電話
渡る世間は鬼はなしと言うが、俺に言わせれっば渡る世間は嘘ばかりだ。
愛も友情も全ては嘘で塗り固められている。
何もかも嘘に埋もれ存在する。
それを俺は知っている。
電話が鳴った。
俺は電車から降りホームの椅子に腰掛け電話に出た。
「はいもしもし。」
相手は親しそうに話し始めた。
「おぉ~垣堂私だ。少し頼みがあるんだけど会ってくれないか。」
俺は相手が誰だかすぐに予想がついたが、わざと他人のフリをした。
「何方か存じませんが、私にご依頼ですね。」
相手は少しして、
「まぁ~それでいい。今どこにいる。」
「大濠です。大堀公園の近くの喫茶店にいます。」
俺は即答した。
もちろん嘘だ。
「喫茶店に行けばいいのか。」
「いえいえ近くに大濠公園がございます。中央に池がありますので、
そこでお会いしましょう。」
「わかった。今からなら30分も掛からない。」
「それでは公園で。」
その言葉を最後に電話は切れた。
俺は電車に乗り大濠公園に向かった。
駅に着き公園に向かっていると電話がなった。
「はいもしもし。」
「既に公園についたよ。中央の池のベンチに座っている。」
「サングラスを掛けてるからそれを目印にしてくれる。」
「わかりました。」
電話を切り公園の中央へ進むんでいくと、そのグラサン女がベンチに座っていた。
俺は少し間を取ってベンチに座った。
「久しぶりだな~八百万」
「久しぶり垣堂!」
俺は電話での丁寧な口調をやめた。
こいつにそんなことをする理由は無いからだ。
こんな見るからにヤンキーな女に。
「わざわざ俺に会いたいなんてな。どうした何かあったか。」
すると八百万はカバンから封筒を取り出した。
「これ今回の分中に100万入ってる。」
「内容は何だ。」
「ある人を騙してほしい。」
「これを知っている人物は俺とお前だけだな。」
「もちろんだ。私は嘘はつかない。」
ふん。嘘吐きの言いそうな言葉だな。
しかし確かに封筒には100万入っている。
とりあえず仕事内容を聞くことにした。
しかたない。
「わかった。詳しく聞こう。」
八百万は少し笑った。
「騙してほしい相手はこいつだ。」
八百万は俺に写真を渡してきた。
女性か。
「二十代後半で男っ気のなさそうな雰囲気だが、」
「さすがだね。年は27歳でカフェで店員をしている。一人暮らしで男経験もゼロ。」
「それでその女をなぜ騙さないといけないんだ。」
「この女はある組織の資料を持っている。しかもそれを消去しようとしている。」
「それでその女を騙し隙を突いて資料を盗めと言うことか。」
「その通り。」
俺は話しつつあることを考えていた。
いったいこの件に関わっている人物は何人いるのか。
この額でこの仕事内容。
俺に頼む仕事にしては簡単すぎる。
しかし俺はこれを受けることにした。
「わかった受けよう。今日からどれくらいの期間なんだ。」
「1ヶ月でよろしく。ちくいちこの番号に電話してね。」
そう言うと八百万は立ち上がり公園を後にした。
さてまずは下調べだな。
俺は写真の裏に書いてある住所に向かった。
続く