第9話ー論文ー
さて、夜である。
近くのピザ屋に行きマルゲリータとチーズが大量に乗っかっているものを食べた。
あーー、何もすることが無い。
暇じゃぁぁぁぁ!内職すら出来ないよ。無職だもん。ははは、笑えない。
今、勇者達。つまり、クラスメイト達は何をしているのだろうか。
いや、別に懐かしむ関係でも無く、同郷の者として少し気になるだけだ。
道ですれ違っても『あ、知ってる人だ』位の印象しかない。
一人一人に興味も無い。有象無象の集まりだ。
さて、奴らは……?
ほぉ…魔術のお勉強中か。何々?魔力は体内から延々と出て来るモノで外からの摂取は出来ない!?
今の学説はそうなのね。エビデンスを見せてみやがれこのやろう。
じゃぁなんで、MPポーションはあるんですかー?アレは外からの摂取じゃないですかー。
お、佐々木ナンタラさんがノートに書き込んでる。
『神様のご利益だから』だと。
おい、ここでも宗教かよ。本当にもうさ。みんな過去の論文読めよ。
宗教よりも根拠はっきりしているぜ。数値も書いてある。
アレはエビデンス無いだろ。無いから『神様パワー』と言い逃れをしている。
きっとそうだ。転移の事について検索しても『不明』としか出ないけど……
魔術について調べてみよう。きっと今いる時代の本よりも昔の時代の方が研究が進んでいただろう。この世界では未だに科学崇拝が始まっていないのだきっと。
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論文のアブストラクトだけ読んだが、興味深い論文が大量にあった。
例えば、『閉鎖環境中におけるエネルギー保存』という物は、空気中の魔力が物理的には閉じ込められないので、魔力を封じ込める機械を作成していた。
その機械の中ではエネルギー量が一定になる。という結果だった。
この世界にもエネルギー保存の法則があるという事に驚きを感じた。
『人類体内環境中での魔石の生成』では、人類の体にも魔石が作られる事が書かれている。
『魔術使用方法による効率の変化』では、魔石を使用した方が最も効率が良い事が書かれていた。また、魔石使用の問題点として、いちいち魔石に魔法陣を描かなくては成らない事や購入資金が挙げられていた。
本当にねー。めんどくさいと思うよ。魔法陣を書くの。
論文を読みすぎた。流石に目が疲れたな、寝るか。
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玄関の鈴が鳴る音で起きた。
おはようございます。太陽の傾きから見るに昼頃だろうか。
昨日は論文を読みすぎて、夜更かしをしてしまったようだな。
鈴が鳴った原因は郵便局の速達だった。
受け取り書に判子を押し、すぐに屋内へと戻り封筒の中身を確認する。
紙が2枚入っていた。1枚目には、
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初めまして。
メカニストラ翻訳会社のアニーです。
この度は、我が社のアルバイトに応募していただきありがとうございます。
先日は、面接にご来社いただきありがとうございました。
その後、弊社の採用基準に基づき厳正な選考をさせていただきました結果、
あなたをアルバイト従業員として採用することを
内定いたしましたのでお知らせいたします。
つきましては、入社いただくにあたり、
詳細な事項に関しても打ち合わせ等がございます。
別途、紙面にてスケジュール等をご案内させていただきますので、
ご確認いただきますよう、宜しくお願いいたします。
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あ?面接受けてないんですけど?
筆記試験と白紙の履歴書だけですけど?
いいのそれで?働けるなら良いけどさ。さて、2枚目だ。
2枚目には日程が書いてあるだけだったな。服装が自由とも書かれていたか。
該当する日に行けば良いだけらしい。場所は……第1階層西か。
1番早くて、21日の19時からがあるな。
時刻ってどうやったらわかるのよ?あ、出た。
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9月21日14時31分
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本当にこの能力は便利だ。
てか今日の午後7時かよ。こういうのって普通3、4日後じゃ無いのかよ。
さて、夜する事は決まった。
あ、転移してきてから風呂に入ってねぇや。きったねぇ。
体を洗いに行こう。この世界では公衆浴場がある。3階層中央だな。
ゆくゆくは自宅にシャワーが欲しいが、金が手に入ってからだ。
そういや、排泄もして居なかった。デトックスが溜まってしまう。
本当にそういうものが有るのかがわからないけどね。
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風呂にやって来た。
残念ながら男女別々である。江戸の日本は混浴だったらしいが……
ここの浴場はサウナが併設されている大きな施設だ。第2階層の方には無い設備らしい。
まぁ、貴族連中が来る可能性が……無いな。奴らは自宅に風呂を持ってるからな。
私は風呂はでは無いので体を洗うだけで良い。
昼間だからか、お爺さん方しかいない。
シャワーが普通に置いてあるものなんだな。水道が通って無いのに温水が出る。
魔石様々だな。
さすが入るのに3ラトバかかるだけある。