バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

1-1-19 ジェネラル討伐?ミスリルソード?

 現実世界に戻った瞬間、囲まれていた桜が回避する間もなく袋叩きに遭ってシールドが早々に消失した。

 「イタッ!ちょっと凄く痛いわ!」
 「桜一旦下がれ!頭と心臓だけは絶対守るんだぞ!一撃死だけはヒールしても救えないからな!」

 雅と綾ちゃんが割って入って桜を無事下がらせた。
 桜は肩と腕を切られたのか、ジャージが切られて肩に血が付いていた。
 傷自体は未来ちゃんに回復してもらって既に完治したようだが、余程痛かったのか桜は肩を気にして裂けたジャージの隙間から中を覗いている。

 「桜!戦闘中だ!傷の確認なんか後にしろ!痛みなんか二の次だ!目の前の敵が居なくなるまでは手足がもげても傷の事はヒーラーに任せて自分は殲滅に徹しろ、何のためのアタッカーだ!」

 「うーっ!解ってるわよ!復帰します!未来ちゃんよろしくね!」
 「はい!任されました!」

 ここでまたレベルアップだ。

 「うーっ!痛かった!超ー怖かった!」
 「未来ちゃんお疲れ!」

 「なんで未来ちゃんに真っ先に声掛けるのよ!私も随分頑張ってたでしょ!」
 「桜も最初より随分良くなってたけど、未来ちゃんのフォローが大きいだろ?それに雅と綾ちゃんにも大分庇ってもらってたぞ。でも流石に痛いから回避するようになってたな」

 桜の裂けたジャージの隙間から、ブラジャーの肩紐と白い素肌が目に入ってしまいちょっとドキッとしてしまった。

 「兄様なに見惚れてるんですか!エッチです!怪我した女性に欲情する変態です!」
 「菜奈ちょっと酷くないか?ちょっとドキッとしたのは認めるけど、それは普通だろ。怪我自体はもう完治してるんだから、桜の素肌にドキッとしても変態扱いされるいわれはない!」

 「龍馬君ちょっと素肌が見えただけで欲情するの?水着とか見たらどうなるのよ!」
 「ブラジャーの肩紐も見えている!それと水着とは違うチラリズムを桜は解ってないな!」

 「解るわけないでしょ!変態!」
 「うっ!桜に変態って言われた。ちょっとショックだ」

 「龍馬君、このまま続行でいい?」
 「いいと思う。そういう美弥ちゃん先生はどう思う?」

 「城崎さんがちょっと心配だけど、回復できる者が3人もいるんだから大丈夫よね?」
 「即死さえしなければいけるはずです。桜、本当に頭と心臓だけは絶対躱すんだぞ?」

 「ええ、そこだけは腕で庇ってでも回避するわ」
 「痛みの方は耐えられそうか?」

 「正直想像以上に痛かったけど、早く強くなって自分を守れるぐらいにならないと不安なの。龍馬君みたいにすぐ欲情する男の子が一杯いると思うと多少の痛みなんて耐えられるわ」

 「さいですか……参考になって何よりですね」
 「ちょっと、冗談なんだからそんなに拗ねないでよ!」

 俺は雅を抱っこしてクンクンする。

 「いいんだ、俺には雅がいるからね。あー癒される!」
 「ん!私は癒し系!」

 「雅ちゃんも普通に抱っこされてクンクンされてるのになんで動じないの!」
 「ん、菜奈先輩あまり興奮すると老けるよ」

 「そんな年じゃないです!」

 「まぁ、冗談はさておき、俺がもうすぐジェネラルに届く。桜もなんとかやれそうだし、このまま続行するけどいいな?」

 
 戦闘再開だ。
 
 現在俺はジェネラルを含めた4体と乱戦中だ。援護射撃で菜奈が周りのオークを削ってくれている。
 やはりもう一人魔法使いか弓兵が欲しいな。

 ジェネラルの攻撃はすべて受け止めるか回避しているが周りの雑魚の攻撃は結構食らってしまっている。【マジックシールド】をリバフしながらなのでダメージはないが、ジェネラルの方にもまだダメージが入ってない。そろそろ切れるかという頃に、プリーストが後ろからジェネラルにシールドを掛け直してしまうからだ。

