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其の壱

私は櫻井望都。14歳。京都府宇治市在住の中学二年生。アニメや音楽が大好きで、毎日学校に行くときにiPodを持って音楽を聴いている。スマートフォンにも数十曲入っているが、iPodの方が多く入っている。私が通う京都文化学園は、私立の学校で、初等部から高等部が宇治市にあり、系列の京都文化学園大学・京都芸術学院音楽大学が京都市にある。私は、いつものように木幡駅に降り立つ。木幡駅から出ると、父の勤務する京都アニメーション本社ビルとは反対の方向に出て、学園を目指す。私はいつも通り、イヤフォンでアニソンを聴きながら、口ずさむ。これが日課なのだ。私は、学校に着いたら、下駄箱から上履きを取り出し、突っ掛けのように履く。歩いているうちに踵も入れる。歩きながらショルダーバッグのファスナーを開け、iPodを取扱説明書などが入っている中ポケットのようなところにイヤフォンとともに突っ込む。教室に入り、ショルダーバッグの中に入れてあるビニール袋の口に手を突っ込み、ライトノベルを一冊取り出す。カバーを掛けてあるので、周囲に気に留められる心配はない。そもそも私の趣味は既にクラスメイトにはばれているので、今更気にする必要もない。

4限目が終わると、私は学食に向かう。学食は、中等部・高等部共用の事務棟の一階と二階の一部を吹き抜けにして作られた広い空間で、高等部の生徒も百数人以上いる。私は、カツ丼の食券を買い、食券を受け渡し口に持っていく。2,3分経って、カツ丼の載ったお盆が運ばれてくる。私はそれを受け取り、手近な席に座り、七味唐辛子をかけ、食べ始めた。私は、あまり人と話さない。周囲の人間と話をする気はあまりない。勿論話しかけられれば答えるし、それなりに会話をする友人に近い存在もクラス内には多いが、結局クラスでは一人で読書をしている。私は昼食後、学校の図書館に行く。そこで生徒用PCを使い、インターネットサーフィンをする。法医学の専門書を読むときもあるが、基本図書室に28台あるPCのどれかを使っていることが殆どである。デジタル機器系の知識なら父以外なら負けないという自負がある。

授業が終わり、私は中等部棟5階の部室に入る。すると、親友で、一学年下の北本遥香が入り口の前で仁王立ちしていた。私は、
「遥香?どうしたの?」
と言う。遥香は、
「歌いません?」
と言う。訳が分からない。遥香の説明をすっ飛ばすところは昔からである。私は、
「えーと。歌う?どゆこと?」
と言った。遥香は、
「ですから、カバー音楽ユニットを結成するんですよ。それに加入しませんか?」
と言う。カバー音楽ユニット?私は、
「えっと。ごめん無理私歌下手だし」
と言う。事実そんなにうまくない。だが遥香は、
「いえ、私よく登校の時に歌ってるの聴きますけど普通にうまいですもん」
と言う。ほんとかなぁ。私は、
「でも・・・」
と呟く。遥香が、
「大丈夫です!望都の御両親にもさっき電話しましたから。ご快諾してましたよ?」
と言う。・・・お母さん?なんで⁉お父さんもだけど。私は、
「・・・・嘘ついてないよね?」
と言う。遥香は拳で自分の胸をドンと叩いて、
「勿論です!この私が嘘をつくとでも⁉」
と言う。

私が帰宅すると、母の優芽が、
「望都。バンド組むの?」
と言う。私は、
「バンドではない・・・・のかな?」
と答える。これで、私の平穏で非生産的な日常は強制終了した。

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