26
私には、ママが何を言っているのかわからない。
パパは、パパだけ。
この人はパパじゃない。
私は、泣きたくなった。
でも、泣きたくなかった。
負けるのが嫌だから……
だから、私は泣かなかった。
「理香。
きちんと挨拶なさい」
ママが、そう言って私の方を見る。
「こんばんは……」
私は、簡単に挨拶だけをした。
「……ふん。
俺、子供嫌いだから……」
男の人は、そう言うと再びケタケタと笑う。
「武さん、そんな事言わないで……」
ママが、男の人にそう言った。
そっか……
この人は、『武』って言うんだ。
私は、この人の事を『武さん』って、呼ぶ事にした。
絶対、パパなんて言わない。
パパは、パパ1人だけだから……
私は、決めたんだ。
パパが戻ってくるまで……
私は、パパを待つと……!