第四話 ユニーク魔法は役立たず!?
何やら物凄いプレッシャーを放ちながら俺を連れ出したアンナ先生。
そんな俺は、今校長先生の前にいる。
俺は、険しい顔をしていたアンナ先生に、校長室まで連れられていた。
さて、この校長先生。前世で存在した、チャップリンの生き写しみたいな人だ。
チャップリンを知らない人は、ググってみよう!
でも知ってるよね、普通知ってるよね?
……もし知らないのなら、おじさんジェネレーションギャップを感じちゃうよ。
「それで、アンナ君。彼はどうしたのかね?」
「一先ず言葉で言うより見ていただいた方が、事の大きさが分かると思います」
するとアンナ先生は、俺の目の前に水晶球を出し、触れてみるように指示を出した。
またかぁって思いながら、俺は水晶球に触れた。
すると先程と同じように、めっちゃくちゃ眩しい虹色の光が部屋を照らす。
「こ、これは!?」
チャップリンそっくりな校長先生が驚愕した声を出す。
「……お分かりいただけたでしょうか?」
惜しい!
そこは、もうちょっと声を低くして「お分かりいただけただろうか?」と言って欲しかった!
俺、あの番組すっげぇ好きだったんだよな!
見たいけど、死んじゃったからもう見れない。
……はっ、俺今まさしく不思議体験をやっててアンビリバボーじゃん!
番組に投稿できるんじゃね!?
……出来ないけどね。
「……まさか、我が学校からユニーク魔法の使い手が出るとは」
「私も驚きましたわ。今まで見た事がない反応だったので、恐らくユニーク魔法しか考えられないと思い、校長先生にも見てもらいたかったのです。しかも、魔力量は恐らくランクSを軽く凌駕しているでしょう」
えっ、魔力量もすごいのか?
……俺、そんなのポイントで購入してないんだけど。
「この魔力量のままで、六属性魔法だったら素晴らしかったのに、よりによってユニーク魔法とは……」
「ええ、彼は何とも不運の星の元に生まれてしまったようです……」
ちょっとちょっと!
ユニーク魔法って、そんなに良くないの?
思いきって聞いてみよう!
「えっとお二方、ユニーク魔法ってそんなにダメなの?」
「……入学早々君にこのような残酷な事を言って申し訳ないのだが」
いやいや、何言ってるんだ、校長先生は!
すでに、魔法解放の儀やってる時点で、夢見る子供をまさにぶった斬ってる行為だと思うけど。
魔力量のランクもそうだしさ!
今さら何言っちゃってるんだろうって思うが、多分この世界では普通なんだろうな。
「六属性魔法は知っているね?」
「まぁ、何となく?」
「ふむ。一応説明しよう。火属性は火や炎、大地に流れるマグマを操作する。水属性は水や人体の血液や細胞を操作出来る。回復にも使われるな。地属性大地に関わるものを操作する。風属性は大気を操作出来る。そして光属性や闇属性はそのままの意味であるな」
なるほどなるほど、そのままの意味だったけど、水属性は血液と細胞も操作できるのね。
まぁ人体の70%は水分って言うし、それらを操作して回復させたりするんだろうな。
「そして、その六属性から外れた魔法も存在する。それらがユニーク魔法と言われており、希少な魔法であるし、他人と使える魔法が被る事は絶対にない」
「おおっ、いいじゃねぇっすか! 唯一無二、最高じゃないっすか!!」
「それが……ユニーク魔法はそうではありません」
おっと、アンナ先生が悲痛な顔をして俺と校長先生の会話に入ってきた。
……そんな顔する程なの?
「ユニーク魔法は、まずどういう魔法かを調べる術はありません」
「へ? じゃあどうやってわかるんですか?」
「……皆、地道にどのような魔法なのか調べるのです。しかし手掛かりが一切ない状態で調べるので、一生を掛けても判明しなかった人もいます。つまり、自分の魔法が使えないまま亡くなったって事です」
「げっ!! ものすっごくハードル高くね!?」
「はーどる? ……まぁ、分かったとしても何も役に立たないようなものだったりします」
「役に立たない? 例えば?」
「過去に発現した者に、《雷属性》がいました」
何処がユニーク魔法やねん!
めっちゃありふれた属性じゃないかよ!!
……いや、だったらこんな悲痛な表情にならないよな。
「何かめっちゃくちゃ便利な属性に聞こえますが?」
「いえ、役立たずでした。使用したら自分の体に電流が流れ、自身が気絶する魔法でした」
「それ、ただの事故でしょ!!」
役立たずどころじゃなかった!!
魔法を使ったら、自分が感電して気絶するって、んなバカな!!
俺は顎が外れそうになる位、口を開いて驚いていた。
「他にも《氷属性》がありました」
「聞くとマトモそうなんだけど、結果は残念だったんでしょ?」
「はい、発現したら全身が氷漬けになり、死亡しました」
「何で自爆ばっかしてんだよ!!」
ユニーク魔法、危険すぎじゃね!?
他にも色々と出てくる出てくる。
《樹属性》は自分が樹になっちゃったり、《操作系》魔法は物をちょっと動かせる使用用途が一切わからないものだったりらしい。
うん、こりゃ役立たずと言われてもしょうがない!
「あ、アンナ先生。俺はどういう魔法なの?」
「……全くの不明です」
「ですよねぇ……」
やっべぇ、俺勢いでユニーク魔法をポイント購入しちゃったよ!
