救出と時間遡行魔法
チェニック達を追いかけ早一時間。
森に入ると、木のとこだったり、地面だったりに目印があった。
迷わねえようにってことかね。これの通りに行きゃ追いつくだろ。
更に速度を上げる。
気分はラーメンの具材の忍者。
あの走り方って実際速さは変わるかはわからんけど速く走れてる気分にはなれるんだよねー。
あと、腰の位置を変えないで走るのもなんか速くなってる気がする。
どんどん速くなります。
誰かにぶつかるなんてことほぼありえねえから、どんどん上げられる。
やべえ楽しい!!
と、一キロくらい先になんかいるな。
ん?
あれ?
なんか、誰か頭掴まれてる?
あれ王女じゃね?
つかオーガじゃね?
つかオーガじゃなくね?
つかなんか記憶に引っかかる見た目じゃね?
つかヤバイヤバイヤバイヤバイ。
俺は自分にかけてある身体強化を強め、知覚上昇、さらに並列思考の魔法を重ねがけして突っ込んだ。
並列思考と知覚上昇を全力でかけてるから、超スピードでもでぶつかったにも関わらず、女をバカ丁寧に回収できた。
そのまま、距離をとってそいつを改めて見る。
赤黒い肌、短めの黒髪の間から二本の角が見えていて、顔立ちは四〇前後の普人族の美丈夫、ごつい身体、身長は二メートル近くあるな。
俺は知識の中でだが、この風貌に当てはまる種族を知っている。
「おいおい。オーガじゃなくて
誰だよオーガって言ったやつ。
あ、依頼主か。
村長か。
そうかそうか……。
ぶっとばしてぇー。
チェニック達はー……全滅か。そりゃそうか。
鬼人じゃしゃあないわな。
とりあえず、
『あー、鬼人さんや。とりあえず危害を加えることはないから、矛を収めて貰えないかね』
どうも俺を警戒していたらしい。
いきなり話しかけられたことに驚いて力が抜けたのか、手をだらんと下げた。
『ほぉ。私と話せる
『まあな。それでどーよ。話し合いで解決しませんこと?』
少し考えるそぶりを見せた後、
『んー……、分かった。せっかく意思疎通ができるのだし、久しぶりに普人族と話でもするかな』
と言って、その場に胡坐をかいて座った。
よかったぁ、話せる奴で。
『ありがとね。まずこいつらの治療させてもらっていい?まあ、知らなかったのが悪いとはいえ、こいつら俺と同じグループの奴らでね。不本意ながら仲間なんで死なれると困るんだわ』
『いーよ。その代わりその後にまた、手を出そうとしたら今度こそ殺すからね。あと、鬼人語じゃなくても大丈夫だよ。普人族の言葉も話せる』
「そうかい。じゃそのほうが楽だからそれで」
とりあえず俺は王女たちを回収して、並べる。
うーん、一番ヤバいのは王女さんかね。
まずは、周りから魔力を回収。
王女さんの頭に手を当てて王女さんの魔力質に合わせて魔力を流す。
この感じじゃ治癒魔法だと顔に傷跡残るな。
しゃあねえな。
んー、最後にこいつの顔を見たのは……昨日の夜か。よし、そこまでならなんとか戻せるか。
時間遡行魔法。
これは、字のまま時間を遡る魔法だ。
膨大な魔力とついでに体力も使う代わりに、魔力の量に合わせて肉体年齢を知っている時間まで戻すことができる。
つまり、腕がちぎれても、腕がある時間を知っていればそこに戻すことができる。
ただ、この魔法。
かなり使い勝手が悪い。
まず必要な魔力が膨大である上、体力までも使う。 そのため、自分の腕が吹っ飛んでもすぐに戻せない。 腕吹っ飛んでるのに体力使う魔法を使えるわけがないしそんな余裕はない。
そしてもう一つ。
この魔法で戻るのは肉体の一部だけであること。
これの何が悪いかというと。
身体は日々成長しているのに、腕だけ一日前程度ならいいだろう。
けど、一週間前の腕だったら?
一ヶ月前の腕だったら?
そう、つまりその部分だけ成長前に戻るため時間によっては違和感を抱くのだ。
かと言って時間を進めることはできない。なぜかはわからんができない。
まあようは、戦闘中にもし戻せたとしてもそんな違和感を抱きながら腕をふっ飛ばしてくる相手とは戦えないよね。
しかも、戻すのはゲームのセーブ&ロードみたいな感じになる。
その時間の肉体に向かって戻っていくんじゃなくて、その時間の肉体いきなり戻るのだ。だから遡行途中に止めるとかが出来ない。
いろいろと厄介な魔法である。
まあこういう時には使えるってことが今わかったけど。
これ、仲間がいる時にはいいかもね。
敵がいない、もしくは今みたいに待ってくれてないとダメだけど。
とか言ってる間に、全員の治療終了。
顔の傷が残らないよう時間遡行魔法で治して、身体も時間遡行魔法と治癒魔法で治した。
結構体力使ったな。