召喚成功?
ーとある魔方研究室ー
俺「遂に完成だ。」
部屋の中央には暗い部屋全体をぼんやりと魔方陣の青白い光が照らしていた。
苦節十数年、異世界の美少女を召喚、使役するために休みもせず黙々と研究していた成果が今報われると思うと感慨深い…。
(金髪のエルフ、いや猫耳の獣人、ビッチな小悪魔もいいなぁ…。)
今から召喚する美少女への妄想が膨らむがそれを抑えながら右手を魔方陣にかざし意識を集中する。
俺「異なる世界より生まれしものよ、
封印の鎖を解き放て…
我無限なる深淵より一時の顕現を望む者なり
召喚の盟約に従い我が眼前にその姿を示せ‼」
詠唱が終わると同時に部屋一面が光と風に包まれ、思わず目をつぶる。
俺(成功したのか?)
俺は不安と期待が入り交じりながら恐る恐る目を開けた。
魔王「我の名は魔王、我を召喚したのはお前か?」
俺「…。」
俺の目の前にいたのはエルフでも獣人でも小悪魔でもなかった。魔王だった…。
魔王「我を召喚するとは、お前もなかなかやりおる。さあ、願いはなんだ?世界を制服するほどの力をお前は手にいれたのだ。望めば何でも手にはいるぞ?」
俺「チェンジで。」
魔王「成る程世界を変えたいと申すか、よろしい我の力をもってすれば雑作でもないことだ。」
俺「いやそう意味のチェンジじゃなくてですね。」
魔王「?」
俺「申し訳ないんですけど、帰ってもらえませんか?」
魔王「我を呼んでおいて、いきなり帰れとはどういうことだ?」
俺「いや実はですね。魔王様を召喚するつもりはなくてですね、エルフとかが召喚したかったんですよ。ごめんなさい。」
魔王「ふははははは、面白い冗談だ。我より下級の雑種がよいだと?意味が分からぬ。」
意味が分からないのはこっちなんだよなぁ…。
魔方陣の書き方どう間違えたらこうなるんだよ…。
俺「すみません、冗談だんじゃないんです。今から返還儀式の準備するんで待っててください。」
部屋においてあるチョークをとりだし部屋の中心に魔方陣を書いていく。
魔王「ちょっと待つのだ、納得がいかん、我は魔王だぞ?世界が手に入るのだぞ?何が不満なのだ?」
俺「世界何ていらないんですよ。美少女がいいんですよ、朝起こしてもらって、料理つくってもらって、たまに一緒にお昼寝するそんな使い魔が欲しいだけなんですよ。」
魔王「分かった、我が直々に朝お前を起こそう、料理も作ろう、お昼寝もしてやろう。これでどうだ?」
魔王が朝お起こしに来るってなんだよ…。怖すぎるだろ…。
というかなんでこんなに必死なんだ?魔王も魔界帰れるしデメリットないだろうに。
俺「あの、どうしてそんなに必死なんですか?何か帰れない理由でもあるんですか?」
魔王「…」
図星だったようで、重い沈黙が流れる。
魔王は話ずらそうに目線をそらしながらはなし始めた。
魔王「実はな、こっちの世界に召喚される直前魔界全土に
「我は今から異世界に行って参る、帰った暁には我が異世界を如何にして制服したかを語ってやろう。楽しみにしとくがよいぞ。」
と魔法でメッセージを送ったのだ、今帰らされると非常に不味い。」
俺「…」
魔王「…」
ということはあれか、威勢のよく魔界飛び出した手前、帰りづらいってことか…。
魔王「せめて数ヶ月だけでいいからこっちにいさせてくれ。頼む。」
魔王の周りのに禍々しいオーラが弱々しいオーラになっていた。少しかわいそうに思えてきた。
俺「わ、分かりました。数ヶ月したら帰るんですよね?」
魔王は小さくうなずいた。
美少女のきゃっきゃうふふな生活な生活を夢見てたはずが、こうして魔王と俺の奇妙な共同生活がスタートしたのだった。