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新しい日常

翌日朝5時ごろ、ベッドから起き上がり、俺の部屋の隣のリビングダイニングに入る。俺の向かい側には階段があり、階段がくっついてい壁面の2階部分には、開け放たれた内窓があり、そこから白い脚が見える。あの部屋を使っているのは晴海である。あいつは恐らく寝相が悪いのだろう。まあ俺もそこそこ悪いが。足が内窓の外に放り出されているのがなんかおかしい。放っておこう。

ひとまず冷蔵庫にあったカップ麺で朝食を済ませる。あとから食材を買いに街に行こう。車あるんだし。なんか謎のカードに手かざしただけで運転技術取得できたみたいだし。俺は自室に戻り、ノートPCを持って戻ってくる。暇つぶしに小説を書く。俺はスマートフォンで音楽を流す。
2016年の1月~3月までやっていた暁なつめ先生原作のラノベアニメのОPだったように思う。俺がふぁぁと欠伸をしていると、可南子がやってくる。可南子は、
「おはようございます」
と言う。俺は、
「・・ん。おはよさん。よく眠れた?」
と言う。可南子は、
「まあ、部屋の内装とか広さは本当の私の部屋と同じですし」
と言う。そりゃそうか。俺は眠れなさ過ぎて、いつもの事だけど。にしても・・・昨日会ったばかりなんだが、晴海と可南子で言ったら、可南子の方が明らかに胸が大きい?ま、いっか。俺は、
「夢ならたくさんみた。醒めたままでもまだ会いたいぃ」
と歌う。いい曲なんだよなあ。ZAQさんのデビュー曲。あのアニメ面白かったし。俺はそのまま歌いつつ、小説を書く。可南子は知らないうちにカップ麺にお湯を注いでいる。俺はなんとなくZAQのほかの曲を歌う。
「想い続けてるだけで幸せなんて言えないね 虚ろな自信背負っていても 君が笑う」
と言う風に、傍目から見たら引くかもな。傍目八目という言葉は現代では意味を為さないじゃん。この様じゃ。俺は、
「・・・・あずにゃんぽいな。お前さん」
と可南子に尋ねる。可南子は、
「なんで『けいおん!』のキャラなんですか?」
と言う。黒髪のロングツインテール。身長ほぼ同じ。目がなんか似てる。俺は、
「いや、それっぽい」
と言う。可南子は、
「な、なんでですかぁ。というか、それって褒めてるんですか」
と言った。まあ、褒めてるっちゃ褒めてるけど。

朝9時。晴海はまだ起きてこない。健佐と可南子は2人で談笑している。俺は、いったんリビングを出て、玄関ホールの横にある階段で2階に上がる。そして、リビング吹抜のほうに通じている廊下を歩く。ここには、可南子の寝室、健佐の寝室の前を通り過ぎ、俺の部屋の2階入り口のある廊下に出る。正面は全面ガラス張りのリビングの2階部分が見えている。俺は、左に曲がり、遠慮なく晴海の部屋のドアを開ける。部屋の壁はピンクの花柄の壁紙で装飾されていて、デスクにはSONYのパソコン、VAIOの2年ほど前のモデルが置いてある。俺も愛用のレッツノートのほかにVAIOも持っているが、こいつよりは有効活用できているのではないだろうか。俺は、内窓寄りにあるベッドに目を向ける。掛け布団は床に落ち、片足を内窓の外に出したまま、晴海が寝ている。俺は、床に落ちていた晴海のiPhoneを拾い上げ、晴海の上を向いている顔に載せる。起きるかと思ったが、案外動くこともない。死んでないよな?俺は自分のXPERIAを操作し、Re:Reと言う曲を音量を大きめに設定して、あいつの耳元で鳴らす。晴海が思いっきり起き上る。起き上がりや否や、
「は、はる・・晴彦。なに?み、耳が壊れたらどうするのよ!?」
と言う。そんだけ元気がありゃ大丈夫だな。俺は、
「寝起きいいな。寝相はやばいくらい悪いのに」
と言った。よく考えたらこいつ足そのままなんだけど。大丈夫なの?こいつの御両親も家族旅行の時絶対蹴られてるぞ。晴海は、
「左足が痛い。てか、なんで内窓の外に・・・?」
と言う。あ。俺女の子の部屋に入ってるな。ま、いいか。俺は、
「昼から買い物行くぞ。食料がちょっと足りんでな」
と言う。晴海は、
「何で私が?可南子でもいいじゃん」
と言う。は?お前外出しなさそうだからだよ。俺は、
「あほか。お前休みの日とか絶対外出しねえだろ。つか友達いねえだろ」
と言う。その言い方にカチンと来たのか、晴海は、
「友達くらいいるし!ひ・・・・一人くらい」
と言う。ああ・・・。俺は、
「・・・いや、友達ってのは複数いることが前提なんですけど。だからお前に友達はいないよ。1人だったら友人と言えよ。国語苦手なの?」
と言う。ちなみに俺も友達はいない。何故なら必要ないからだ。晴海は、
「・・・苦手だよ。国語とか、最低点5点ですけど。何か?」
と言う。ショックだったのかよ。俺は、
「なあ。小中高での勉強に意味があると思うか?」
と言う。俺は意味も必要性もないとは思うが、どうしても通らなくてはいけない道、人生という長くて険しい山の下の方、人生を駆け降りるのは一瞬だと思っている。それは死ぬ時だ。だからそれまでは、一生登り続ける、と思う。話がそれたね。晴海は、俺がそんなことを考えられるほど考え込んで、
「必要性も意味もあまり感じられないけど、これを終えなくちゃ大学に行けないから。小中高では基本、大学で応用、みたいな?」
と言う。まあ、そう思うのも・・・こういう考え方しかできないアホしかいないからか。

俺と晴海は、屋敷の玄関から、外に出る。車庫には、1台のマイクロバス、5台の乗用車が停められている。俺は、自分に割り当てられたチェロキーリミテッドに一人で乗り込み、車庫から出す。そこで、晴海を乗せ、市街地まで走る。晴海は、ふわりとしたセミロングの髪を、後ろで結っている。俺は、
「お前。さっきから何してんの」
と言う。晴海は、
「え?胸揉んだらおっきくなるっていうから」
と言う。馬鹿なの?んなもんで大きくなるわけないでしょ。俺は、
「お前な。そんなもんで大きくなると思ってんの?胸の大きさなんて遺伝だったり体質だったりで決まってくんの。そんなもん気にしてもしゃあねえだろ。だいたいいちいち胸の大きさ気にしてるクソビッチバカ女ども一回滅亡すればいい」
と言う。クソビッチバカ女は言い過ぎたかな。いや、まあ間違ってはないし。

買い物を終えて、帰りの道でも晴海は黙っている。恐らくさっきの事だろう。俺は、敢えて話しかけようともせず、黙って屋敷まで運転する。屋敷の前にいったん車を停めると、晴海が降りる。車を車庫に入れ、リビングに入ると、冷たい視線を感じる。俺は、冷蔵庫に食材を入れて、自室に籠った。

自室に籠って数時間。もう夜の9時である。俺は保存食用に山ほど買ってきたカップ麺の一つを食べながら、長い事デスクトップPCとノートPC2台をフル稼働し、作業をしている。先程メールが送られてきて、1か月以内に金庫破りをしろと言うのだ。俺は、その計画を早々に練っていた。襲うのは大手都市銀行の地下金庫室。周辺の地図を見ていると、昔の水道管がつぶされて作られたという事。しかも壁までつぶされた水道管の名残が残っているようなのだ。

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