うぜぇ……
アオのやつ、迎えに行くから待ってろって言ったのに。
アオというのは鬼人族の中では一応王女様みたいな立場に居る。だが、非常にお転婆(笑)でよく国を抜け出していたそうだ。
そしてその日はたまたまバル山脈までひとっ走りしていたのだが、運悪くドラゴンに遭遇、逃げ回っていたところにそのドラゴンの討伐依頼で来ていた俺が助けたのだ。その時、国でやる修行とかいうのが終わったら弟子にしてくれと頼まれていた。
その修行は約二年ほどはかかるとのことで、だったらその頃に迎えに行ってやるから待っていろと約束して別れた。
まさか一年半ほどで終えて出てくるとは思っていなかったけど。
つか、帰った時にどこそこに行っていたとか言わなかったのかよ……。
あんときも思ったけどメッチャクチャだなあいつ。
そんなこんなで村について、宿屋の部屋に奴らをポイッ。
村長のとこに、昔狩ったオーガの頭を持っていって依頼達成!
村長引いてたな……。
俺、戦ってないのに依頼達成しちゃったなあ。
ホントに荷物持ち試験だったわ。
つまんねー……。
まあとりあえず疲れたし、少し寝よう。
気がつくとメッチャ身体が揺れていた。
地震か?!
慌てて起き上がると目の前にチェニックの顔……オエッ。
なんでや……なんでこんな至近距離におるんや……しかもスゲえ形相だし……。
何の用やねん……。
「パ、パ、パ、パ、パ、パ」
なんかエライ焦ってるのか俺の名前一つ言えてない。
「なんすかね。あ、依頼達成報告は勝手にしちゃったんでまだ休んでて大丈夫なんだけど」
「一体何が起きてるんだ!気がついたら家だし仲間は五体満足で寝てるしリーシャはアイツがアイツがってパスト君のことをなんかやたら気にしてるし村長のとこに行ったら依頼達成?!何がどうなってるのか説明しろおおおおお!!!」
その間両肩掴まれてブンブン揺らされてるので頭がクラクラしてきた……。
つかリーシャって誰……あ、軍団の誰かか。
ん?
なんで俺のこと?
つかアイツって呼んで俺のことを指してることがわかるチェニック君、張っ倒すぞ。
「あーアレだよ。追っかけてったらみんな倒れてたから一人ずつ運んだんすよ。ほらぁ俺荷物持ちっすからぁ。そん時リーシャさんのことも運んだんで途中で気がついたんじゃないっすかねぇ」
「そ、そうなのか?あれ?じゃあみんなが吹っ飛んだのは?赤いオーガは?ん?」
「あーきっとなんか幻覚でもみたんじゃないかなぁ?ほら森だしなんかそういうキノコの胞子?とかありそうじゃん?あ、オーガはなんかおまんらが倒れてた更に奥で死んでたから頭だけ切り取って回収しました」
なんかチェニックは呆然といったご様子。
めんどくせえ……。
つかリーシャがどいつのことかわからんけど、どっから辺からか気がついていたってことだよな多分。
グンとの会話を聞かれてるとなると面倒なことになりそう……。
いやそれよりも時間遡行魔法の方がやばいな。あれはまずい。どうすっかなぁ。
とりあえず目も覚めちゃったし、このままここにいるとなんか色々聞かれてめんどそうだな。
飯でも食いに行こっと。
もちろんチェニックは放置。
昨日のところで飯を食べているとヤクーさんが来た。
ちなみに食べているのはオートミールみたいなやつ。
腹持ちよくて結構美味い。
「まさか一日で終わるとは思いもよらなかったよ。君たちは相当優秀なのだな。将来が楽しみだ」
「頑張りましたからねー。それより昨日の件はどうなりました?」
「おーそのことなのだが、オーダーメイドなので腕の長さなどを計りたいとのことだ。食べ終わったら行かないか?」
「マジか!おっしゃああ!」
「よっぽど嬉しいのだな」
「そりゃあね!そうと決まればさっさと飯を食ってゴーゴー!」
一気に飯をかっこみ職人さん家へ。
昨日の夜、ヴァイオリンを作ってもらえるよう頼めないか聞いといたのだ。
まあ職人さん家での出来事は割愛する。
いや、俺の腕の長さとか首の長さとか知りたい?
別に良くない?
さあて宿に帰ってまた寝ますかねー。
「さぁ説明してもらえる?」
「……うぜぇ……」
まだ寝れないらしい。