あの時やっぱり女神様と相談して決めるべきだったか……。
「いいかい。君が持つユニーク魔法は術者の命を奪いかねない。そしてひっっっっっっっっじょうに役に立たない。非常にな!!」
「そこ、強調せんでいいでしょ!?」
「すまない……何か君、五歳じゃなくて私と同い年みたいに感じるから、何でも遠慮なく言えてしまったよ」
まぁ通算精神年齢四十歳ですからね!
校長先生も見た目四十代位だし、俺が前世から生きていれば同年代だったかもな。
「私達教師は、親御さんからお子さんを預かっている身だ。ユニーク魔法を発現させて死んでしまった場合、大変な事となるのはわかるかね?」
「まぁ想像しやすいっすね」
多分母さんが半狂乱になって、この学校を糾弾するだろう。
父さんも剣でチャップリン校長に斬りかかるかもしれないし。
あれだ、つまり穏便に済ませたいから、魔法は使うなって事だろ?
「だから、魔法の練習をしたい場合は必ず、アンナ先生に付き添ってもらう事を条件とする」
ありゃ?
予想とは違った。
魔法使っていいんだ?
「……驚いた。学校の体面を守る為に魔法使用を禁止されるかと思ってたけど」
「君は五歳児の発想ではないね……。そんな君にだから言えるのだが、私達にも利益があるんだよ」
「利益?」
「うむ。もし君がユニーク魔法を使用出来るようになったら、私達はその属性を有効活用できないかを調査し、君に指導する」
はっはぁ、読めたぞ。このチャップリンの描いた図式。
「俺を指導して成功したら、それをこの学校の売り文句にする。すると世の中のユニーク魔法発現者もここに入学してくるから、生徒も増えるし国からの援助も増えるって事でしょ?」
この学校は、国営だ。
いや、この世界の学校は基本的に国営だって言った方が正しい。
国が定めた最低基準を満たす事で、国の資金によって運営される。
国営と言ってはいるが、実質運営方法は校長に任せられる。つまり投資運営だな
生徒数が増えれば投資金額が増える。金額が増えるという事は校長の給料も増える。さらには教師の給料も増える。
もし給料を増やしたいのであれば、生徒を増やさなきゃいけない。
えっ、何で俺がそんな事知っているかって?
うちの村の図書館にちょっとした資料があって、それを読んだらわかったって訳。
とりあえずこのチャップリンめ、俺を使ってユニーク魔法の有効活用を発見できたら、俺自身をモデルケースにして宣伝にしやがるつもりだな?
まぁ、そうしてくれた方が俺も遠慮なく利用できるってもんだ。
「……ハル君、あなたは何者ですか?」
アンナ先生が目を点にして俺を見ている。
いやぁ、何か照れるぜ。
チャップリン校長も、目を見開いて俺を見ている。
……野郎の視線は遠慮願いたいぜ。
「別に、ただの五歳児ですけど?」
「……『ただの』五歳ではないのはよぉくわかりました」
ま、中身はおっさんですがね!
「とりあえず校長先生。俺を遠慮なく利用してくれて構わないっすよ」
「……本当かね?」
「もちろん。ただし、交換条件。俺のこの魔法の正体を一刻も早く知りたいので、全面的に協力してもらいますぜ?」
「……具体的には?」
「そうっすねぇ~。魔法は確か学問だったと思うので、それ関係の書籍を全部貸してもらいたいのと、今日から早速魔法の練習をするんで、アンナ先生を学校終わった後に借りたいっす」
「うむ、なんら問題はない。許可しよう」
チャップリン校長は、アンナ先生に確認する事なく、俺の申し出を許可した。
アンナ先生、すっげぇ批難的な視線を校長にぶつけるけど、何食わぬ顔で校長は受け止めている。
ま、先生は凄みが一切ないから、怖くないんだけどな!
「よろしく! んで、俺にまだ何か用事は?」
「うむ、ないな。ハル君……と言ったな? 今日の授業は午前中で終わりだから、お昼を食べたらアンナ君と合流をして練習をするといい」
「ういっす」
「その間に書籍は私の方で準備を始める。完了したら呼びに行く」
「は~い、待ってますよ、チャップリン」
やべ、チャップリンって言っちゃった!
「うん? 君に私の本名を伝えたかな?」
あんた名前チャップリンなのかよ!!
実はあれだろ、あんたチャップリンの生まれ変わりだろう!
あの女神様の所で、容姿と名前をそのままにして前世の記憶引き継がないで、こっち来ちゃったって感じだろ絶対!
すると、頭に猛烈な痛みと衝撃が走る。
「いって!!」
どうやらアンナ先生のゲンコツが、俺の頭頂部に落ちてきたみたいだ。
「目上の人を呼び捨てしてはいけません!」
はい、ごもっともで。
「へ~い、すみません」
「……ハル君、反省の色が見えないようだけど?」
「反省しております、マム!!」
また拳を作り始めたので、とりあえず敬礼しておいた。
さて、俺は今後自分のユニーク魔法の正体を探る作業をしなくちゃいけない。
出来るだけ短い期間で、しっかりと発現させたい。
俺だって、やりたい事たくさんあるし。
ハーレムとか、ハーレムとか、ハーレムとか!!
正体を探る作業に没頭し過ぎて出会いのチャンスを無くしたら、前世と全く同じ道を辿っちまう!
それだけは、異世界版光源氏物語計画が完遂出来なくなるから避けたい!!
「さっ、戻りますよ、ハル君」
「へ~い」
俺とアンナ先生は一礼をして校長室を出た。
そして二人並んで自分の教室へ歩いていく。
まぁユニーク魔法がどうであろうと、俺は落ち込まない。
こん位の困難があった方が、人生は楽しいってのを、前世でしっかり知っているから。
なら、余裕でこんな困難乗り越えてやる!