 いずれはオークの方が先にMPが切れるのは分かっているのだが、厄介なのには変わりない。

 戦局が変わったのは雅が自分の分を片付けてこっちに来てくれてからだ。
 雅が周りの雑魚を相手してくれるようになって一気に形勢が変わった。雅のおかげで壁に隙間ができ、ジェネラルの後ろでリバフしようとしたプリーストに一気に接近して、喉に剣を突き刺し詠唱を中断させるのに成功したのだ。その後はジェネラルのシールドを破壊する事に成功し、一気に首を薙いで落とした。

 ここでレベルアップだ、どうやら今回は俺もレベルが上がったようだ。

 「兄様やりましたね!おめでとうございます!」
 「ジェネラル倒せたのね?良かった!」

 「雅ありがとう!膠着状態が続いてたんでどうしようか考えてたんだけど、お前が来てくれて一気に片が付いたよ。やっぱお前は戦局をちゃんと見てるな、偉いぞ!菜奈も援護射撃ありがとうな」

 「皆、無事で何よりだわ。後は雑魚処理だけね」
 「美弥ちゃん先生もお疲れ様。未来と2人MP残量はどんな感じかな?」

 「まだ結構残ってるわよ?ヒールは城崎さん以外には使ってないしね」
 「私もまだ残っています。レベルが上がったので結構まだまだ余裕の量がありますね」

 「皆は知らないだろうから教えてあげるね。今使ってる【アクア・ヒール】は種族レベル9までの子供でも適性さえあれば覚えられる初級魔法なんだよ。種族レベル10になって【アクア・ヒール】の熟練レベルが10に達していたら。中級魔法の【アクアラ・ヒール】を獲得できるようになる。同じように【剣術】も次のランクがあって【剣術】→【剣聖】→【剣王】→【剣鬼】→【剣神】まであるそうだよ。【剣術】の熟練レベルを10にしても種族レベルが10ないと【剣聖】のスキルは表示されないし、同じように20にならないと【剣王】も発生しない。まだ上に一杯あるんだから満足して怠ってたらこっちの世界の人に襲われちゃうよ?街道には盗賊とか結構一杯いるらしいからもっと強くならなきゃね。あくまでオークは弱小魔獣ってのを忘れたらいけないよ」

 「そんな大事な事なんで今まで黙ってたのよ!」
 「本来は誰も知らない情報だし、まだ先がそんなにあると分かってしまうとげんなりしてしまう娘もいるだろうと思ってね。いろいろまだ黙ってる情報もあるけど、おいおい話そうと思ってる。一度にいろいろいっても全部覚えられないだろうし、桜ほど頭の良くない娘も一杯いるんだから、自分基準であれもこれも話させようとしないでね。頭がパンクするよ?」

 「でも龍馬君はそれ全部覚えてきてるんでしょ?」
 「兄様は頭良いですからね!当然です!」

 「菜奈、買い被りだ。元々この世界と相性が良い事もあるんだよ。ラノベなんか知らない娘にとってはちんぷんかんぷんな事でも俺たちにはすんなり理解できるだろ?初心者にAP・HPとか書いて見せてもアップル社のホームページ?とか言うやつもいるかもしれないからな」

 「うわー確かに……オークも私たちはゲームで何度も見て姿形だけでも知ってるけど、初めて見た人からすれば空恐ろしく見えるでしょうね」


 「皆落ち着いたか?最初より恐怖も薄れてるようだし、このまま皆を助けるね。向こうに戻ったら未来ちゃんと美弥ちゃん先生は何人か死にそうな女の子がいるようなので、回復に回ってあげてください。雅は未来ちゃんに、綾ちゃんは先生について護衛してあげて」

