エンジェル・ハート 8
昼夜問わずの野良狩りは僕たちを補導することで権力を誇示しようとしていた。
でも、僕たちは確かに幼い存在でしか過ぎない。でも精一杯、生きていた。
分かち合える友とともに――
*
長い、長い行列だ。
あの日のような僕たちの姿がない変わりに、ホームレスたちの姿が一つのコロニーにさえ思える。
たった一人で始めたスミスの活動が多くの支持を得て、大きな活動になりつつある。
僕たちは過去であって、あらためて、過ぎた日々だと思い知らされる。
多くのボランティア活動者が気さくにホームレスたちに声をかける。
それに答えるホームレスたちの顔は明るい。
ぼんやり行きかう人波を僕は眺めた。
あの時は、たった一つのパンでさえ、奪い合いになったものだ。
袋一杯に詰まったパンは今日の晩餐に相応しい。
愛理と初めて出会った日、僕はパンを貰い損ねていた。
その日、浩太がくれたパンは廃棄された寄せ集めの一つだった。
偶然、立ち寄った住宅街からほど近い葉桜の袂、傷だらけのまま、膝を抱えた愛理を見つけた。
なにを聞いても答えてはくれない。
僕たちはその日、桜を見に行こうと連れ立った。
前日は野良狩りで散り散りになったものの、春の嵐が僕たちを助けてくれた。
浩太と二人、
散り去った桜吹雪に強い溜息を覚えた。
そんな僕たちの目に映ったものは大きな衝動と感激だ。
僕たちは顔を見合わせた。
浩太は足を竦めたように動かなかった。だけど、僕はゆっくと歩みよった。
木漏れ日のなかに咲く、果かない幻。もどかしいほどの輝きを僕は見つけてしまった。
真新しい傷跡に乾いた鮮血がある。
覗きこむほどに僕は愛理を見た。
「行こう」
深い意味はなかった。
ただ、ここに置いていけない気持ちだけがある。
「やめろよ!」
怒気さえ感じる浩太の声を振り切った。
「行こう」
うっすらと開いた瞳、
悪夢の続きだけじゃ悲しいよ。
焦点さえもままならないほどに憔悴した瞳だけがある。
ふと、背後から人の影、
浩太の顔が緊迫とした。
「帰るんだ」
強張らせた顔は一つだけではなかった。
荒々しく腕を掴むと、父親らしき男が愛理の髪を掴んだ、
「なにをするんだ!」