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父の墓を指して言っているのだ。担当事件の被害者は増え続けているだろうに、過去の被害者に花を手向けてさらに親戚にも……なんてやっていたら、金と時間が全てそっちにまわってしまう。
やはり、殺人課に属する人間としては優しすぎるのではないだろうか。グレッグを捕えた、という点においての恩人なのだから、死者に金をまわしすぎて破産なんてことになってほしくはないのだが。
「あぁ、大丈夫です。……きちんと犯人を捕まえられた人には、それで手向けだと思うようにしていますから」
コッカーの言葉が、ちくり、ときた。
静かだった心がにわかに荒れはじめる。コッカーは当時、裁判に「負けた」と評した。求刑通りの判決にならなかったどころか、グレッグ・ブリューに与えられたのは刑罰ではなく治療だったのだ。
完敗、と言って差し支えない。
よほどいい腕の弁護士を雇ったのか、それとも自身の演技力が優れていたのか──法廷に出ていない僕には判別がつかない。
撃たれた足の治療と、それよりも重い心的外傷に苦しんでいたからだ。
もっとも、万全の体調であっても、法廷への出席など容易にできることではなかった──七年が経過した今でも、グレッグ・ブリューの影に怯えているのだから。
「それで──その、グレッグ・ブリューのことなのですが」
コッカーは、そこで言葉を切った。
いや、少し違う。切らざるを得なかった。俯いた表情は読みにくいが、数秒、下唇を噛みしめるのが覗きみえる。それも、色が変わるほど強く。