 「「「解りました」」」

 「兄様私は?」
 「私もまだ指示がないけどどうすればいい?」

 「菜奈は桜のアシストを頼む。桜は残ってるオークやゴブリンで、ひたすら殲滅と回避の練習だ。桜のヒールは俺が担当するけど、まだプリーストが残ってるんでそっちを先に片さないといけない。桜は俺が倒しきるまでは先生の護衛についていてくれ。それともう少し周りを見る余裕を持つように。さっきジェネラルを倒したことを把握できてなかったの桜だけだっただろ?」

 「エッ!?皆は龍馬君が倒したの見てたの?」
 「それくらいの観察力と状況判断が出来ないと、この先やってけないんだけどな……」

 どうやら桜にも皆と自分の現在の技術力の差が理解できたようだ。

 「あの……私、A組から降ろされちゃうのかな?」
 
 「桜、安心しろ、当分それはない。綾ちゃんも自分から希望しない限りはA組に組み込むことはしないから安心してくれ。桜にやる気があって、痛みにも耐えて頑張ってる間は皆で指導もするし見捨てる事もしないから安心していいぞ。いきなり最初から上手い人はいないんだからな。只指示を無視して皆を危険に晒すことが続いたらすぐ替えさせてもらうぞ。今の所指示無視はやってないだろ?それに平常時での桜は皆を観察して、言動や行動から的確に皆の心情を読み取って指示できてるじゃないか。戦闘時も同じようにやればいいだけだよ。今は余裕がないから上手く出来てないだけだ」

 「ありがとう、私、頑張るから!」

 「私はまだやっぱり怖いのでB組でお願いします」
 「綾ちゃんなら遊撃手の雅と組んで良いアタッカーになれると思うけどな。レベル上げはどうしても必要だから雑魚のオーク狩りに交じる程度にして、怖くなくなるまでは無理しなくていいからね」

 「はい、ありがとうございます」

 「それにしても先生がちっこいのにめっちゃ上手いのには驚いたよ」
 「気にしてるんですからちっこい言わないでください!」

 「あーそうか……先生ごめんよ。同じちみっこの雅や菜奈と違って25歳の先生はそれ以上の成長は期待できないですもんね」

 「ん!止めの一撃!流石龍馬!」
 「兄様!それは言っちゃダメだと思います!事実は冗談で済ませられないです!」

 「ぐすん……みんなで先生をバカにして酷い」

 先生をダシにして適度に緊張も緩んだので、まだ時間は少し残ってるけど行くとしますかね。
 
 「さて、では雑魚の掃討をしますか。本当ににヤバそうな人がいるのでヒール出来るだけ急いであげてね。瀕死の娘は俺が先にヒール飛ばしておくけど、プリーストを倒さないと厄介だから俺はそっち優先するね」

 「兄様、首を刺したように見えたのですが?放っておいてもヒールの詠唱もできずに死ぬのではないですか?」

 「後ろからでは見えなかっただろうけど、シールドでプリーストは多分無傷だよ。シールドの上からでも詠唱は止められたけど、傷は負ってない筈だよ」

 「そうでしたか、先にシールドを壊す必要があるのですね?」

 「ああそうだね。俺のシールドより性能も熟練レベルも低いようだからすぐ壊れるだろうけど、その間桜はできるだけダメージを負わないようにね。ヒール無しと思って必死で回避するように」

 「分かったわ……うん、頑張る!」

 桜は自分に言い聞かせるように気合を入れている。怖いだろうに怯まず前向きな性格は好感が持てる。
 負けず嫌いな感はあるが、めちゃくちゃ気が強いって訳でもなさそうだし、このまま惚れてしまいそうだ。
 メインヒロイン候補NO1だな。ってアニメの見過ぎか。
 ヒロインどころか俺なんか相手にもされない可能性が高いよな。
 男子から告白されても悉く断ってるって噂だし。


