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第七話 エルフ奪還作戦

 僕達は僕の「過去視」と時空魔法を交互に使いながら移動していた。
 「過去視」を常に使いながら歩いて移動するのは疲れるし危険なのでこのような方法を使っている。

 一時間ほどこれを繰り返していると、兵士とエルフ達に追いついてしまった。彼らが村を出てからさほど時間が経っていなかったのだろう。
 エルフ達は森の中で生きてきただけあって兵士達についていけるだけの体力があるらしい。疲れた素振りを一切見せていない。

 エルフ達もさすがに移動中には何もされていなかったので、兵士達が国に帰るまで泳がせることにする。
 このタイミングで突っ込んでいっても面倒事が増え、しかも国を特定するという目的が達成できなくなる。

「それにしてもあいつ時間までに帰ってこないとかバカだよなあ。俺逹に追いつけなかったらもう兵士として生きていけないぜ?下手したら処刑、良くて追放だろ」

 やつらの会話に耳をたてていると、そんな声が聞こえた。
 おそらく僕が斬ったやつのことだろう。

 兵士が任務から逃げるというのはかなり重い罪だ。処刑や追放をされてもあまり不思議ではない。
 個人的にはやりすぎな気がするが……。

 処刑も何も既に死んでるんだよなあ。殺してなくても追いつけなかったぽいけど。などと心の中で突っ込みを入れる。
 ちなみに僕は善人が死ぬのは見過ごせないが、悪人を殺すことに抵抗はない。
 だからこそあの兵士を殺すことができた。

 僕達はその後も兵士逹が国に戻るまでひたすらに後ろをついて行っていた。

 ▼

 僕達が兵士達について行って辿り着いた先は僕達が住んでいるテラリア王国の王都だった。
 つまり、あの兵士達は僕の住む国の者だったということだ。
 テラリア王国は治安もいいし、問題も聞かないから良い国だと思ってたのに少しショックだ。
 ……そして、少し考えればエルフの村を襲ったのはこの国の兵士だというのはわかったことだ。他国の村襲って問題になったら大変だし。

「よし、これからエルフ達を助けに行くけどその前にここのギルドに行っておこう」

 各地のギルドは魔道具によって情報を共有している。
 エルフの村に依頼の物を届けたらすぐにいつもの街に帰る予定だったが、それができなくなった以上ここで一度報告を入れておいた方がいい。

 ちなみに魔道具っていうのは、魔法によって特殊効果が付与された道具のことだ。作成には「道具職人」と「魔法適性(付与)」のスキルを持つ2人で協力する必要があり、とてつもなくレアだ。
 僕の「創造」があれば魔道具も創ることができる。いつかそういう店を開いてみても良いかもしれない。

 そんなことを考えているうちに、王都のギルドに到着した。
 このギルドは、僕達がいつも利用しているギルドよりも大きく、豪華だった。
 いつものギルドが一階建てなのに対してこちらは三階建て。いつものギルドは受け付けと依頼が貼られた掲示板があるだけなのに、こっちには武器屋やレストランに初心者が講習を受けれる講習所まである。

 僕達がいつも使っているギルドの五倍の量がある受付のひとつに行き、いつものギルドへの報告を頼む。受付嬢は快く引き受けてくれたのでとりあえずは問題なさそうだ。

 ▼

 ギルドを出ると既に日は沈みかけていた。

 今から王城まで行って王様との謁見の許可を得ることは無理なので、夜に僕とフェラリーだけで王城に忍び込むことにした。
 問題はあるだろうが、僕のスキルとエルフの村の件(王国の弱み)があればどうにかなるだろう。どちらとも交渉のカードとして有効だ。

 ひとまず近くの宿に赴き、四人で寝られる部屋を借りる。
 そしてそこで食事を取り、キーとレヴィは僕が水魔法と火魔法で作った温かいお湯を使って体を洗い、寝る支度をする。

 それが終わった後、僕とフェラリーはしばらくくつろいだ後宿を出て服屋に向かう。購入するのはフード付きのローブだ。
 しばらく悩んだ末に買ったローブは「魔法適性(付与)」によって特殊効果が付与された高級品。色によって効果は違い、僕達が買ったのは黒色の隠密性を高める魔法が付与されたものだ。
 他にも魔法威力上昇や身体能力強化などの魅力的なものがあったが、忍び込むのに最も適していたのは隠密だったのでこれを購入した。

 僕がステータスを確認するとスキルの下に

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装備スキル:隠密
―――――――――

と書いてあった。

 例外なくひとつのスキルしか得ることのできない人達にとって、それがもうひとつ増えるこの装備はなかなかに魅力的なのではないだろうか。

 さらに僕は僕とフェラリーに「創造」でスキルをつくる。

――――――――
隠密:自分の気配が弱くなる。
索敵:他人の気配を強く感じられる。
――――――――

 スキルと装備スキルの隠密二重掛け。これなら大抵の敵には見つからないだろう。

 索敵は二人が持つ必要はないので俺だけにする。

 準備は整った。王城に忍び込もう。

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 極力人は殺さないようにする。
 僕は「魔法適性(全)」、フェラリーは「魔法適性(木)」と「植物操作」で敵を無力化してゆく。

 「魔法適性(雷)」を背後から弱めに当てるだけでたちまち敵は意識を手放す。少し気持ちいい。
 フェラリーは「魔法適性(木)」で生み出した木を「植物操作」で操って敵をがんじがらめにしている。見れば見るほど「魔法適性(木)」と「植物操作」は相性の良いスキルだ。

 誰にも気づかれずに次々と無力化していくことには爽快感すら覚える。何かスパイとか暗殺者になったみたいで自分がかっこいい。

「……ニヤニヤしてどうしたんですか?」

 おっと、フェラリーに引かれてしまった。
 そこまで露骨ににやついてただろうか。

 そこで僕はあることに気付く。
 ――「索敵」でエルフのものだと思っていた無数の気配の中にひとつだけ違う気配を感じたのだ。
 嫌な予感がする。
 しかし、エルフの気配はすぐそこだ。今更立ち止まるわけにはいかない。

 僕はフェラリーに注意を促しながらドアを開ける。

 ――そこには冠を被ったおじさんがいた。

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