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 やはり、復讐代行などという物騒な稼業は似合わない。その差異が不気味さを増すのだが、ヴァージルの表情には人を安心させる力があるようだ。最初に彼から説明を受けたあと、グレッグ・ブリューに恐怖心を抱いたのは、ヴァージルのことを見ていなかったからなのかもしれない。

 考えすぎだろうか。

「どうぞ」

 短く言って、ヴァージルは白布を広げた。まっさらになった実包が差し出される。

 注意深く、掴む。ヴァージルの言葉に従い、片隅でうずく殺意を意識しながら弾を込めた。

 魂を込める。

 普通の銃であっても、復讐のためであればそのぐらいのことはおのずとしてしまうだろう。ただの精神論ではない。儀式のようなものだ。

 ヴァージルに促され、白い建物の方へ目を向ける。遠すぎてよく見えないが、辛うじて人が玄関から出てきたことを見とめることができた。

「見えなくても問題はありませんが、必要であればこれを」

 言葉と同時、横から双眼鏡が差し出される。銃を持たない左手で受け取り、覗き込む。拡大された視界がぐらぐらと揺れるのを抑えながら、どうにかしてピントを合わせ、精神病院の敷地内へ向ける。

 数人の職員に伴われて歩く男に目がとまる。

 忘れもしない、あの顔だ。薄気味悪い笑みは浮かべていないものの、見間違えるはずもない。

 グレッグ・ブリュー。

 ここ一週間、何度この名を思い出しただろうか。七年間、ずっと避け続けた忌み名を、意識の内だけとはいえこれだけ呼んだのは初めてのことだ。

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