ボッチ、ク○スキルとダークナイトの恩恵を授かる
「な、なんだこれぇ!?」
「ん? どうした駿?」
と、優真の声に耳を貸さず、駿はある紙の一点だけをあらん限り目を見開きながら注目していた。
こ、これは............マジかよ!?
その駿のステータスは───こうだった。
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コンドウ・シュン
男性
人族
Lv1
HP 100
攻撃力 100
魔攻力 100
MP 100
敏捷 100
耐久 100
スキル
なし
固有スキル
状態異常倍加(下位)
・状態異常の効果が二倍される
・自分の体に何らかの異常が起きた場合、それが付加される
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おいいいいいいいいいいいいっ!? なにこのク○スキル!? 状態異常倍加って......倍加しちゃいけないものだろ! ふざけるんじゃねぇえええええええ!! どうしてこうなった!? 俺の......俺の固有スキルが......役立たず......いやむしろ足手まといになってやがるぜーっ! て、ばっきゃやろう! おいおいどうすんだこれ......俺、毒とか食らったらもう恐ろしい速さで俺のHPを蝕んでくるじゃん............ていうか能力値見てみろよ......なにこの特徴の無さ!? バランサーすぎだろ! 絶対俺のステータスを決めた神様が居るとしたら「あ、とりまここ全部100でいいや」とか言ってたんだろうな~......おいこら神、いっぺん表出やがれ!
と、駿の頭のなかは色々とすごいことになっている。
そんな、紙を掴んでいる両手を明らかに揺らしながら顔面蒼白の駿を心配した優真が声をかけた。
「お、おい駿! 大丈夫か!」
「......アハッ......ハハッ......」
「ヤバイ......こいつ壊れやがった!?」
どこか遠い目をしながら、不気味に笑った駿を優真は危惧するが
「なぁ......優真......紙見せて」
もしかしたら仲間が......!?
と、勢いよく開いたが
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アサノ・ユウマ
男性
人族
Lv1
HP 130
攻撃力 250
魔攻力 150
MP 90
敏捷 100
耐久 70
スキル
なし
固有スキル
剣豪の記憶
・剣術のスキル熟練UP経験値限度が1/2になる
・持っている武器(剣限定)に耐久性と鋭さが二倍付与される
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はい......ですよねー......
「..................」
「駿はどうだったんだ?......俺は固有スキルに剣豪ってついてるし戦士とか選ぼうと思ってるんだけど」
「................................................」
「駿? お前なんかさっきからおかしいぞ?」
紙を見ながらずっと黙り混んでいる駿の様子は明らかにおかしかった。
しかもよく見ると小刻みに駿の肩が揺れているのがわかった。
「優真」
「ん?」
「俺死ぬかもしれない......」
そう言って強引に優真にステータスが記された紙を見せ、駿はまたこう呟いた。
「毒には......気を付けるよ......ハハッ......アハハッ......」
黙読している優真の顔が徐々に驚きに染まっていくのが分かった。
「これは......!?」
そして、読み終わった時には一杯に目を見開いた顔を駿に覗かせ、優真はこう口にした。
「お......俺とお前で強くなろうぜ......? な?」
「いや......その顔で言われたってな」
駿は苦笑しながらも、優真に少し嫉妬し、同時に悲しんだ。
仲間なんて居なかったやんや......グスッ......
この後、一人を除き29人がステータスの紙を見て喜んでいたという。
そして、俺はこの光景を眺めながら、どうやってこの世界で生きていくか、今はそれだけを考えていた。
「よし......皆確認は終わったな?」
「「「はい」」」
「じゃあ次は職業を決めてもらう。職業を決めたら、その職業に合った武器を贈呈し、その後はベテランの冒険者や騎士がお主らに戦闘技術や知識を叩き込んでくれることになっておる。心して選び、その道を極めて来るのじゃ」
「「「はい!」」」
どうやらまた何か調べるつもりだな......
