03
テーブルの上に置くと、ごとりと鈍い音がする。
見た目よりも重い──魂が込められた弾丸だと、想像するのはたやすい。
「ある男を追っています」
普段の調子を保って、ヴァージルが言った。
実包から、彼の目へ視線をそらした。細められた目が、柔らかい微笑の中にあって刃のように鋭い。
「だから、私のことは忘れてください。誰かに問われても、なにも答えないでください」
続いた言葉を、思わず聞き返してしまった。
自分の存在を相手に知らせたくて、少ない依頼料の代わりに依頼人を「広告塔」にするつもりだと思っていた。だというのに、忘れろだなんて。
逆に言えば、そのぐらいのことは喜んでやろうと思っていた。しかし、ヴァージルは静かに首を振る。ペンダントを首にかけて服の下に隠し、布越しに実包を握りしめる。
そうやって、どれだけの時間を弾丸に込めてきたのだろうか。
数瞬伏せられた目が、上がる。顔には微笑が浮かんでいるのに、神経を削られるような恐怖心が湧きあがる。
半分ほど残ったコーヒーを置いたまま、ヴァージルは席を立つ。
去り際、囁かれた言葉を噛みしめて、僕はようやく彼に関わったことの重大さを理解した。
「──復讐の理由を、これ以上増やしたくないので」