、お金の方は 僕の護衛代から出すからってことで リコッタさんに教えてもらった それなりの宿に泊まってもらってるから…たしか『三日月亭』って名前の宿っだったかしらん。けど あの人達すっごい傭兵さんだったんですね。この話、受けてくれるかなぁ」(ふぁぁ~、まだ時間が 早いですね。少しだけ 小一時間ほど仮眠をとりましょう)

そういうと自室のベッドに 横になるミキであった。

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