 
 戦闘再開だ。

 真っ先に瀕死でピクピクしている娘にヒールを飛ばし、プリーストのシールドを壊すべく連打を浴びせた。
 7回ほど切りつけてシールド破壊に成功し、心臓に剣を刺して勝利を収めた。

 俺はすぐ側にあったジェネラルの剣を回収して自分の剣と持ち替える。
 やはり思ったとおり上位種の方が良い装備を優先的に持っているようだ。

 「桜お待たせ、それと俺のこの鋼の剣を使え。切れ味が格段に良いぞ」
 「いいの?ありがとう!」

 「桜の好きな殲滅戦だ!切りまくっていいぞ!」

 俺は瀕死の娘にヒールを飛ばしながら桜と無双した。

 不謹慎だが、余裕ができるとどうしても可愛い女子の裸に目が行ってしまう。
 中等部の女の子と高等部の女子ではいろいろと成熟度が違うのだ。
 もうそれは今が旬な食べごろの果実なのだから仕方がない。



 20分後、雑魚も掃討して、今はヒールを保護した女子に掛けている所だ。

 「未来ちゃん、美弥ちゃん先生、可哀そうだけど動ける程度に回復すればいい。全快させていたらこっちのMPが持たないし。この後の戦闘が出来なくなる。送った先で任せるしかないと思う」

 「そうね。私たちにはまだこの後があるのだから、MPはできるだけ温存しないとね」

 オークは全てインベントリに収納、武器や防具も全部一旦インベントリに確保した。
 後で鑑識魔法で調べて、良い物を皆に配布するつもりだ。

 ジェネラルが持っていた物だけ先に調べたのだが、ミスリルが60%混じった剣だった。
 総ミスリルではなかったが、鋼の剣と比べたら格段に良い物だった。

 あれほど俺と打ち合ったのに刃こぼれが少ない……俺が持ってた鋼の剣はボロボロだったのにだ。
 桜に渡す前に【リストア】で新品状態にしてあったから桜はサクサク切っていたけど、本当なら廃棄処分のレベルだった。フフフ良い物が手に入ると自然と笑みが出てしまう。

 「兄様そんなに裸の女の子が見れて嬉しいのですか!」
 「何言ってんだ!違うよ!いい剣が手に入ったから喜んでたんだよ!」

 「そうなのですか?菜奈にも見せてください」
 「あら、私も見たいわ!」

 「お前たち俺の話を聞いてたか?外部に極力情報を渡さない!常識だろ!見せるのは戻ってからだ!」
 「あ!そうでしたわね。ごめんなさい」
 「兄様ごめんなさい、ここには沢山人が居ましたね」

 「菜奈は回復して動けるようになった人に、体育館か教員棟のどっちに行きたいか聞いておいてくれ。先生は妊娠の可能性と対処法を纏めて説明してあげておいてほしい。桜と雅は俺に付いてきて、厨房に残ってて食べられそうな食材の選別と調理器具の確保を手伝ってほしい。綾ちゃんは怪我人の誘導を手伝ってあげて」

 「「「了解です」」」

 「相変わらず的確な指示ね。でも裸の女の子を見なくていいの?」
 「ちょっとは見たい気もあるけど、優先順位があるからね」

 「龍馬君にとっては裸の女の子より食料が上なのね?」
 「桜、変な言い方しないでくれ。皆の命が掛かってるんだ。食料確保はリーダーとして最優先にするべき案件だろ。飢えで死ぬなんて、これ以上にない最悪な死に方の1つだと思うぞ?」

 「ごめんなさい。ちょっとあなたをからかうつもりだったの。聞こえて無いとは思うけど、後ろの彼女たちにも失礼だったわね」

 「またいつ集団で襲ってくるか分からない。ヒールを手伝いたいけど、食料確保の方が重要だからそっちを先にする。桜、雅、急ぐぞ」


 俺たちは厨房に荒らされてない物が無いか少し期待しながら向かうのだった。 

しおり