第22話 不憫な国王陛下
主君を蔑ろにする発言をしたカレンだったが、早速その手腕を発揮し、国王、王妃、レイナの側近達と即座に予定を擦り合わせ、翌日には顔合わせの場を設けた。その会場となった王妃の私室に、珍しく気合の入ったドレス姿で出向いたシェリルだったが、極度に緊張していたのも最初だけで、徐々に虚脱感がその心の中を占めていった。
「その……、シェ」
「最近シェリルが、随分人の姿を見せてくれる様になって嬉しいわ。一緒にお茶も楽しめますし」
「ところで」
「今日はこの前私が贈ったドレスを着てくれて嬉しいわ。やっぱり若い方には明るい色が似合うわね」
「レイナ様、ありがとうございます。私には勿体無いドレスです」
「ドレスと言えば」
「やはりレイナは趣味が良いわね。普段からミリアに着せる服を整えているから、若い方の流行にも明るいし。あなたにお任せして正解だったわ」
「そんな! 普段使いからともかく、正装をする際の衣装なら、ミレーヌ様のセンスにお任せしなければいけません。私ではとてもとても。シェリル姫に恥をかかせてしまいます」
「その、シェリルの」
「正装と言えば、再来月催される予定の国王即位二十周年記念式典の夜会で、シェリルを正式に御披露目しようと考えているの」
「私達で衣装及び装飾品の一切を相談中ですわ。楽しみにしていて下さいね?」
「ありがとうございます」
「…………」
大きな円形のテーブルに、国王であるランセルを挟んでミレーヌとレイナが座り、その向かい側にシェリルとエリーシアが座ってお茶会、という体裁を取ってはいたが、最初に挨拶を交わしてからは、ミレーヌ達がランセルを無視して笑顔でシェリル達に語りかけ、彼抜きで和やかに会話が進んでいた。
彼は何とかして会話に混ざろうと努力するものの、悉くミレーヌ達に流されてしまい、とうとう項垂れてしまう。ここについて来た侍従や警護の騎士達が、そんな主君を壁際から憐憫の眼差しで眺めていたが、妃達の侍女達は微笑ましくその様子を見守り、一種異様な雰囲気を醸し出す中、シェリルは困惑顔で隣の義姉に囁いた。
「エリー、ちょっと可哀想」
「私に言われても……」
(一国の王様が、正妃と側妃に揃って邪険にされているってどうなの? シェリルに言われるまでも無く、さすがに気の毒になってきたわ)
そこまで考えたエリーシアは、適当な話題は無いかと素早く考えを巡らせ、思いついた事を控え目に申し出てみた。