「ではまたこの水晶に手を置いてくれ。やり方は先程と同じじゃ」
また並ぶこととなった生徒達は縦に一列になって自分の職業は何かとてもワクワクした表情で並んでいた。
駿はもう固有スキルのことで一杯な気持ちなのか、あまり興味がなさそうに並んでいる。
次々と調べられて、次々と適性の職業が言い渡される。
戦士、僧侶、騎士、槍術士、拳闘士などという一般職の他に、賢者、バトルマスター、パラディン、遊人、武道家など上級職につける人もちらほらいた。
そういえば峯崎さんはどうなった?
と、言い渡され喜びを露にしている伽凛の元に歩み寄り、職はなんだと、聞いてみたら
「賢者だよ? まさか私も上級職につけるなんて思わなかった!」
「え、すごいじゃん峯崎さん」
「そ、そう?..................えへへ~」
駿にそう言われて、伽凛は笑顔で照れ臭そうにしていた。
「近藤君は? もう決まったの?」
「あ、そういえば......行ってくるか」
と、駿は意気込みながら水晶が置いてある机にゆっくりと歩み寄り、そっと水晶に触れた───すると
「こ、これは!」
言い伝える役目の神官が、目を見張る。
「え?」
その言葉に、また何かあるのか!? と、駿は嫌な予感をした。
───水晶の中に、浮かんできたおぞましい黒いオーラ。
周囲の騎士も、武官も、王も誰もが瞠目した。
クラスメイト達は、状況が理解できず、困惑した表情でその状況を見守る。
その黒いオーラは、水晶の中の全体に蔓延したあと、すぐに徐々に消えていった。
やがて、黒いオーラが消え、水晶はまた無色透明に戻った。
「な、なんだったんだ......」
駿は冷や汗をかきながら、困惑した表情で首を傾げた。
そんな駿に王は驚愕した表情で駿を呼んだ。
「お主......まさか」
「はい?」
今まで水晶に触れてきて駿のようなことにはならなかった皆は、少し嫌な予感をした。
───しかし、それは駿も最初から同じだった。
「この男を引っ捕らえよっ!」
「「「え......!?」」」
王の突然の言葉に、駿を含め生徒達全員が驚愕する。
「はっ!」
そして騎士達も、その言葉に一切抗うことなく、命令に従った。
「なんでだよ!?」
「いいから黙って捕まれ!」
駿は襲いかかって来る騎士達からこの王の間の扉を強引に開けて、城内を全速力で逃げ回りに行った。
「何でなんですか!?」
伽凛は突然、王が駿を捕らえようとしてることに、激しい怒りを覚えた。
「彼が......魔王軍に非常に近い存在と分かったからじゃ」
「そんなの横暴です! どうしてそんなことが言えるんですか!?」
優真も、そして皆も突然のことに怒りを覚えて、怒声を王に浴びせた。
「彼の職業はダークナイト......この水晶に黒いオーラが発生したのは、紛れもなく彼をダークナイトと示すのに十分な理由と根拠があったからなのじゃよ」
ほとんどに人が「はぁ?」と聞き返す中、伽凛は怒気を含ませた声で叫んだ。
「近藤君はそんな職業だとしても、反旗を翻す人じゃないと確信できます!」
「たとえそうじゃとしても、私はこの国の王であり、国民を守る義務がある。不安分子を置いとくままではいかんのじゃ......」
その言葉を、優真は鼻で笑った。
「守る義務がある? じゃああんたはいまだに戦場に立っているってことか......?」
「それとこれとは話が別じゃ。私は戦場に立たなくたって、守れることはできる」
「じゃあ俺たちもそれとこれとは話がべつになっちまうな~。実際、俺は駿と魔王討伐してみたかっただけだからな......俺は降りて、駿と一緒に旅するわ」
「ああ、好きにするがよい」
王は、こやつ一人抜けたってどうにでもなるわい......と、嘲笑を浮かばせた。
「よし───皆、行くぞ」
「「「おー!」」」
「......いやちょっと待たんか!」
しかし予想外のことに、全員が行く気でいたため、王は盛大に焦って制止の言葉を浴びせた。
その言葉に、優真は「あぁ?」と、王を振り向き様に睨み付ける。
「どうしてあの若造にそこまで出来るのじゃ!」
「......実際、まだ得たいの知らない異世界の人より、数少ない仲間の方を優先するに決まってるだろ?」
「何を言っておる! ダークナイトの男を私は信じろとでもいうつもりなのか!?」
「それはこっちの台詞だ。今日会って間もないお前達のことを信じろとでも?」
この若造どもめ......図に乗りおってッ......!!
