願い事
『あの人に出会えますように』
短冊に願いを込めて笹に吊るす。
図書館に行くたび出会う人。背が高くてハンサムで。
一目惚れだった。
そっと本棚の間から覗いたり、隣にさりげなく座ったり。
でも彼が来なくなってしまった。
まさか気付かれて嫌われた?
ただ見ているだけでよかったのに。高望みなどしていなかったのに。
『あの人がここに来てくれますように』
もう一枚書いた。
七夕様ならわかってくれますよね。
さらに願いを込め二枚目を吊るす。
図書館の入り口に設置された笹飾り。
横に設置されたテーブルには短冊とペン。
風に揺れる願い事はほぼ子供たちのものだったが、わたしの願いが一番叶うように思えた。
七夕が過ぎた数日後、図書館にあの人がいた。
首の骨が折れて血に濡れて。
すでにこの世にいない人だったのだ。
他の誰にも見えていない。
だってこれはわたしの願い事だから。