RCH-41 ワルキュリオン:1
19日午前6時〜
RCH-41 ワルキュリオン
指揮官のいるテントの方向からの爆発は、通信機が不調な連邦からでも確認できた。
『見えたぞ!異教徒の機体だ!』
『第013ミドリュア級中隊!総勢8機見参!!此より戦闘に突入す!』
『こちら第064ヘヴィネス級中隊!隊長のゲラシム・カリーニンスキー中尉だ!指揮はこちらで取りたいと思うが、そちらの門弟達は異論はないか!?』
極めて迅速に、大中合わせ数十機単位でクリスタリオンが集まってくる。
遠くに確認出来る、未知のヘヴィネス級を追って。
『速いな!?巡航速度で25メイル(=約40km/h)だと!?』
『ヘヴィネスの速度ではない!
013各機門弟達!我々の脚を見せるぞ!!重装型は砲撃支援を!!』
ズン、と腰に滑空砲を持つアークアンゲロイが砲撃を開始し、持たない代わりに背中に固形燃料噴射機(ロケットブースター)を備えた機体が一気に前に躍り出て、点火した直後から凄まじい速度で追いかけ始める。
***
『うぉ、テメッ!?』
操縦者の意志に反して急に立ち止まり、振り向いた背後で砲弾が着弾する。
『ウヒィ!?助かったわぁ……!
いやでも、お前勝手に動くなよ!』
シャァ、と人のような顔の口を開き、腰のアーマーが正面を向いて内蔵された光破壊魔法砲(レーザーキャノン)を放つ。
『ねぇロビン、知ってるぅ?ウチの国のクリスタリオンが一番操縦が難しいって話』
乗機が呼応して雄叫びをあげながら同じく攻撃を開始する中、レッド2ことリナリアが問いかける。
『常識でしょうよ!
騎士の国みたいに神経にコアと直結するでもなく、魔王んとこみたいにコア自体に人格を持たせず、ましていま撃ち合ってるやっこさんみたいにコアに何重も安全装置を付けて自我殺してる訳でもねぇんですから!』
ルーン共和国機は、伝統と言うべきなのか、そもそも『水晶で身体が出来ているだけの野生動物』とも言えるクリスタリオンを、
手綱が操縦桿に変えただけで、他国の用にコア自体になんらかの仕掛けを施して操縦を容易にすると言う事を、いまだにしていない。
言っておくが魔法技術立国、工業先進国と自負するルーン共和国は技術がないわけではないし、今撃ち合う相手の機体よりも魔導計算機(コンピュータ)の処理力も遥かに上である。
だが、決してコアの意志、要するにクリスタリオンの本能や闘争心を殺す調整をしないのである。
『ったく、トリガーを寄越せってんだよ、バカ野郎!!』
たとえ好き勝手撃ちまくって一発も当たらないほど、操縦が難しくなったとしても。
『嫌われてるんじゃない?
教訓その1!ほらアニエス、あんたなら覚えてるでしょ!?』
援護射撃でロビン機に迫ったスプラッターを撃ち抜く。
今のは、リナリアの機体からではない。
「はい!
クリスタリオン操縦心得その1!」
アニエスは、腰のレーザーキャノンで敵を牽制しつつ叫ぶ。
「クリスタリオンはただの兵器じゃない!我々の隣人、人間と亜人と同じ命あるもの!」
『だから、性能や勝敗を分けるのは、パイロットの技術でも機体の性能でもない!』
『あー……そういやそうでしたわ!』
瞬間、ロビンの操縦と、乗機たるこのクリスタリオンの━━━ワルキュリオンの意志が噛み合う。
一歩、それだけで間合いを詰める。
驚愕した敵のトカゲづらに、頭頬どの幅の膝装甲を叩き込む。
『クリスタリオンは心で動かすんだよ、心で!』
頭部に操縦席と隣接するコアを持つ為に、両方が一度に壊れた為、魔石の細胞部分が一気に死滅し、敵機がバラバラに砕け散る。
『だったなじゃじゃ馬!暴れたきゃ暴れさせてやるさ!』
カメラアイに凶暴な光が灯る。
瞬間、背部にある翼に似た機関がうなりをあげ、その人型の巨躯を大きく進ませる。
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