「もうよい! 出ていけ────」
───ガチャン!
「......!?」
と、王が叫んだ直後に、扉を開けた大きな音が、鳴り響いた。
「......お父様?」
部屋に冷気が立ちこもってきたと思えるような怒気を籠らせた冷たい女声が聞こえた。
「り、リーエルか......!?」
その声源をたどると、そこには金髪碧眼の容姿端麗で普通よりすこし豊満な胸を膨らませ、まさに姫と呼べるような美しいオーラを放っている、リーエルという美少女がそこに立っていた。
「......どうして、自分から呼んでおいてあの青年を騎士達に追いかけ回してるんですか?」
そのリーエルは、笑顔ながらも冷たい声で質問する。
「彼はダークナイトだったのじゃ......だから騎士達に追わせ───」
「───馬鹿ですか?」
「え?」
「あの方は転移者で、ここの世界の事情など分からないはずですよ? ダークナイトと言われても何か分からない状況で、しかも突然引っ捕らえよ、と言われた彼はさぞかしこの国に反感しているんでしょうね? ......彼の仲間であるこの方達もさぞかし、この国に反感しているんでしょうね?」
「むぐぅ......」
王はいいごもる。
「お父様がこの国の第一印象を悪くしたのですよ? お父様の勝手な思いと、勝手な行動で、どれだけ人に迷惑がかかっているのかご存知でしょうか? 城内の騎士達が邪魔だとメイドの方々から言いつけがありましたし......騎士達も騎士達で邪魔者扱いを受けている上で探していますし......事実探し人はここにおりますし───入ってきていいですよ?」
「え......?」
その言葉に王は思わず聞き返す。
一方リーエルは王に浴びせていた言葉を言い終わった瞬間、冷たい顔から扉の向こうに声をかけるときは可憐な笑顔になった。
リーエルの後ろの扉が開く。
「───お邪魔します......お? 本当にここに戻ってこれた......」
扉を開けたのは駿だった。
「ふふっ......王城はすごいでしょう?」
「はい......繋がってるとは思ってなくて......すごいです」
「あ......あ......」
王は口をパクパクさせながら駿の方に指をさした。
「ということで、コンドウ・シュンさんです。お父様、何か言うことはないのですか?」
「あ......いや───」
「───お父様?」
リーエルのその言葉で王は堪忍し、王はその場で駿に向かって腰を九十度に折り、次には一声
「申し訳無かった......!」
それをみていた皆は駿の無事を安心しながら、腰を折り曲げている王に溜め息をつく。
「あ......その......別にいいですよ?」
王が腰を折って謝ってること自体おかしいし、なんかこっちまで恥ずかしくなるし......
駿はそんなことを思いながら、頬を掻いた。
「ゆ、許してくれ......!」
「だから良いですって」
駿は王の元に歩み寄り、背中をさすった。
その光景を見ているリーエルや、他のクラスメイト達は自然と頬が緩んでいた。
「シュンさんは優しいですね。こんな愚王に」
「うっ......」
グサリ、とその言葉は王の胸へと突き刺さった。
「駿は優しいからな。でも勘違いじいさんには優しく出来るかな?」
「ぐっ......」
グサリ
「近藤! お前そんな奴に構うなよ! 一緒に旅に出ようぜー?」
「ぐはッ......」
グサリ
「近藤君......大丈夫だった? 痛いことされた? ごめんね、この人の暴走止められなくて」
「ぐおッ......」
グサリ......どさっ......
「もう止めたげて......! オーバーキルし過ぎいい!」
加害者である王を逆に被害者である駿が皆の口撃から守っている、そんな変な光景が出来ていた。