兼藤健資の不運
俺は兼藤健資。17歳。4月2日生まれ。身長178cm。なんだ大した事ねえなと思ったやつ。今日祟りに行くぞ。祟りに行くのは冗談ですけど(笑)。4月10日、俺の不運が始まる。
その日は俺の通う錬北学院高等学校の入学式。今日から新一年生が入ってくる。錬北学院高等学校は、実力主義である。生徒会長・委員長・部活動の部長は学年関係なしで選ぶ。さてどんな奴が入ってくるのかと期待や不安を抱いている2年生もいただろう。そんな中で、俺の部活に入ってくる1年生なんているはずもないと信じ切っていたので、特に気にすることもなかった。あいつに出逢うまでは。
入学式。新入生代表挨拶が始まった時、俺は、初めて彼女と出会った。彼女は、
「えーと。今回は、私ども新入生のためにこのような立派な式を開いていただき深く感謝申し上げます。これからの3年間、私どもは自分のため、周囲の人のため、いままで育ててくれた両親への感謝を背負って研鑽を積む所存です。私が楽しみにしているのは・・・」
とかなんとか言ってた気がするが、よく憶えていない。何故憶えていないのか謎である。不思議な気持ちだ。記憶力は人並み以上にあるんだがな。
入学式が終わると、俺は先程の不思議な感覚の事を考えていた。随分考えていたのか、クラスメイトに声を掛けられても気が付かなかった。暫くして、そのクラスメイトが、
「兼藤。おい兼藤!」
と大声で言ってきたので、俺は驚いて、
「な、なに?」
と言った。そいつは、
「いや。あの子が呼んでるぞ」
と言って指差したのは、新入生代表挨拶をした、あの子だった。
「話って?」
と俺は言う。彼女は、
「先輩が好きです」
と言った。はあ?こんな変人のことがですか。と思ったのが顔に出ていたのが、彼女ー惣賀真心は、くすりと笑い、
「先輩には、うまく言えないけどオーラがあります。私のタイプです。なんていえばいいか・・・まあ、一目惚れです」
と言った。あまりにあっさりと。あっさりと突き付けられたその言葉の衝撃が、俺には重すぎた。俺は、
「申し訳ないけど。俺は君の事を全然知らない。まだ時期尚早でしょ」
とだけ言い、逃げるようにその場を離れようとする。真心は、
「私、先輩の事あきらめません。たとえ先輩が何かと理由を付けて逃げても、ずっと答えを待ちますから」
と言った。俺はそれに応えもせず、校舎に戻った。